2010年01月06日
なぜ「反常識経営」で勝てるのか? ~未来工業の事例~
「反常識」を掲げて社員の活力を高め、電気スイッチの内側に取り付けられるスイッチボックスでシェア80%という成果を誇る電設資材メーカーがあります。
岐阜県に本社があり昭和40年に創立、平成21年で従業員数767名を抱える「未来工業」http://www.mirai.co.jp/です。
本社遠景
※「アスタックグループ」http://www.attax.co.jp/seminar/detail/00477.htmlさんより
その「未来工業流の反常識経営の例」を挙げると、
●年間140日の休みと地域で最高水準の給与
●勤務は8:30~16:45。残業は禁止
●提案しただけで報奨金500円、採用されれば1万円以上
●本社に報告せずに支店開設、「ホウ・レン・ソウ」は禁止
●創業時から大手一次問屋と商売せず
「日経情報ストラテジー」http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20071011/284281/より
こうして見ると、“ホンマかいな?”と疑いたくなりますが、同社にはこれらを実現するためにベースとなっている合言葉があります。
それが、これ。
社内のいたるところに掲げられている同社のキーワードです。
※「VisionHouse表参道」http://visionhouse.seesaa.net/index-5.htmlさんから画像を頂戴しました
というわけで、今回は、この「未来工業」の秘密に迫ってみようと思います。
↓↓↓
なぜ「反常識」なのか?それで本当に勝てるのか?
>「大手と同じことをやっても追いつけない」と突き進んできた山田相談役のやり方は、「差別化が目的だった」という。
社員に多くの休日を与えて、残業を許さず午後5時前に帰宅させるのもサービス残業を常態化させている企業の常識を嫌ったものだ。
「25%の割増金を払ってまで残業させるより、限られた時間に集中させるほうがよい」。「ホウ・レン・ソウ」という一般企業での常識も未来工業は通用しない。報告する本人が一番状況を把握しているのだから即座に自分で判断せよ、ということだ。
全国には本社が知らないうちに設立が決まった営業拠点がたくさんある。最終的には社長の承認が必要だが、各地の社員が判断することでスピードを生んだ。「社員の力を100%引き出せば成果は後からついてくる」ので目標は立てさせない。そのための140日もの休日と残業禁止だ。<
「日経情報ストラテジー」http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20071011/284281/より
創業者の著書
「楽して、儲ける!―発想と差別化でローテクでも勝てる!未来工業・山田昭男の型破り経営論! 」
※「アマゾン」http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4806119814/hatena-gd-22/ref=nosimより
確かに残業(コスト)削減に苦慮している大手企業はたくさんありますが、普通の会社であれば、生産性を高めるために「残業禁止」を掲げた場合、それを受けて社員はブツブツいいながらも仕事を家に持ち帰ってする、というパターンが一般的な姿でしょう。「ルール=従うもの」、という大前提がそこにはあります。
しかし、「未来工業」の場合、「ルールは社員がつくるもの」であり、そうであるがゆえに、同じ残業削減でも、社員の活力は維持されるどころか逆に高まっているようです。
>残業ゼロの取り組みが浸透するまでに半年から1年を費やした。この間、全社的に周知徹底したことも成功の要因だが、残業を減らすために業務改善のアイデア出しに力も入れた。
(中略)
業務を改善するアイデアなどを1件提案するごとに、500円を支給する社内制度を用意している。
社員には課題も解決する能力も必要と、参加賞の意味合いで500円を贈るそうで、会社の製品に関することでも、社員食堂のメニューに関することでもアイデアはなんでもいい。
参加賞の500円以外にも、アイデアが採用されれば最高で3万円、年間200件以上提案すると15万円がもらえる。現金で支給されるため、おこづかい代わりに応募する人も多く、会社全体で年間1万件前後の提案があるそうだ。オフィスや労働環境の改善案が多いが、中には商品の不良品を100%発見できるシステムを考案し、実際に未来工業の各工場に導入した例もある。
「社内規則や環境を変えたかったら、自分で考えてほしい」(未来工業)。このアイデア募集制度には、こんな意味が込められている。<
「誠Biz.ID」http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0905/28/news075.htmlより
未来工業で作られているアイデア商品例
※「首都圏電工株式会社」http://denkogroup.jp/sd/news.htmlさんより
「社員に休日をたくさん与えて、残業も原則なし」と聞くと“そんな姿勢で勝っていけるの?”と正直疑問に思う。
しかし、「常に考える」を合言葉にしている同社社員にとっては、「休日増」「残業なし」はラクチン志向へとは向かわずに、むしろ直面した期限圧力・期待圧力の中で「どうする?」を考える好機となっているようです。
山田昭男氏は言う。
>単に世間の反対をするだけでなく「常に考える」ことが大切。提案制度もそうだし、QC(品質管理)活動は始めたのは30年前だ。
やる気を出してもらうために休日を多くしてきた。年末年始に20日間休むと決めた時には社内からも「販売機会の損失になるし、お客様が困るだろう」と反対が起きた。
そこで全国の支店の倉庫の鍵を3000社分作って配ろうとした。休んでいる間は勝手に持って行ってもらおうと。残念ながらこの案は実行できなかったが、性善説を信じてきた。
「ホウ・レン・ソウ」を禁じたのも同じ理由。現場のことは現場が一番知っている。自分は相談役だけど、社員に「相談するな」と言っている。(談)<
「日経ビジネスストラテジー」http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20071011/284281/より
「常に考える」ことが評価(具体的には500円~30,000円の報酬)に繋がり、自らが生きる集団の新しいルールとなる同社のシステムは、まさに社員全員を経営参加させるシステムであり、自分たちの会社を自分たちで作ることの喜びがそこにはあるのでしょう。
おそらく彼らにとっては、長い「休日」も単なる解脱に使われるだけではなく、次なる「どうする?」という考えるためのヒントを集める時間となっているのではないでしょうか?だからこそ勝ってきたのだと思います。
- posted by seiichi at : 9:47 | コメント (3件) | トラックバック (0)
コメント
社会とつながっていない仕事はありません。
それに気づかないのは、パラダイム転換を認識できていないからなのですね。
そういう視点で普段やっている仕事を見てみたら、実にいろいろな人との豊かな関わりが予感できますよね。
シリーズ、期待しています。
titidaさん、コメントありがとうございます。
特に若者は私権原理の時代を知らないので、パラダイム転換の実感が乏しいようです。
これからも、構造認識を使って、可能性を切り拓いていく成功例を、どんどん蓄積して発信していきましょう。
>「みんな(社会)の期待」と「自分の仕事」が繋がる
→「みんなの期待に応えられる」まで追求すればいいのです。
これすごいですね!
しかも、お金とか地位じゃなくて「みんなの期待に応える」ことが目標なのってとっても楽しそう!
あきらめずに追求し続けたいと思います☆☆
コメントする