2010年06月09日
「会社は人間を幸福にするために存在する」⇒人材育成の秘密-樹研工業
今日は、社員のための会社を目指した経営者が創った会社-㈱樹研工業をご紹介します。
パウダーギヤ POWDER GEAR
使用材料: POM
ゲート形状: ピンゲートPIN GATE
取数 (ヶ): 4
モジュール: 0.02
特 徴: 世界最小100万分の1g 1/1,000,000g GEAR
樹研工業を一躍有名にしたのは、10万分の1グラムの歯車の製造に成功したことです。現在は、100万分の1グラム歯車の製造にも成功しています。
ただし、そうした最先端の技術は現段階では実際の製品にはまだ使うことができていない状況で、樹研工業の技術が特化してしまっている状況です。
しかし、樹研工業の最先端の技術力は大きな営業力となり、市場に於いても安定的な経営基盤を築いています。
そして、驚くことに樹研工業の社員は、最先端にいる大学などの技術者ではなく、先着順で採用した人材で、高卒の学歴しか持たない人も多数いらっしゃるとのことです。つまり、入社後の人材育成の中で、最先端の技術力を実現している会社ともいえます。
もうすこし、樹研工業の紹介から
JBpressより
会社は人間を幸福にするために存在する
「技術は難しければ難しいほどいい」。この企業理念を実現するため、人材育成を重要視する樹研工業では、「潜在能力を発揮するための要件」である内発的動機、潜在学習、過去における成功体験、刺激的な情報空間の4つが組織として実現しているのが分かる。
「長期的ビジョンに立った技術開発と会社経営」
「卓越した技術力で価格競争はしない」
「賃金は年功序列で成果主義は採用しない」
「大事なのはお金のためでなく夢を持って働くこと。会社は金もうけのためでなく、そこにかかわる人間全員が幸せになるために存在する」
樹研工業は、こんな経営理念を実現して、高い生産性を維持している会社なのです。
その他にも、「日本でいちばん大切にしたい会社(坂本光司著)」やネットなどで取り上げられている特徴的な内容を紹介します。
(経営面)
・「不況は変化である!」次の世にどう対応するかを求められていると考えろ!会社が変わるチャンスかもしれない。(いままで赤字はオイルショックの1973年と、2008年の2回だけ。赤字でも現金で設備投資をしているのでキャッシュフローでは黒字になることも・・・)
・中小企業がやってはいけない3つの競争
価格競争(値下げ合戦)、規模拡大の競争(シェアー争いに巻き込まれて、身の丈を忘れた経営に走るな!)、品揃え競争(見栄の張り合い、総合○○メーカーというほど、怪しいものはない!)の3つである
・中小企業の心すべき、3つの戦略
新技術(新製品)の開発、管理技術(品質管理、生産管理)の定着、財務戦略(支払い手形の廃止、固定費率100%以下など)の定着
・不況を乗り越えるためには、余裕がないとだめ。そのために自己資本比率は50%越えを目指しなさい!また、会社を拡大するときは自己資本比率と相談をしろ!(30%を切ったら危ない)
・ 価格競争に巻き込まれないように、技術を難しくしていき、競合をなくし、仕事量を安定させる
(組織面)
・入社試験はなく、先着順に採用
・定年なしの完全年功序列制を採用している
(その方が従業員の安心につながるし、評価が楽である。また、60歳になったからといって、名人(技術者)を辞めさせるのは会社にとって大損害である。)「成績によって給料が上がったり下がったりするようなところでは落ち着いて働けない」
・社員が入院している時も給与を出し続けた会社
・社員の定着率100%
・設計から製造まで一人の担当者がやりきる
・「自分の創意を自由に発揮できる環境」と「失敗を責めない」社風
・内部留保を大きくして、開発費・設備投資にお金をかける。
・全員参加の全体会議が最重要決定機関
・家族が受け取る生命保険に会社負担で加入
社員とその家族のよりどころのような会社で、経営者である松浦社長の人徳が際立って見えますが、それだけで最先端の技術力を持つ社員を育成できるとは思えません。
松浦社長は工場経営という工業生産の世界に居ながらも、人そのものが生産の主役であることをいち早く気が付いていたのではないでしょうか。
