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2010年11月03日

★シリーズ『会社って誰のもの?』~3-4. 「出資・経営・労働」三位一体の経営~雇われない働き方~

前回の「3-3.これから可能性のあるいい企業って?~」では、いい企業の条件として、「①共認充足(=日常の仕事に関する社員参加の場を設ける→改善課題や提案→活力アップ)」、「②三方よし(=売り手よし、買い手よし、世間よし)」の2つを実践している企業事例を紹介しました。
そして、今回は住民出資の「ノーソン」のように、従業員や住民が出資までおこなっているケースに注目してみます。

だから、ノーソンは住民にとって、もはや、“あったらいいな”ではなく、“なくてはならない”組織と言えるでしょう。「生活に不可欠な社会インフラであり、ライフラインであり、セーフティネット」であり、そして「事業を通じて住民の生活の貢献に貢献するだけではなく、もっと広い領域において住民の生活に不可欠の存在」なんです。

 
通常の企業では事業として成立しにくい過疎地において、地域の顧客から必要不可欠の存在になっています。社員さらには顧客までが自ら出資してその事業を支え、より良くしていけるよう改善提案をし、必要なサービスを提供しようとする、これらの底流にあるのは「高い当事者意識」であり、その当事者意識が生み出す高い生産性や品質(商品やサービス)なのだといえます。
それを可能にしているのが、3番目の条件としての「③出資・経営・労働」の三位一体だといえます。 ちなみに、この3つの条件は並列ではなく、次のように、基本となる「①共認形成」を「②三方よし」および「③三位一体」が包摂していく関係にあると考えています。

本文に続く
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1.「出資・経営・労働」三位一体の経営~雇われない働き方の可能性~
 では、まず、この「出資・経営・労働」の三位一体の企業事例を見ていきましょう。

■1/31なんでや劇場レポート3 企業における「共同体的」仕組みの事例■
●なんでや劇場資料~企業における「共同体的」仕組みの事例

【社長交代制】【経営者と労働者の一体化】【経営情報公開】役員と従業員の境目をなくし、全員が経営者として仕事に取り組むようにした。社長業も2年毎に交代するシステムにしている。そのため、経営情報は全て社員に公開している。
【社員の出資】銀行借入も内部留保も「0」であり、社員及びグループ会社からの出資による資金提供によって会社運営が成り立っている。利益は全て社員への給与と顧客への還元に充てている。
メガネ21(メガネ販売)
【社員の出資】【上場廃止】経営陣と従業員による企業買収(MEBO)を採用した。会社所有を経営陣と従業員に集中させることで、短期的な収益を重視する外部株主を排除し、長期的な成果を狙った投資などがしやすくなった。
サンスター(日用品メーカー)-
【社員の出資】スペインで約40年前に結成された、協同組合発の巨大企業体(構成員約42,000名)。従業員全員が出資・経営権を持ち、重要な業務執行の決定権も総会で決定される。当事者意識や連帯感から、企業に対して強い愛着が生まれている。
-MCC:モンドラゴン労働者協同組合企業体(多業種の融合体)-
【地区住民による出資】【地域通貨】地域の全世帯 が出資金を出し合って購買組合を設立し、「共同店」という形態で店舗経営をしている。「出資した、みんなで作っていく」という姿勢で、常に時代に合わせた 新たな取り組みを取り入れている。利益は配当金という形で住民に還元したり、自治会費・PTA会費などに当てたりして地域を支えている。
-NPO法人ゆいまーる琉球(小売)-

  中小零細企業の規模から上場会社の規模まで、従業員による出資と経営への参加という方法に着目し、それを企業経営に生かしている事例は増えてきているようです。日本の事例ではないですが、なかでも、モンドラゴン協同体組合は、地域全体の雇用を活性化し、企業組織としても巨大な規模に成長している点で注目されます。

「モンドラゴン協同体組合にみる共同体の可能性」

■モンドラゴン協同組合とは?
働く労働者が組合員(=所有者)の事業体

モンドラゴン協同組合は、労働者が出資し経営する労働者協同組合グループです。
出資金額は本人の年収1 年分と同額で、これを一度に払えない場合は最長7 年間に分割して支払うことができます。出資金に対しては毎年の純利益の中から出資配当が行なわれ、それらは本人が退職するまで積み立てられます。
■モンドラゴン協同組合を支える4本の柱
(1) 社会的運営
① 社会とのかかわり

