2011年12月20日
共同体社会の実現に向けて【14】 企業を共同体化し、統合機関を交代担当制にする(上)
2011年も年の瀬ですね。
今年は、大震災と原発事故という日本社会の根幹を揺るがす大きな出来事がありました。また、欧州国債危機にはじまる金融崩壊の切迫、為替・金融商品をめぐる金融資本の暗躍、アメリカ勢の生き残りをかけたTPPのゴリ押し、中国バブル終焉と大混乱の予兆、アラブやロシアでの民主化に名を借りた金融勢力の覇権闘争等々、世界も激動しています。2012年、世界は、日本はどう動くのでしょうか。
「新時代を切り開くのは、共同体企業のネットワーク」(上)(下)では、経済破局に伴う秩序崩壊を食い止め、新たな共認社会を切り開く新勢力は、共同体企業のネットワークしかないであろうこと、そして企業を共同体化しネットワークを構築する社会事業の必要性、古い観念(民主主義)からの認識転換の必要性を確認しました。
今回は、国債暴落にはじまる経済破局→経済リセットの仮説を踏まえて、来るべき近未来の社会運営、経済運営の政策方針のありかたを考えます。いよいよ来年もしくは再来年には経済破局が訪れるという見方も現実味を帯び、事態は切迫しています。企業経営者、生産者も、生活者も先を見据えた追求と対策が求められます。
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【新勢力の政策方針701】
それでは、リセット後の大混乱の中で、共同体企業のネットワークを中核とする新勢力が打ち出すべき政策は、何か?
次の社会が共認社会である以上、当然、『共認社会の実現』が、リセット後の全ての社会運営の大目標となり、経済運営の大前提となる。
まず最初に断行する必要があるのは、中央銀行の廃止と国家紙幣の発行である。
そして経済運営としては、自然に適応した循環型社会に転換するために、ゼロ成長を基本としつつも、農と新エネルギーの振興に重点を置く必要がある。
ゼロ成長とは、簡単に言えば、売り上げUPゼロ、従って給与UPゼロ、預金UPもゼロということであり、何がしかの余裕蓄積(企業の利益蓄積や家計の貯蓄)が必要になるが、その必要分は、国家が企業と国民に新紙幣を配給すれば足りる。ただし、インフレを沈静化させる必要があるので、最初は最低限度分のみ支給し、インフレが治まるのを見ながら追加支給をしてゆくことになる。
また、マイナス1%成長とは、売り上げマイナス1%、給与もマイナス1%ということであり、これは物価がマイナス1%になる(or物価が同じなら物量がマイナス1%になる)のと同じである。従って、もしゼロ成長に戻す必要があるのなら、その場合は、その1%分の国家紙幣を国民に支給すれば足りる。
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国家紙幣によるゼロ成長の経済運営
70年の貧困の消滅は、市場が縮小していくことを意味するものでした。
それに危機感を覚えた経済成長絶対の特権階級たちが、国債を発行し国に借金をさせることでムリヤリ経済成長を促した結果、バブルを引き起こし、国の借金が1000兆円にまでのぼるという市場崩壊の危機を招いたのです。
そもそも国の借金が増えるのは、中央銀行制度(中央銀行が紙幣発行権を握っている)だからです。
中央銀行は、金貸しが国からお金をしぼり取るために作り上げられた機関なのです。
リセット後の社会でも中央銀行制度のままだと、国債経済=借金経済→バブル→市場崩壊の繰り返しになってしまいます。
中央銀行制度を廃止し、それに代わり政府が紙幣を発行する国家紙幣制度を導入することで、国家主導の新しい社会=共認社会を作っていくことが可能になっていくのです。
参考:潮流4:輸血経済(自由市場の終焉)
経済が成長するのは、必要なものが足りていないから皆が必要なものを求めて経済活動を行うからです。
’70年豊かさ実現(必要なものが行きわたった)した以降は、経済成長は平衡になるのが自然なありかたです。
つまり、ゼロ成長のサイクルが適応可能性であると認識を塗り替える必要があります。
これからの経済活動は、いかに利益を上げるかというものではなく、いかに相手に喜んでもらえるかという、充足のやりとりに軸をシフトしていくことで活力が上がっていくのです。
参考:忘れられた経済学者シルビオ・ゲゼル①
忘れられた経済学者シルビオ・ゲゼル②
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【新勢力の政策方針702】
