2010年10月27日
★シリーズ『会社って誰のもの?』~3-3.これから可能性のあるいい企業って?☆~
今シリーズの「2-5.近代(明治以降)の会社形態の変遷」で見たとおり、日本は、制度上は“株主絶対”の株式会社方式を取り入れても、実際の会社運営の中身は、社員とその家族を大事にしたり、社会(みんな)の豊かさを目指したりと、その根っこに集団重視の風土を持ち続けていました。しかし、そんな日本でも、昨今、自分の利益(私権)のためなら、他者の充足(社員の充足や、社会の充足、お客さんの本当の充足・・・)を蔑ろにしても構わない企業などが目立ってきています。
一方で今の日本社会は、「市場縮小によって、どの産業・企業でも今までのようには成果が上がらなくなり、経営成績はマイナスが当たり前となり、給与も下がる。仕事成果も給与も上がらない」という状況。(1/31なんでや劇場レポート3 企業における「共同体的」仕組みの事例)
わたしたちの生きる場である会社の内側も外側も、何だか不安要素でいっぱいですね・・・><
こんな時代の中で、勝っていける企業って???
ということで、これまで主に歴史を振り返ってきましたが、それを参考にしつつ、今回の記事では、現代の企業集団に目を向けて、具体的な“いい会社”の事例を追ってみたいと思います。そこから見えてくる“いい会社”の共通項とは・・・?☆*+
いつも応援ありがとうございます
企業は人の集団。つながりで成り立っています。だから、トップ層が自分の利益(私権)ばかりに拘っているような会社は、これからの時代行き詰ります。では、逆に、みんなの充足を考えてみたらどうでしょう??そういう方針で成功している会社のほんの一例を、まずご紹介します。
①共認充足(充足で活力UP☆)
トップバッターは、あの有名なレーズンバターサンドをつくっている六花亭さん。働く仲間どうしの充足共有のツールになっているのは、社内新聞だそうです。
【六花亭製菓株式会社】
創業:1933年
資本金:1億3150万円
従業員数:1345名
>さて、六花亭の「非効率」で注目したいのが「日刊社内新聞」の存在です。
・・・「社外秘の社内報なんですが…」と1月3日付の新聞を見せてくれたのです。「えっ、日刊なのですか?」「日刊なんですよ。」と小田社長は躊躇なくこたえてくれました。・・・小田豊社長もほぼ毎日コラムを書いているこの社内新聞は、すべての社員が読み、共通の情報源にもなっています。1000人をこす社員は必ず年に何度かこの新聞に自分のことが記事になります>。「自分の存在が確実に載る」新聞は、社員たちの楽しみでもあり、はげみにもなっているようです。
よく考えれば、毎日毎日、新聞を作るなんて、とても効率的とはいえません。・・・手間をかけない方法はいくらでもあるでしょうが、六花亭ではきっとこれをやめないでしょう。・・・毎日続けることの意味と価値。それをトップから社員一人ひとりにいたるまで、会社全体がよく理解できるからです。)(こちらから引用
【ヨリタ歯科】
次は、以前に当ブログで紹介されたヨリタ歯科さん。ヨリタ歯科の運営の根本にあるのは、「何よりも自分たちが仕事を楽しまなければ、患者さんも楽しいわけがない。メンバー一人ひとりがイキイキと働き、チームとして一緒に支え合い協力し合える。そんな喜びを分かち合いたい。」という院長の考え。そういう理念を掲げている企業は少なくないですが、実際に積極的に取り組んで成功させている企業はそんなに多くないもの。ヨリタ歯科では、「Our Credo(私たちの信条)」をつくり、みんなで常に共有できるようにしたり、ミーティングを工夫したり、イベントを開催したり・・・スタッフの充足を目指して、とにかくいろいろなことに取り組んでいます。
>実際スタッフからは・・・「自分が役に立っているという実感が持てるようになった」「自分が好きになった」という言葉が返ってくる。ヨリタ歯科では、一人ひとりを認める、一人ひとりに感謝するイベントが数多く行なわれている。「ありがとう」の色紙も全員に渡される。全スタッフにお互いが感謝のコメントを書いて渡される。・・・まず自分からありがとう。その気持ちがスタッフに伝わり、スタッフ間に伝わり、患者に伝わる。それが、患者に喜んでもらえるサービスの原動力になるのだという。(こちらから引用)
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メディアでとりあげられ、ちょっと有名になりつつある銀座の“ブスママ”こと、石川香さん。彼女の経営するクラブは、まさに“人とのつながりから得られる充足”を大事にできています。そして実際、業績もいい
例えば、あるお客さんの情報が一人の女性スタッフに入ってきたとする。ふつうのクラブでは、その情報を生かして自分の手柄にしたいから、「しめしめ♪」と思い、同僚に教えたりはしないでしょう。でも、石川さんのクラブは、そうじゃない。その情報をみんなで共有し合ってお客さんを喜ばせようとするんです。「わたしが勝ちたい!」という個人の意識ではなく、「みんなで楽しくやっていこう♪」という全体の雰囲気ができている。それは、何よりスタッフの女の子たちが楽しんで働いてくれることにつながるし(だから成果もあがる!)、お客さんの意識も、「あの女の子に会いに行こう」じゃなくて、「あの店に行こう 」となる。
画像はこちらから
上の3つの事例に見られる共通点・・・
それは、人(ここでは主に仲間)との充足を得られる場があること、そしてそれによって社員が活力アップしていること。
お互いを競争相手とみなし個人でバラバラに動くよりも、お互いを認め合ってみんなで成果をあげていったほうが、断然楽しいし、そういう活力のあげ方をしている企業は、今後勝っていけるでしょうね
②三方よし(「売り手よし、買い手よし、世間よし」)