自主管理への招待(5)にこうあります。
工業生産から意識生産への生産力の転換がそれである。意識生産は、人間の労働力そのものが、生産の主役と成り、社会の主人公と成る事を求める。そこで求められているのは、自己の奴隷性から目を外らせて「個人」幻想の中をさまよう事ではなく、明白に奴隷(雇われ人)からの脱出に向けて自己変革を計る事であり、現実の活動能力の貧弱さとはうらはらに自意識だけを肥大化させる事ではなく、現実を生きてゆく豊かな能力を獲得してゆく事である。要するに重要なのは、自己の現実の存在とは別の所(非存在の世界)に己を暖め続ける事ではなく、自己の獲得してきた意識と能力のすべてをこの現実の中に投入して、現実を突き抜けてゆく事であり、その導きの糸となるのは〈自己から対象へ〉の認識のベクトルの転換である。
樹研工業も生産の主役である自分たち自身の手で組織を作り、現実の中で生きていくという強い決意の元、つまり社員とその家族を守るために、社員一丸となって現実の外圧に立ち向かうことで、自己から対象への認識転換が社員全般に浸透しているのではないかと思います。
ですから、先の記述に、
『「潜在能力を発揮するための要件」である内発的動機、潜在学習、過去における成功体験、刺激的な情報空間の4つが組織として実現している』
と書かれているように、
松浦社長は以下のように考えているのではないかと思います。
①内発的動機とは夢であり、技術の高度化を指しているのだと思います。
②潜在学習とは、高い技術目標を常に掲げることで、社員全ての意識がそこに向かい、絶えずチャレンジしていく社風によって実現しているのだと思います。
③過去における成功体験を大事にしているため、年功序列・定年制無しといった、技術経験豊富な世代を重用して、若手社員の育成にその成功体験を語ることで貢献する役割を与えているように思います。
④最後に刺激的空間とは、全社員が自由参加の全体会議の場で、お互いの技術や成功・失敗を語ることで、刺激を与えあっているのだと思います。そして、この会議には自由参加であるにもかかわらずほとんどの社員が出席するということですので、会社の置かれた状況なども全員で共認する場ができているのだと思います。課題共認そのものもとても重要な刺激であろうと思います。そして、全員で共認した方針とは外圧に対するものであるはずで、自ずと自己等という個人主義的観念から離れて、社会・現実といった対象に目を向けることが、社員全員に共認されて行くのだと思います。
ですから、松浦社長の優れた点は、その人徳だけでなく、社員全員に「自己から対象へ」という認識転換を促す組織体制を構築したことではないかと思います。
そうした組織の中で行われる人材育成は、学歴など超えて最先端の技術力を生み出しているということが、樹研工業の勝ち残っている秘密ではないかと思います。
- posted by bonbon at : 23:45 | コメント (3件) | トラックバック (0)
コメント
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11月23日、北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃した事件の背後にあるものは? いつも応援ありがとうございます。 …
>具体的には、子どもに注意したくなったら、まず深呼吸してみましょう。そして、口に出そうとしているのと同じ内容を伝えられる肯定的な表現を考えてみるのです。慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、この作業を意識的に繰り返しているうちに、自然に肯定的な注意ができるようになります。
★この「まずは深呼吸してみましょう」等々の方法論が、なるほど!と気づきでした。
★仕事の場面でも早速実践してみようと思います。
コメントありがとうございます。
原因分析してダメなところを指摘する・指導するのではなく、「充足イメージ」を抱かせ、具体的な実践方針をみんなで共有してすり合わせながらやっていく、というのが最大のポイントだと思います。
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