同時に、市場ではペイしないが、社会に絶対必要な生産活動、すなわち農業や介護や新エネルギー開発etcに対する大型の助成が必要になる。(ただし、助成金を一律にばら撒くのは愚策であり、農業や介護については、例えば売上高に応じてその50%~150%を助成する生産高方式をとる必要がある。)
当然、財源が問題になるが、初めの一年間で市場の回転に必要な国家紙幣を支給して以降は(=2年目からは)、国家支出=税収を厳格に守る必要がある。そうでなければ、国家紙幣が水膨れしてゆき、インフレになってしまう。
従って、税の取り方が重要な課題となるが、税制の基本は、所有税(土地や株式の所有税や相続税)を重くし、次に消費税(売り上げの例えば3%という形の売上税が望ましい)、そして生産税(所得税や法人税)を軽くすることである。
これは、何も生産していない単なる所有者の税負担を重くし、生産者の税負担を軽くすることによって、社会と経済の活性化を促そうとする政策である。
財政規律を守り、社会に必要な生産活動を活性化する
農業では、戸別所得補償制度や減反政策といった農家保護政策にはじまり、TPP推進により不利益をこうむる農家に対する更なる保護政策も予測されています。
また、福祉・介護業界に対しては、社会保障制度を推進してきました。
これらの政策は、生産に携わらなくてもお金の入ってくるバラマキ政策です。
このような政策を繰り返していては、これを支える多くの生産者の活力は削がれてゆき、社会全体の活力衰弱は進む一方です。
生産活動を活性化させていくためには、農業や介護など幻想価値がつけにくいが絶対に必要な仕事を、仕事として成立させていく必要があります。
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ただ保護を手厚くするのではなく、生産に対し、社会的な圧力と評価を作り出していくことが必要です。
そのためには、非生産者を保護するのではなく、売上げに対する助成金といった形で「供給者」の保障に切り替えれば、生産活動の時間も増えていき、生産活動を活性化してゆくことができます。
エネルギー分野では、今まで、経済成長と利権拡大を第一義とした政策は、原子力エネルギー開発や、安全神話の擁立に莫大な税金を投入し続け、強固な利権構造を築き、新エネルギー開発への資金投入はほとんど行われてきませんでした。
そのために、には開発中断を中断せざるを得なかった研究も多くあります。
しかし、大震災以降、安全性や環境への影響について究明され、大衆の期待は、自然エネルギー・循環型エネルギーへと向かっています。
市場ではまだまだペイしない新エネルギー開発ですが、国の補助により生産活動として成立させていくことが必要なのです。
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参考投稿
戸別所得補償制度で日本の農業はどうなる?②(日本はコメの輸出国へ変貌するしかない?)
『次代を担う、エネルギー・資源』状況編10 現在の新エネルギー政策と法制度①
『次代を担う、エネルギー・資源』状況編10 現在の新エネルギー政策と法制度②
税の取り方
現在の税政は、税収のうち、所得税、消費税、法人税で76%を占めています。法人税は原則一律30%、消費税も一律5%、所得税は累進課税方式となっています。
一見、公正な税制のように見えますが、実態は大企業や金持ちに有利な税制となっています。
例えば、消費税には、消費税をとれない海外での利益に対して、還元金を保障する「輸出戻し税」など輸出系大企業に有利な制度が定められています。
また、高額所得者ほど利子所得や配当所得や不動産所得の割合が高い傾向にありますが、それらは分離課税され、一律税率になっているので、お金持ちほど実質的な税負担が小さくなるという制度です。 👿
また社会保障費(年金、福祉等)の増大に伴い、既得権益の削減を図るのではなく、消費税増税によって取りやすいところから補う「税と社会保障の一体改革」という政策もその一事例です。
これらは、大企業や金持ちを優遇し、生産者の負担が大きな制度となっており、公正さに欠けていると言わざるを得ません。
財政規律を守り、生産活動を活性化させていくためには、生産者の負担を抑える税制に転換していくことが必要なのです。
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参考投稿
トヨタやキャノンは消費税が上がれば儲かるカラクリ:輸出戻し税①
トヨタやキャノンは消費税が上がれば儲かるカラクリ:輸出戻し税②
【新勢力の政策方針703】