このシリーズ2-4で、近江商人の古き良き商売規範である「三方よし」を紹介しました。これは昔だけに通じる考えではなくて、今まさに企業に求められている心意気でしょう。社員よし、お客さんよし、それだけなく、社会よし。社会(みんな)が本当に“いい”というものを生産している。“いい”と思える場をつくりだしている。そんな企業を紹介します☆
【ウェザーニューズ】
ウェザーニューズは、そのまんま、天気予報を提供する会社。
天気予報のもととなる気象情報というのは、唯一気象庁(つまり政治機関)が握っているものなので、実は意図的な情報操作なんかがあったそうです。そんな状況の切り口として、ウェザーニューズが目指したのは、「視聴しているサポーター自らも参画させ、その地域に必要な情報をサポーター1人1人が、供給者として発信していく」こと。(引用はこちらから)
だから、一般に天気予報というのはアメダスによる観測だけを頼りにしているわけですが、ウェザーニューズでは、有料会員サポーターの五感による“感測”(各々の地域の天気)と合わせて、より住民の現実に即した優良な情報として提供することを可能にしているんです。そして、発信者を、ポイントの付与で、受信者に評価させることによって、よりみんなをまきこんだ大きな動きを起こしています。
ここのHPには『これからの天気予報は みなで一緒につくる時代へ』と出てきますが、この、住民を当事者としてまきこんでいく発想は、これからの企業主導の社会づくりとしてかなり可能性がありそう。天気予報にとどまらず他の分野に広がっていくことが、期待されますね☆
次に紹介するのは、「高齢社」。おもしろい名前ですよね。その名のとおり、少子高齢化にアプローチしている会社なんです。
【株式会社 高齢社】
設立:2000年
資本金:1000万円
少子高齢化と言えば、問題となってくるのは労働力不足。彼らは、その解決のキーとなる労働力の確保という社会課題に、“定年後の人にも働く場・生きがいを持てる場を提供する”という充足起点のスタンスで、取り組んでいます。高齢者と言えば、“もう働けない”とか、“あとは国の福祉制度に頼るだけ”なんてイメージが先行しがち。そういう世間に対して、定年後の人でもみんなと同じように働くことができるし、社会の役に立って充足できるということを、真っ向から示してくれているのが、この会社の革新的なところです。みんなの認識を、より本来的で真っ当な方向へ転換させてくれているんですね。そういう意味では、高齢社の事業は社会改革のはじまりと言っても過言でははないのかもしれません。(こちらを参照)
【ノーソン】
“農村”とコンビニの“ローソン”をかけて名付けられた、「ノーソン」。大分県の中津市(旧・耶馬溪町)というところにつくられた、住民出資によるコンビニだそうです。
画像はこちらから
始まりは「過疎化が進み、線路も廃線。役場もなくなり、そして農協までが撤退。中津市街の大型スーパーまで20km、歩いていける店がなくなった」・・・という状況。過疎というのは、イコール生産の基盤を喪失するということに等しく、住民にとってはかなり危機的。そんなガタガタな状況を突破すべく、自分たちに必要なものを仕入れて売買できるお店として、ノーソンがつくられました。
だから、ノーソンは住民にとって、もはや、“あったらいいな”ではなく、“なくてはならない”組織と言えるでしょう。「生活に不可欠な社会インフラであり、ライフラインであり、セーフティネット」であり、そして「事業を通じて住民の生活の貢献に貢献するだけではなく、もっと広い領域において住民の生活に不可欠の存在」なんです。(引用はこちらから)
以上、これから可能性のあるいい企業の事例を、①共認充足、②三方よし、というキーワードに絞って見てきましたが、実はもうひとつ、いい企業の要素として、③「出資・経営・労働」の三位一体があるんです。
その中身は、次週に詳しく展開しますが、例えば今回紹介したノーソンも、この出資・経営・労働が一体の運営の上に成り立っています。過疎化という社会課題の解決を、行政に求めるのではなく、その解決に向けて住民自身が着想し、行動。そして、ノーソンという組織を、自ら出資してつくりあげ、運営している。しかも成功させているわけですから、このような地域密着の共同経営に、新たな可能性を感じずにはいられませんね。
次回記事では、「高い当事者意識を生み出す企業形態とは?」「そのための条件とは?」「それを実現するための課題は?」という論点に沿って、その③三位一体に迫っていきたいと思います^^/
また、次回は「会社って誰のもの?」シリーズのまとめ投稿ですので、どういう結論が出るのか、そのあたりも一緒に楽しみにしていてくださいね
- posted by shimaco at : 15:58 | コメント (4件) | トラックバック (0)
コメント
今まで当たり前と思っていた公的サービスがこれから維持出来なくなってくるんですね。(どうしよう・・・)
今後の追求を楽しみに待っています。
ハード、ソフト両面の社会的基盤が失われつつある。それもほぼ確実に見えていること。
うすうす感じていることでしたが、あらためて図解で見てリアリティが高まりました。
今回の震災を機に「どうする?」を真剣に考えたいテーマですね。
みるみるさん、実は当たり前と思っていたものが、過剰すぎたのかもしれません。
震災の計画停電でも、震災の影響を受けない人まで節約が大事だと感じているような、本当はその方がしっくりきているのではと思うほどです。
羊熊さん、失われつつあるもので、本当に必要なものは何かを見極める必要がありますね。
また、そうすると、みんなにとって必要な仕事とは何かが見えてくるような気がしますね。今後はこのあたりを追及したいと思います。
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