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2012年01月19日

中小企業間で培われてきた共同体質

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写真はこちらからお借りしました
 
  
 中小企業系の組合は、戦後の企業間競争の嵐の中、企業としての一体感をより高めながら、かつ企業間の連携によって生き残りを図ろうと登場しました。その中で、私権を巡った利害関係で運営する組織に対して異を唱え、自主・自立の精神を貫くべし、と立ち上がったのが「中同協」でした。当時の状況を見ていくと、
 

戦後復興の担い手として

 占領軍による経済の民主化政策が実施され、財閥解体、農地解放が行われ、新憲法のもとで新しい国づくりが急ピッチで進められました。一方では極端なインフレが進行、国の政策は基幹産業の優先的再建を目的とする「傾斜生産方式」におかれ、中小企業は資材も資金も不足するという状況でした。しかも、国家財政が苦しいため徴税が強化されました。
 
 (中略)
 
 このような時代の大転換期でありながら、肝心の資金、資材は大企業に集中され、重税に苦しむのが当時の中小企業の実態でした。

 
 
 こうした状況下で、大企業に偏った経済政策を是正し、従業員の人格の尊重、労使が協力して生産の推進と生活の向上をめざすことを提起しながら、中小企業の存立と発展、社会的地位の向上を求めようと立ち上がったのが、「全中協」、後の「中同協」です。
 
 実は、この時に提示された“従業員の人格の尊重、労使が協力して生産の推進と生活の向上をめざすこと”、この模索こそが、中同協が今日まで続けている仲間第一の組合活動や勉強会の原点となっています。この原点を紐解いていけば、これからの意識生産時代に求められる“答え”の鱗片を見ることができそうですね。
 
 
 そこで、今日はこの中同協の活動の原点となっている理念の形成課程について焦点を当てていきたいと思います。

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■理念形成のための3つのこと
 
 中同協の理念では、経験と知識の交流、日本経済の自主的・平和的な繁栄、これからの経営者に要求される総合的な能力の修得、融合・協力・団結、等が挙げられていますが、そうした理念が形成された根底には、中同協が経営環境をよりよいものにしようと、1973年から日々新たなものへ塗り替えながら提示してきた「中小企業憲章」、1975年に提示された中小企業における経営者と労働者の関係に関する指針である「労使見解」、共通思念を共に固めていく為に日々開催されている「勉強会」があるようです。
 
 
①中小企業憲章とは
 
 中小企業憲章とは、中同協が中小企業の経営環境是正のため、1973年以降毎年政府各機関とすべての政党および全国会議員に提出してきたもので、日本政府に対し、日本経済の中核は中小企業であり、国の産業・経済政策の中心に中小企業をすえる必要性を説いたものです。
2003年5月、要望・提言から目に見える形で提示する為、「2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言」に盛り込み、6年の歳月をかけ2010年6月、中小企業庁によって中小企業憲章が閣議決定されました。
 
 この憲章の目的は、創意工夫を磨く技術力、大きな雇用力、迅速な行動力、多種多様な業種、一体となって成果に結びつきやすい経営者と従業員の関係性、地域社会と住民生活の基盤といった中小企業の真価を見つめ、日本が世界に先駆けて未来を切り開くモデルを示すこと。
 
<参考1><参考2>
 
 
 1973年から日本の将来を見据え、毎年日本政府に対して真の生産基盤作りを提起する中小企業憲章、とてもすばらしい提起ですね。
  しかし一方で、こうした提起の多くは、自らの組織の利益追求のために行われるのが常。当時、破竹の勢いで勢力を伸ばしていた中政連は、利権闘争へ収束し、わずか2年で解散に追い込まれています。
 こうした資本主義的利権競争のカルマを目の当たりにし、その教訓から、中同協は経営者と労働者が一体となって協議していく共同体的組織運営をスタートすることになります。
 
 

全国組織=中同協の設立へ
 
 中央と地方組織が上下関係となる単一の連合組織とするのではなく、それぞれの同友会が対等平等の精神で運営できる「協議体」にするのが望ましいとなったのです。そこで「中小企業家同友会全国協議会(略称中同協)」の名称でスタートすることになりました。このことは、中小企業家自身の力と知恵を自主的、創造的に出し合い、共通の基本理念で団結し、行動する、その後の同友会運動の道筋をつけることになりました。

 
 
 その過程の中で、経営者と労働者の関係についてある考え方ができていきます。それが、労使見解と呼ばれる労使関係の考え方を提示したもの。
 
 
 
②労使見解とは(中小企業における労使関係の見解―1975年1月に発行)
 
