2010年05月16日
シリーズ★路上で出合った企業人の声 ~社員をやる気にさせるには?~
路行く人たちと「なんで?」「どうする?」という社会を取り巻くお題テーマを追求し、答えを出していっている「なんで屋露店」。
私もしばしば仲間と一緒に路上に立っていますが、先日は「社員をやる気にさせるには?」というタイトルのお題を掲げて路上の反応をチェックしてみたところ、予想以上に注目度は高く、早速中小企業の経営者を含めて何人かの人が立ち止まってくれました。業種や役職を問わず、「社員のやる気」には関心が高いようです。
※写真はなんで屋サイトから引用させてもらいました。
今回はそんな中、全社員8名程度の小規模な工務店を経営する社長さんとお話させていただいた時の事例をご紹介させて頂きます。
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★まず、追求するお題のボードには以下の図解を板書しました。
社 員 を や る 気 に さ せ る に は
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
☆対人捨象 ⇒ 仲間(みんな)第一へ
タコツボ化 発信⇔反応 ↓↓
みんなで
☆ダメ圧、説教 ⇒ 肯定視 ⇒ どうする?
否定発 充足発 →答え
↑↑
☆言い訳、ゴマカシ⇒ 情報オープン・事実を共有
隠ぺい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
↑ ↑
私権圧力の衰弱 ⇒ 共認充足 ⇒ 認識力
共認圧力
↓ ↓↓
私権体制崩壊 ⇒ 企業を共同体へ
★ボードを見て立ち寄ってくれた社長さんの第一声は、
「これ(説教)やっちゃってるんだよね」。
以下、社長さんとのやりとりの実況です。
そうなんですよ。
今多くの会社で社員の活力を阻害していて、問題になっているのが、この3つ。
対人捨象・タコツボ化と、ダメ圧・説教・否定発、言い訳・ゴマカシ・隠ぺいなんです。
確かに昔はこれでもよかったんです。「私権」つまり、いい学校を出て、いい会社に入って、自分や家族のためにお金を稼いで、いい家庭を作って・・・という生き方が評価され、みなが活力をもってそこに向かっていた。お金のためには、上の言うことも聞いて、嫌なことでもしっかりやった。昔は序列上位にいる上司や先生が尊敬され、「ああいう人になろう」と必死に同化しようと努力した。つまり序列が機能していたんです。
でも、モノが行き渡って豊かになったので、今は上司の言うことを聞かなくなった。上司が嫌なら会社を辞めて他で務めるなり、フリーターで生活できるようになった。もはや私権の圧力、序列の圧力では誰もついて来なくなったんです。さすがに、最近は不況だから会社は辞めなくなったけれども、逆に活力や成果が出ない人材が会社に残ることになったから、経営者や上司たちは頭を抱えているんです。
「なるほど。でも、うちの社員はひどい。『これ振込してきて』と言って、『はい』と返答したから銀行に行かせたものの、振込と振替を混同して、結局『振込の方法がわかりませんでした』と帰ってくる。先に質問するなり、銀行で誰かに聞くなりいくらでも方法はあるだろうに、平気で『わかりません』と持ち帰ってくる。怒る気も失せるが、こんなときはどうすればいいか?」
今の若者は、私権には収束しない代わりに、むしろ仲間や周りを大切にする「仲間(みんな)第一」の世代。社会の役に立ちたい、みんなの役に立ちたいという真面目なタイプがほとんど。口では「お金がほしい」と言う子もいますが、昔のお金に収束していた世代の言葉とはその意味が違う。とりあえず「お金はあるに越したことはない」という意味であって、「いい車を乗り回して、いい女をつかまえて・・・」といった私権ガツガツの旧い世代が言う「お金」とは全く意味が違うんです。
「みんなの役に立ちたい」、でもその具体的な方法は学校でも教えてくれないし、昔であれば子供時代の遊びや大家族の中で自然と身についた「どうする?」という先読みの思考もまったく持ち合わせていない。社長が若いころであれば当たり前だったことも、全く白紙状態。だから、一から教えてあげるしかない。
「うーん・・・。そんなこといちいち毎回教えていられないでしょ。」
