2011年09月30日
みんなが主体的に考え行動できる組織作りが経営者初期10年の仕事・・・『ネッツトヨタ南国さん』
社員の提案でつくられた、車が一台も無いホテルのラウンジみたいなショールーム。そこでは、地域の家族連れや老夫婦が雑誌や新聞を広げコーヒーを飲んでいます。これが、今回紹介する『ネッツトヨタ南国』さんという自動車ディーラーの日常風景です。
そして、そのお店に届いたお客様からの手紙には、
お客様からの手紙いつも私の仕事帰りは遅い。
帰り道、ネッツ南国店は明々と輝いて、何か安心する。
店内をのぞくと、営業は終了しているのだろうが、
まだ客らしき人がテーブルで話をしている。
別の日はショールームスタッフらしき人たちが店の奥で話し合いをしている。
仕事に・・・・・というよりも、お客様に熱心なスタッフを見て、
この店にしてよかったな・・・・・と思う。
一期一会。
今までは点検も修理も極力安い店で・・・・・の精神であった自分が、
これからはすべてをこの店に任せよう!と思えたことはすごい。
のように、長時間楽しそうに『仕事』をするという、仕事というものの常識とは大きく異なる風景と、お客様の感謝の念が書かれています。
また、業績としても、毎年の売上増加、来客の増加を達成しているのです。このような会社は全国のネッツトヨタ 7万社程度のうち3~4社しかありません。それも90年以降、売上は毎年減少傾向で軒並み苦しい戦いを強いられている業種でにもかかわらず、です。
なぜこのように、お客様のこころをつかんで、活き活きと熱心に夜遅くまで『仕事』ができているのでしょうか?
それでは、その秘密を探しにいきましょう
☆☆☆経営方針は『全従業員を人生の勝利者に!』
ネッツトヨタ南国さんは『全従業員を人生の勝利者に!』という経営方針をもとに、社員が活き活きと働ける会社をつくり、その結果として売上を増加させてきたのです。この経営方針は、売上指標達成の為には徹底したノルマを社員に課すなどの厳しい管理圧力が必要という、従来型の経営方針とはまったく異なります。
この方針により、従来型では成績が伸びないばかりか、社員の仕事のやりがいもなくなり、離職率は増え、肝心の企業の活力すらなくなってしまうという状況を克服し、活力のある会社をつくってきたのです。そのために経営者は何をしたのでしょうか?
☆☆☆みんなが主体的に考え行動できる組織作りが経営者初期10年の仕事
一般的に経営者は、企業成績を上げるために、売上に直結するどんな営業戦略をとっていくかに頭を使います。ところが、ネッツトヨタ南国さんの経営者は会社立ち上げの10年間には、売上増加に関する営業戦略に、ほとんど関与していないようなのです。
そして、実際に行ってきたことは大きく2点です。
第一点は、社員の主体性を上げる仕組みづくりです。
第二点は、人材の募集活動に膨大な時間を割くことでした。
それは、大学生の場合で一人20時間以上、会社訪問は5回以上、そして、実際に働いている社員と次々にあわせていくなど、経営方針に賛同してくれる仲間を集めるために、経営者は膨大な時間を割いてきたのです。
この経営判断は、貧困が消滅した‘70以降すでに始まっていた、お金や地位よりも、やりがいや人に認められる充足の方が大切という、共認充足を求める意識潮流にピッタリはまっているのです。そして、その実現のために、最初の10年は、みんなが充足できる組織作りを経営者自ら担っていくという決断をされたのだと思います。
そして約10年後、人材募集部門の設立を期に、経営者は組織作りという重要課題を新しい人材に引き継いだのです。その部署は現在、『ビスタワークス研究所』として、自社の採用や教育だけではなく、高知県全体の人づくりに焦点をあわせた活動をすることで、初期の経営方針を拡大発展させているのです。
このように、活力がある人材の育成がすべてに優先するという方針は今も社風として受け継がれているのです。
☆☆☆『社員の社員による社員のためのルール十か条』をつくる
活力のある組織作りのために経営者が最初にとった行動は、社員から『どんな会社で働きたいか』のアンケートでした。その内容は、『チームワークの良い会社』『コミュニケーションの取れている会社』『お客様から感謝されて、生きがいを感じられる会社』『がんばったことを認められる会社』『家族や友人に誇れる会社』などでした。
これは、人に喜ばれる仕事をして、まっとうな評価を得たいという当たり前のものでした。そして、その結果から、『社員の社員による社員のためのルール十か条』をつくり、会社経営の方向性を固めたのです。
常に既成を破ろう 組織図はつくらない
安楽椅子はない 重役を投票制で決めよう
全員の経営参画 多数決はしない
売上を伸ばせとは言わない 駐車場には線を引かない
共に育つ「教育制度」 やる気の無い人は幸せに出来ないこれらのルールは一例です。私たちは新しい発見に感動し、成長する喜びを分かち合い、これからも創造を大切にします。
これは現在も進化途中で、さらに塗り替えられています。