  労使見解で提示されているのは、経営者の責務として労働者の生活、士気、活発な社内環境の確立、対等な労使関係(話し合いの根底基盤)、労使関係の発展、労使双方の共通課題、といった労使関係を、経営者だけの視点や労働者だけの視点で語らず、双方の協議制によって培っていく方針が示されています。
 
 中同協は、この中小企業憲章と労使見解を軸に、実質日本の産業の核を担っているのにも関わらず、大企業に搾取される中小企業の構造的な問題を国に再認識させ、日本の救出を提起する憲章制定へ向け大きく動き出していきます。
 
<参考>
 
 

<憲章制定運動を進めるための四軸>
 
①憲章の大学習運動を起こし、日本経済における中小企業の位置づけ、政策課題等を深め、互いに憲章に盛り込む内容についての認識を高めること。学習の中身は、自社が置かれている業界と地域の問題点、何が経営発展の阻害要因となっているのか、どんな経営環境が望ましいのかなど。
 
②県及び支部単位で自治体の状況をよくつかみ、自治体、研究者、他団体とも協力して、地域経済の活性化をめざし、条例の制定または抜本的見直し(「中小企業振興基本条例」の制定)に着手すること。
 
③憲章、振興条例づくりの運動を同友会三つの目的の総合的実践としてとらえ、各同友会のビジョンとの関係を明確にしつつ、新しい仕事づくり、地域づくりへ挑戦し、組織の強化、前進をはかること。
 
④経営指針の中に自社と地域や業界とのかかわり、展望を盛り込み、労使が共に自社と日本の未来を考える大きな共通理念を共有し、個々の企業と憲章との関係を強化すること。

 
 

04.06.01 「中小企業憲章」大学習運動を(中同協第4回幹事会)
 
 中小企業憲章制定にむけ大学習運動を全面的スタート。「中小企業憲章」制定運動の進め方の第1次素案に向け始動。

 
 

07.06.13 学習から「制定」めざす運動へ
 
 中小企業振興基本条例等の制定をめぐる動きが全国的に活発になる。中小企業憲章「学習」運動から憲章「制定」をめざす総合的な運動へ発展。

 
 
 
 こうして全国的に活動を大きくしてきた中同協ですが、目指してきた憲章制定(更新)を可能にしてきた推進力は、各経営者が憲章について互いに切磋琢磨しながら協議する勉強会から生まれているようです。
 
 
 
③勉強会とは

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画像はこちらからお借りしました
 
 中同協が勉強会を行う理由は、憲章に盛り込む内容についての認識を高めることです。つまり、中同協の勉強会は、共通思念を共に固めていく為の場となっています。経営者が互いに協議し、互いの成功体験や事実共有をしていくことが、中同協存続の鍵となっているようですね。
 
<具体的な活動事例>
 
東京同友会―都内で毎月40回以上開催。各区毎の支部や全体での定例。
 
・大田支部2012.1.12「欧州発の世界恐慌の可能性?」報告者;田中素香氏 中央大学経済学部教授
 
・青年部 2012.1.17「人を活かす経営で31年連続日本一 伝統の老舗旅館“おもてなし”の極意 そして世界への挑戦!!」報告者;小田禎彦氏 株式会社加賀屋 代表取締役会長)
 
・渋谷支部 2012.1.24 「TPPで日本はどう変わる?中小企業のチャンスと脅威!!平成の開国がやってくる!?」報告者;淵上暁氏(国際戦略コンサルタント・作家 オプティ㈱代表取締役)
 
 
 
■中小企業間で培われてきた共同体質
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写真はこちらからお借りしました
 
 これまで見てきたように、資本主義的利権追求の根底的な限界を目の当たりにした中同協が、経営者だけに特化せず、労働者だけにも特化せず、両者の協議性を維持しながら、互いに協力してこれた理由には、労使見解を掲げながら、中小企業憲章制定へ向け、日々現実に対峙した経営問題について勉強会をし続けてきたからに他なりません。
 
 一方で、中小企業は大企業と比べ、大切にしてきたものが異なります。中小企業には自らの出生地があり、その地域の一端を担っていく強い思いがあります。その一つ一つの中小企業が作るネットワークが地域社会を支え、子供を成長させ、歴史を作ってきたのです。そこには、互いに協働して自らの地域を形成していく共同体としての繋がりが培われてきたように思います。
 
 この共同体質をより強めながら、現実問題に真っ向から対峙していけば、これから世界中で予想される危機でも、しっかりと地に足を付け、進んでいけそうですね。
 
 
<参考>
 
共認社会を実現してゆくのは、共同体企業のネットワーク
日本の実質的な市場は中小企業に支えられてきた!
全国の中小企業をつなぐ成功体験の共有組織~中小企業家同友会(中同協)~
東洋では共同体が残存していたがために教団支配にならなかった

 

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