例えば、土地所有税を3%に引き上げ、相続税を65%に引き上げるだけでも、相当の税収と、地価下落による投資需要の増大が期待できるが、国家紙幣体制の下では、もっと別の財源が新たに生まれる。
それは、国家が銀行に貸し出す資金に1%の金利をつけることである。
それだけでも、6兆円ほどの金利収入が得られる。
これまでは、逆に国家が銀行etcに1%以上の国債利息を支払ってきたのが、まったく逆になるわけである(日本の場合は、日銀から政府に一部返還されているが、これまでに円売り・米債買いで生じた欠損は金利1%どころではない)。
特にリセット後2~3年は、誰も銀行に預金しようとはしないので、銀行は企業に貸す資金の大半を、国家からの借り入れに頼るしかない。
従って、農業や介護や新エネルギー開発に対する大型の助成を実施しつつ、国家支出=税収を守ることは十分に可能である。
国家が銀行に貸し出す意味
中央銀行を廃止し、国家紙幣を発行すること、その上で国家が銀行に貸し出す資金に1%の金利をつけることの意味は、ひとつは上記引用文にある金利収入ですが、それだけに止まりません。
まず、中央銀行の廃止と国家紙幣の発行により、現在とは市場への資金の流れが大きく変わります。上図は、市中銀行周りのお金の流れを模式化したものですが、決定的な違いは、お金の流れの起点が変わっていることです。中央銀行制度の下では、あくまでも国家は銀行からお金を借りる立場ですが、国家紙幣の発行の場合には立場が逆転し、国家が銀行に対して力を持つことになります。
リセット後は、銀行の預金は間違いなく現在より減るため、銀行は投機等によって金儲けをしようとすれば、資金を1%の金利で国家に借りざるを得ません。国家が金融規制を強化すれば、銀行がこの1%の金利を上回る利回りを確保するのは難しくなります。
同時に、ゼロ成長経済下では企業も現在ほどは積極的な投資は行わないため、銀行からの借り手は減ります。銀行にとっては、金利を低くしなければ借り手がつかないことになり、銀行優位から借り手優位に転換します。
上記金融規制も相まって、銀行の力は相当に衰弱し、資金の循環を支える一機関としての役割のみを担うことになります。
これまで、銀行は何も生産していないにも拘らず、豊富な資金力によって莫大な利益を上げてきました。中央銀行廃止→国家紙幣発行・金融規制・国家から銀行への金利付貸し出しにより、この銀行の横暴に終止符を打ち、本当に必要とされている仕事に助成をすることが可能になるのです。
図解【新勢力の政策方針→国家紙幣によるゼロ成長の経済運営】
まとめ
「共認社会の実現」に向けた経済政策の骨格は、①中央銀行の廃止と国家紙幣の発行、②ゼロ成長を基本とする、③社会に必要な生産活動の活性化、④財政均衡と税の公正負担が大きな柱となります。
これらはいずれも、近代200年にわたって金融勢力がつくりあげた騙しの経済システムからの脱却を意味します。そのためには、市場拡大を絶対とする市場主義、私権要求を当然とする民主主義をはじめとする近代思想からの大きな認識転換が必要であり、鍵になります。
また経済運営と並んで、社会運営=社会統合の仕組みをどうするか(政治や行政、社会的な共認形成)がもう一つ大きな課題です。現在の政府・政党や官庁、大学、マスコミが機能不全に陥っていることは明らかであり、新政策としてここでも固定観念(既存の枠組み、議会制民主主義や官僚制度など)にとらわれない、大きな発想の転換が必要になります。「共認社会の実現」に向けて、社会統合機関はどのように考えるべきでしょうか? 次回、追求します。
- posted by doUob at : 22:30 | コメント (2件) | トラックバック (0)
コメント
はじめまして。
なるほど、これからの時代の良い企業というのは、社員一人一人の力を引き出す、人を大切にする会社ということに集約できる感じでしょうか?
いろいろな本を読んできましたが、実際に現場をいろいろと見てみたいなと思います。
やはり、机上の空論で終わるのと、現場をしっかりみているのとでは結果が違いますものね。
今日も学びをありがとうございました。
はじめまして☆コメントありがとうございます。
>これからの時代の良い企業というのは、社員一人一人の力を引き出す、人を大切にする会社
ポイントをつかんでくださり、ありがとうございます!
社員の活力を考えている会社こそ、これからのどんな社会状況にも勝ち続けて行くことができると考えています。
実際に、現場でその雰囲気を感じることが一番大切ですね☆
当ブログでは、実際の企業紹介もおこなっておりますので、ご参考にしてください。
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