「相手がこう言ってきたら、こう答える。あるいはこう言ってきたら、こう返す」といった具体的なトークレベルまで伝えて、まずは“こうすればいいのか”という小さな成功体験を積ませていくんです。一回では無理かもしれないが、きちんと評価してあげれば、その体験が固定化されて毎回同じことは言う必要がなくなる。なんで屋のカード「仕事がうまくいく条件」に書いてある、課題共認、役割共認、評価共認がまさにそれで、こういった懇切丁寧な「上からの面倒見」が今は必要なんです。それで社員の活力があがるのであれば、ラクなもんです。
「なるほど。でも、いきなり褒めるといってもねー」
そう。今書店に行くといろいろなノウハウ本で「褒めましょう」とか書いてありますが、表層的な評価は絶対に部下にもバレる。それに気づいているから『褒めるといわれてもなー』となかなか踏み出せない。
だからこそ、目先のノウハウだけではダメなんです。ここ(板書)に書いてあるように、豊かになってみんなの意識、活力源が私権、自分発からみんな発へと大きく変わった。だからこそ昔の指導方法ではダメで今の時代にあった指導をする必要がある、という時代認識を持つ必要があるんです。その大きな構造を理解して「褒める」のと、単なるノウハウで対処するのとでは、同じ言葉でも相手に伝わるものが違う。
「なるほど。確かに」
とはいっても、いままで強面で接してきた社長が急に褒めたらちょっと部下も戸惑うかも。そんなときに有効なのが、間接的に褒める方法。特に女性は褒めるのがうまいですから、「この前のあれ、社長が褒めていたよ」と女性社員から間接的に褒めてもらうのは、下手に直接褒めるよりよっぽど効果的!
「それいいな!でも、やさしく褒めるだけではダメだろう?ミスはミスとして正していく必要もある」
もちろん。そのときのポイントは、人でなく課題に意識を向けること。ミスに対して「社長が怒っている」、ではなく「お客さんはどう感じたと思う?」とか「こうしたらきっとお客さんは喜んでくれたんじゃないか?」とか、一緒に「どうする?」を考えていく。上司の想いでなくお客さんの想いへ、人でなく課題を「どうする?」へ向かわせたらいい。
「そうか。その手はあったな」
実際、我々も同じような若手新入社員をどうする?と試行錯誤し、勉強をする中で辿りついたのがこの答えであり、もともと40年前に社長と同じように数名で始めた設計事務所が現在500名にまで成長したのも、その勉強の積上げと、実際に日々の仕事の中で実践を積上げてきた結果です。
今、トヨタや日航など古くからの体質を引きずっている大企業ほど私権圧力が機能しなくなり、体制崩壊していってる一方で、元気な企業はうちの会社のように共同体経営へと舵を切っていってる。
ここに書いてあるような「仲間第一」「肯定視・充足発」「情報オープン」の全ての要素を満たし、社員みんなでどうする?を追求するのは急には無理ですが、例えば、大手でもユニクロなどは「全員経営」を掲げ、実際に現場の店舗に権限を与えることで成果を上げていますが、彼らがどこまでこの活力構造を認識しているかはわかりませんが、少なくとも経営者がこれらの要素の一部を直感的に捉えてシステム化し、実践しているのだと思います。
そして、この転換は規模の小さな中小企業ほど当然やりやすい。いずれにしても、この下の部分。時代状況や意識状況を正確につかむこと。そして、時代状況はどんどん変わっていくので、常に勉強していく必要があるんです。
「なるほど。よくわかりました。ありがとうございました」
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時代背景をもとに語った「企業を共同体へ」の言葉は、確実にお客さんに響いていました。
自分発からみんな発への転換期にある2010年代。活力ある共同体企業がこれからどんどん増えていく予感がしています。
- posted by seiichi at : 2:06 | コメント (1件) | トラックバック (0)
コメント
なるほど、「グローバルスタンダード」という外圧を作り、それに「適応せねば」、という内圧を企業側に作り出すことで、うまく商売を作り出しているのが大手コンサル会社なんですね。
この、外圧=内圧で考えると、社員の活力活性化(=内圧を上げる)コンサルとは、今の外圧ってなに?を捉えることがポイントになりそうですね。
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