仕事を起こし、働く場を創出することを通じて地域社会を豊かにしていくこと。それが、モンドラゴン協同組合の創立の目的であり、一貫して追求されてきたことでした。また、純利益の10%を、教育・社会事業の基金に拠出しています。
② 労働者組合員の生活の安定

年収額は職務・職種によって分けられ、最低年収はフルタイムの場合約14,000ユーロ(約200 万円)、パートタイムで約9,000 ユーロ(約130 万円)です。これは、スペイン全体の最低ベースより2割ほど高いとのことでした。
③ 利益の分配

協同組合の事業によって生み出された純利益は、おおむね下記の割合で配分されます。なお、この配分割合は固定されたものではなく、実際の配分額は毎年の総会で決定されます。
純利益の10%を社会プロジェクト=教育、社会事業に
    50%を内部保留=事業資金
    40%を出資配当=労働組合へ還元
④ 労働者組合員による経営

労働者組合員は、自分の所属する協同組合の所有者であり、経営に参画することが出来ます。所属する協同組合の総会に参加し、一人一票の議決権を行使できます。
日本は共同体が解体された時期が遅かったからこそこれからの共同体社会の実現の可能性は高いと考えていたが、スペインでもモンドラゴンのような共同体の可能性、実現基盤があるというのは気付きだった。
1940年代 8千人程度だった町の人口は、現在では約2万4千人に増え、「協同組合の町」として今も成長し続けているようです。
共同体社会の実現のためには、こういった共同体の実現基盤が日本だけでなく世界各地で必要だと感じた。

どうでしょうか?従業員自らが出資するシステムもそうですが、①共認充足(=日常の仕事に関する社員参加の場を設ける→改善課題や提案→活力アップ)、②三方よし(=売り手よし、買い手よし、世間よし)の要素も見事に実践されていることがわかります。
2.改めて、「会社って誰のもの?」
■会社法が定めているのは「支配の構造」であり、目的は「出資者の私権拡大」
もともと、このシリーズでは、「M&A急増に伴う会社の売買って、何かおかしくない?」「経営者と株主だけで決定し、従業員は疎外されたまま」「会社はモノではないはず」といった疑問から考えてきました。
では、改めて会社は誰のものといえるのか?

・このうち,会社法が主に対象とする人的支配構造は,①の株主と経営者との関係であり,②にかかわる従業員(労働者)や会社の経営資金の提供者である債権者との関係は含まれていない。
・これに対して,労働法が主に対象としてきた人的支配構造は,②の経営者と従業員(労働者)との関係である
 
「コーポレート・ガバナンスと労働法」石田眞氏よりお借りしました。

中世ヨーロッパから始まり、現代の株式会社に到るまで、会社の組織形態の変遷についてみてきましたが、会社法の歴史は、徹頭徹尾、資本家(株主=金主)と経営者の間における支配構造が対象であって、つまりは、いかに「会社という組織を活用していかに私権を獲得するか?」ということにつきるのだと言えます。
 また、逆に19世紀以降に広まった労働法では企業や経営という概念がなく、労働者の権利をいかに守るかが主たる目的となっています。
  いずれにせよ、出資者と経営者、あるいは経営者と従業員の支配関係についてしか対象にされていません。

法人企業としての株式会社は2階建てになっており(図2),2階部分では,株主が株式を所有することによって会社をモノとして所有し,1階部分では,その株主によって所有されている会社がヒトとして会社資産を所有しているのである。そして,このような株式会社の構造を前提とすると,株主主権的なアメリカ型会社も,従業員主権的な日本型会社も,2階建て構造の株式会社の2階を強調した会社のあり方(アメリカ型)なのか1階を強調した会社あり方(日本型)なのかの相違にすぎないことになる
 
「コーポレート・ガバナンスと労働法」石田眞氏よりお借りしました。

  そして、その最先端である現代の株式会社においては金融市場の発達も相まって、会社のモノ化(商品化)が進んでしまっている状態です。特に、ファンドなどに代表される機関投資家(投資のプロ達)が、企業の株を大量に保有するという事態が増え始めたのは、‘80年代以降だと考えられます。
 
