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2010年07月14日

★シリーズ『会社って誰のもの?』 ~1.「現状はどうなっている?」 -2 会社制度の比較~

01-man.jpg01-ol.jpg★シリーズ『会社って誰のもの?』 第1章 会社の「現状はどうなっている?」の第2回目です。
今回は「会社制度の比較」と題して、株式会社や合同会社など各「会社」の特徴を比較し、その会社形態の発展過程を押さえていきたいと思います。
イラストはHP素材屋よりおすそわけして頂きました
↓続きも見てネ

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(1)会社の比較
本シリーズ前回の記事にもあるように、一般に言われる「会社」とは、商法で規定された法人、つまり「営利法人」のことを言います。この「営利法人」は、日本の法人の約80%を占めています。今回は、この「営利法人」を中心に比較していくことにします。
以下に各会社の特徴をまとめました。

大きな違いは、「株主・社員の責任の範囲」、「会社の内部関係」、「最高意思決定機関」です。
まずは、「株主・社員の責任の範囲」欄をご覧下さい。
「有限責任」と「無限責任」という記載がありますが、違いを簡単に言うと、会社が借金を抱えた場合、
 ・有限責任 : 構成員(=出資者)は、出資額が戻ってこなくなるという責任を負うだけ
 ・無限責任 : 構成員(=出資者)は、その借金を全て払う責任を負う
ということになります。例えば、もし会社が倒産した場合、有限責任では出資したお金だけを弁済に充てることでいいのですが、無限責任では出資者個人の全財産をその弁済に充てなければならないということになります。
次に、「会社の内部関係」欄をご覧下さい。
株式会社においては、会社内部関係の規律の強行規定性について、株主総会に加えて、取締役等の機関を設ける必要があるほか、株主の権利内容も、原則として平等原則が適用され、これらの規律は強行規定とされてます。これに対し、その他の合同会社等では、機関設計や社員の権利内容等については強行規定がほとんどなく、広く定款自治に委ねられています。「定款」とは会社の最も重要な規則を定めたもののことで、合同会社等では自治性の高い運営が出来るのです。
最後に、「最高意思決定機関」の欄をご覧下さい。
株式会社では、会社の重要事項を決定する際、必ず「株主総会」を開催して決議しなければなりませんが、合同会社等その他の会社では、「全社員の同意」を得るだけでよいのです。つまり、株式会社では、最高意思決定機関(株主総会)の構成員である株主と、業務を執行したり代表する機関(取締役・代表取締役等)が分離しているが、合同会社等その他の会社では、両者は原則的に分離していない、すなわち所有と経営が一致しているということになります。
これらの視点で比較していくと、株式会社←合同会社←合資会社←合名会社という変化の中で、

 ・社員の当事者意識が、 低い ← 高い
 ・会社の自治性が、     低い ← 高い
 ・所有と経営が、      分化 ← 一体化
 ・資本の集中度が、     高い ← 低い

となっているのがわかってきます。
 
最近の合同会社登記件数の増加リンク)は、自主的な運営を望む会社が増えていることを意味しているのかもしれません。
(2)会社形態の発展過程 リンクを参考にしました。)
このように現在いろいろな形態の「会社」が存在しますが、各々限界点を克服する形で進化してきました。その発展過程を見ていきましょう。
①個人企業
★出発点
 ・出資者=発言・支配権(自己意識の反映)の保持
 ・通常、他社依存はない=所有と経営の一体化
★限界点
 ・資本調達力の限界
 ・負債の限界(出資者の消極的姿勢)
 ・利益機会の限界
∴複数出資者の必要性 = 企業形態の発展(制度的発展)≠個人
②合名会社
★出発点
 個人事業の限界を克服すべく、
 ・出資者を複数化。
 ・複数・分散化により、発言・支配権が複雑化するが、合理的手段としての合議制(各出資者の意思を全員の話し合いによって決定)を採用。
★限界点
 ・信頼関係が前提
  ・・・出資者が限定(通常は親族)=人的信用保証の必要性:出資者全員による無限責任
 ・共同経営者として、会社全体を直接管理
→つまり、合名会社は「資本調達力の限界」の一部を克服したに過ぎない
⇒より一層の出資規模の拡大(利益機会獲得)の必要性 = 企業形態の発展(制度的発展)
③合資会社
★出発点
 合名会社の弱点を克服すべく、
 ・新しい出資分散方式(持分出資者)を創出。合議制は維持。
 (持分出資者とは発言・支配権を有しない新たなタイプの出資者)
 ・持分出資者の特徴
   マイナス要因:発言・支配権の放棄
   プラス要因(誘因):無限責任の免除(責任の有限化)
 ・支配出資者の特徴
   マイナス要因:発言・支配権の獲得
   プラス要因:無限責任
 ・合資会社の最大の特徴:債務履行に関する責任の分割
   結果として、合議制の維持、出資規模の拡大に成功
★限界点
 ・持分出資者の離脱が困難
 ・支配出資者への絶対的な信頼が前提 = 持分出資者の範囲限定
④株式合資会社
★出発点
 合資会社の弱点を克服すべく、
 ・持分の株式化(所要額を小口化すること) ⇒ 出資金額の小口化を行う。
 ・高い譲渡性のある「株券」を発行。
★限界点
 ・持分出資者に限定、支配出資者は無限責任。
 ・つまり、負債の限界(出資者の消極的姿勢)は残ったまま。
⑤株式会社
★出発点
 株式合資会社の弱点を克服すべく、
 ・出資者の有限責任。
 ・資本金全額の株式化(均一小額単位=株式)。
 ・人的保証からの脱却=資本金の拡大可能性の確保。
 ・支配出資者の特権(発言・支配権)の損失 = 株式毎に支配権が等しく分割される。
 ・株式の所有者=発言・支配権の所有
 
★限界点
 ・所有と、経営、労働が断絶。
 ・会社の買収が常態化。
 ・+α (今後のシリーズ投稿で解明していきます)
⑥合同会社
★出発点
 株式会社の限界点を克服すべく、
 ・会社の意思決定は出資者全員の合意のみ。(株主総会不要)
  →重要事項の決定が迅速に行える。
 ・経営者の意思と直結した会社運営が可能。
  →株主の意見に影響されない。
 ・出資は社員が行う。
  →所有と経営、労働が一致。第三者に会社を買収される心配がない。
★限界点
 ・意思決定について対立が生じると、収拾がつかなくなるおそれがある。
  →一人一票の議決権。
 ・資金に限界がある。
  →多額の資金が必要となる業種では資金不足になるの恐れあり。
 ・+α (今後のシリーズ投稿で解明していきます)
(3)まとめ
 各会社形態の特徴とその発展過程を見ていくと、私権原理から共認原理へと移行した現在は、まさに会社形態という面でも過渡期なのです。現在を生きる私たちの手で、共認原理にもとづく新しい会社の形態を考えていかなければならない、改めてそう思いました。
今回はここまでです。次回は、2005年に施行された新会社法の、改正の背景を探っていくことにします 🙄

 

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