このなかでも特に、全員の経営参画、売上を伸ばせとは言わない、共に育つ「教育制度」は組織に浸透しています。それは、全員で主体的に経営を考え、みんなで成長していくこと自体が、社員の活力を上げ、『売りを伸ばせとは言わない』とう言葉とは裏腹に成績も向上しているという結果を残しているからです。
☆☆☆多数決を排して、全員合意で営業方針を決めていく
この十ヶ条を実現するための方針の一つが、多数決を排して、全員合意で営業方針を決めていくことです。このために、合意に至るまでみんなで追求することになります。その結果、時間はかかりますが、今まで考えられなかったようなアイデアが出てきて問題を解決していけるという、成功体験を積み上げることになりました。例えば、
問題になったのは、「家族でくつろげるショールームというコンセプトなのにヌードグラビアが時々掲載される雑誌をお客様の要望だからと言って置いていいのだろうか」とうことでした。
そうするうちに「お客様が男性向娯楽雑誌を読みたいというのは、お客様が退屈しているからではないのか、お客様が退屈と感じさせない工夫をすべきではないか、自分たちが提供すべき時間は何なのか」という話し合いに発展していきました。
結果として、暇つぶしの娯楽雑誌は必要最低限とし、それよりもスタッフがお客様に直接コミュニケーションをとる時間を多くとろうということになりました。そこからお客様対応システムの開発や様々な対応の改善につながっていったのです。
この結果生まれた、お客様対応システムは、お客様の担当のスタッフがいなくても、他のスタッフが連携しながら、きめの細かいコミュニケーションや接客が可能にするもので、IT開発会社に丸投げするのではなく、ショールーム担当のスタッフ中心となってプロジェクトで話し会いを重ねながら仕様を決めていったそうです。
この様に、お客様の充足の為に、みんなで納得できる方針が出るまで、とことん追求する。そうすると、お客さんに喜んでいただくことが出来て、みんなで担うその仕事そのものが充足に繋がるという組織が出来上がっていったのです。先ほどの、車が一台も無いショールームも、この様な社員の提案から生まれたのです。
これ以外にも、社員でつくるたくさんのイベントや、毎日の出来事をアップした『きょうのVISTANETZ 』など、活き活きした会社の様子がHPには満載です。
☆☆☆全員の経営参画により、仕事観の転換を実現する
いまだに会社選びの基準に、給与の多さや勤務時間の短縮や休日の多さなどが重要視され、それが無いとブラック企業などと揶揄されることがあります。しかし、この事例は、その認識が根底から間違っていることを示唆していると思います。
というのは、仕事に充足が感じられない代償として、給与の多さや福利厚生の充実が意味を持つからです。そこでは、社員は会社に雇われるもので主体性を発揮して楽しく仕事はできるものではないのが現実だという、前時代の固定観念があります。
それに対して、ネッツトヨタ南国さんの『全員の経営参画』という方針のもとでは、会社の課題はすべて自分たちで提案し解決することになります。そうすれば、そのこと自体にやりがいを感じ、『仕事』での充足に繋がっていきます。ここでは、仕事で充足できない代償としての労働時間短縮や福利厚生などは第一価値ではなくなってしまいます。
その結果、先に紹介した、長時間楽しそうに『仕事』をするという、仕事というものの常識とは大きく異なる風景をもつ会社が実現したのだと思います。
そして、これまで、ネッツトヨタ南国さんの『仕事』をあえて『』でくくって表現してきたのは、明らかに従来の常識とは異なる、新しい意識潮流を捉えた、充足するための『仕事』という、仕事観の転換が、そこにあると感じたからです。
☆☆☆『利益第一』から『社員の充足第一』へという、経営者の認識転換が企業を成功に導く鍵
「ビジネスの戦いはお客様との信頼関係獲得の戦いであることを社員に教え続けています。不況の時代には本当の意味でお客様に信頼されていないと結果に結びつかない。自分達がお客様に感謝される事によって、やりがいを感じたい、その為に追求するんだ、というふうに位置づけて取り組む。ここが凄く大事だと思っています。」
この言葉の中には、今までの自分や自社の利益だけの闘いである【私権闘争】から、『お客様との信頼関係獲得の戦い』という、相手と充足を創り出すための闘い=【共認闘争】へと時代は移り変わっていること。
だから、お金や地位を得ることによる充足より、相手の期待の応えて感謝されたときの充足=【期待・応望の共認充足】の方が大きいなどの、時代の変化を確実に捉えた方針がはっきり見えます。
まさに、『利益第一』から『社員の充足第一』へという、経営者の認識転換が企業を成功に導く鍵なのです。
この様な成功体験を、ぜひ広く世に中に広めていっていただきたいと思います
- posted by sinsin at : 0:20 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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