 
  金主や金貸し達にとって、都合の良いように制度が改変され、現在では、もはや株式を公開していることは常に見えない株主からの企業買収の危機にさらされているのだと言えます。そして、企業買収の危機までは行かなくとも、短期的な四半期の収益にしか関心のない株主達によって長期的な企業の成長戦略が疎外されるということも起きてきています。
■日本は伝統的に企業=集団という考え方がなじんでいる
 しかし、日本では会社という組織形態は、明治以降に輸入されたものであり、中世ヨーロッパやアメリカのように歴史的に私権拡大の手段として発展、獲得されてきたものではありません。むしろ、明治以降の日本の会社は、江戸時代の農村共同体や儒教の影響も受けつつ、国家として経済成長していくことを至上命題とした社会的存在として発展してきた経緯があります。
 そして、工業生産時代には、会社における主たる生産手段は「機械」であって資本(お金)によって所有しうるものだったといえます。しかし、既にモノは行き渡り、その結果、貧困が消滅して共認欠乏が最大の欠乏となった現在では、主たる生産手段は「人」そのものへと回帰しています。意識生産時代の会社というのは、生産手段を有する「人」の集まりであり、その集合体である会社は共に目的を実現しようとする集団であり、そのための(闘争や親和の)充足の場であると考えられます。
 となれば、単に資本力によって機械を大量に購入し生産力を高める事よりも、一人一人の社員の活力や能力を高めることこそが、会社が存続し、買っていく為の最大の課題となります。そのためには、社員全員の当事者意識を高め、経営者と労働者の分け隔てなく、共に課題や役割を共認し、協働していける組織のあり方(会社形態)が問われます。
 そのような日本的会社においては、株主=出資者のみを過度に偏重する「株主資本主義」は従業員の主体性も意欲も阻害し、結果として生産性も減少することにつながり、逆に従業員自らが経営者の立場に立ってともに会社を発展させ地域や社会の役に立っていこうという考え方のほうがうまくいきます。
 よって、「会社は誰のモノか?」という問いには、まず主役であり現場を支える従業員、方針を示しサポートする経営陣、その会社を応援してくれる顧客や地域(社会)、そして資本を出資する株主、関わる人すべてのものだといえるのではないでしょうか。
3.注目される企業再生のひとつとしての「エンプロイー・バイアウト(Employee Buy-Out、従業員買収)」
 そのような意味で今後、注目される企業再生のひとつとしての「エンプロイー・バイアウト(Employee Buy-Out、従業員買収、略称: EBO)」というものがあります。

エンプロイー・バイアウト 」出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 エンプロイー・バイアウト(Employee Buy-Out、従業員買収、略称: EBO)とは、会社の従業員がその会社の事業を買収したり経営権を取得したりする行為のこと。中小企業など中心に古くから盛んに行われている。日本では、村上ファンドが松坂屋及び従業員に対し提案したとされ、マスコミなどに取沙汰された。経営陣が行う場合はマネジメント・バイアウト(MBO)という。広義には、オーナーでない経営陣によるマネジメント・バイアウトも含む概念である。
 従業員は本来、勤務先との間で雇用契約により業務に従事しているだけであって、勤務先の所有関係には関与していないのが通常である。その従業員が、 自己資金や借入れなどにより、勤務先の株式を取得し経営に参加などするのがエンプロイー・バイアウトである。従業員が単独または複数によって買収する場合 には、通常は、買収後の企業は株式の公開を行わない非公開会社となることから、外部からの企業買収に対する対抗策として用いられることもある。

  
 具体的には下記のような事例がでてきています。

社員みんなで会社を買った~地方発 “EBO” の挑戦~
 イタリア賞まで受賞して評価の高かったNHKドラマの「ハゲタカ」で、鷲津ファンドの提案は大空電気のカメラ・レンズ事業部を120億円で売却することだっ た。出資者は、下請け会社とMBS銀行、そして従業員。エンプロイー・バイアウト(Employee Buy-Out)である。従業員は、勤務先との雇用契約を結んでいるだけであるが、自己資金や借入によって会社の株式を取得して経営参加すのが通称EBO である。日本ではめったにないドラマ「ハゲタカ」の実録のような会社のドキュメンタリーが、3月10日放映のNHKスペシャル「社員みんなで会社を買っ た~地方発 “EBO” の挑戦~ 」である。
 太陽電気製造のある中堅メーカーが、業界世界シェア4位の中国企業に平成18年に買収された。業界での日本のメーカーの技術とブランド価値は、海外でも高い評価を受けているにも関わらず、大規模なリストラの結果、福岡大牟田工場が閉鎖されて従業員 100人は路頭に迷うことになってしまった。ここで立ち上がったのが、都市銀行の財務畑を専門に歩いてきた元銀行員と工場長、そして従業員である。彼ら は、自ら資金を出し合い、銀行と交渉して資金提供を受けて会社をみんなで買ったのだ!
従業員と共に歩む、企業再生と経営改革
富士車輌株式会社 代表取締役社長 津田 弘史氏
・富士車輌は、1925年、鍛圧機械メーカーとして創業した。現在は、環境装置・環境プラント事業、塵芥車を中心とした特 装車事業、圧力容器を中心とした化工機事業の三事業とこれらのメンテナンスサービス事業を展開している。私が招聘され社長に就任したのは、今から4年前の 2003年6月。民事再生手続きが認められた1年後だった。
・結局、会社とは“人”がすべてだと思う。物も金も大事だが、物や金を生み出すのも人なのだ。「会社の中に、元気のいい人をつくろう」と私は考えた。 人事制度をつくり直し、若手の抜擢を行い、評価が上がれば給与、賞与もあがっていくようなしくみもつくった。私のモットーは、「執念・誠意・数字」の三つ である。道を開いていくのは、熱意というより、思い定めたことに喰らいついていく執念だ。そうした社員がいれば、その執念は周りに広がり、会社が甦る大きな原動力となっていく。そして、会社がよくなっていることを、数字で全社員に逐次伝える。
・05年、黒字が見えてきたとき、支援を受けていたNPF(野村プリンシパル・ファイナンス)が、事業会社への株式の売却の検討に入った。そのとき、私の頭をよぎったのは「一生懸命、頑張ってきた社員たちに報いたい」という思いだった。
・民事再生に陥ったのは、経営不在の結果だった。親会社から次々とトップがやってきて、数年すれば代わっていく。そうした体制で、責任ある継続的な経営が失わ れていた。そのツケを背負って、ここまで苦しい思いをさせて付いてきてくれた社員たちがいる。その社員たちに、また同じような思いをさせたくなかった。
・そこで、協議の末に行き着いたのが、MEBO(management employee buy-out)である。社長と役員と従業員で、会社の株を三分の一ずつ持ち合い、従業員と一体となって経営をやっていこうというものだ。

 
 このように、日本においても従業員が出資して経営に参画していくという流れは加速しつつあるように思われます。これらも「出資・経営・労働」三位一体の企業形態へとつながる方法の一つです。
 そして、「出資・経営・労働」が一体となる事で、株主と経営者、経営者と労働者における分離と支配の構造を脱することができ、本来の誰もが運営に参画できる集団としての形態を取り戻す事ができます。
 次回の最終回となるエピローグでは、今までの会社の歴史やシステムについて復習し、これからの時代における新たな企業形態の可能性についてまとめてみたいと思います。

 

コメント

産業人口の構造の変化、感じている以上にすごく大きな変化っていうのが、データを通してよくわかりました。(グラフいっぱいありがとうございます^^)人々の意識がやっぱりいつも社会を変えていくんですね。
余談ですが、“無理やり市場拡大の時代”って端的なネーミング☆いいですね~!

  • shimaco
  • 2011年5月22日 00:23

shimacoさん、コメント有難うございます。
たった数十年で、産業構造がこれだけ変わっていたとは改めて驚きました。で、急激な人口減少社会に突入するこれからは、変化のスピードも速くなり、資本主義経済も衰退していくので、新たな産業や働き方がどんどん生まれていくのだと思います。
シリーズも中盤にさしかかっています。
これからの新しい働き方とは?落着店はどこなのか?
これからも、楽しみにしていて下さいね。

  • isgitmhr
  • 2011年5月28日 15:20

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