2012年01月25日
成功を導く確かな理論 ~共同体・類グループの事例:⑮自分の殻にこもる中堅人材を頼れる存在に育てるには?
皆さん、こんにちは。類グループ社会事業部の吉田です。
今回は、今ひとつ自分の殻から抜け出せなかった30代のEさんのお話です。Eさんは、人間関係が苦手で周りとのすり合わせが不十分だったのですが、皆の期待を真正面から受け止め、徐々に頼れる中堅社員へと成長していきました。そのエピソードをご紹介したいと思います。
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◆できていない現実を受け止められなかったのは、自己正当化にあった
後輩が入社し数年が経つと、誰もが同じように「中堅としてより上位の課題を担って欲しい」という期待がかかってきます。仕事上の課題の質も量も、若手の頃よりも高度になり、求められる意識は、より組織的な視点が必要になります。
そんな中、Eさんは、文章力や計算力にも優れており、その能力を誰もが評価していました。ただし、人間関係が苦手で、分からないことがあっても周りに聞きに行けず、勝手な判断で仕事を進めてしまう傾向が見られ、皆の求める成果と大きくズレることが多かったのです。
周りは、そんな彼に対して、
「周りが見えていますか?」
「Eさんの発信の遅さには危機感を感じます」
「応望姿勢を若手から学びましょう」など
成長期待を込めて、若手の頃以上に彼自身の『壁』についての指摘を入れることも少なくありませんでした。こういった仲間の指摘に対して、Eさん自身、その場では反省をしていましたが、なかなか思ったような変化が見られず、ミスが続く時期が続きました。
こうなってしまったのも、Eさん自身が、自分の殻に閉じこもりがちで、ミスをしたとき、周りに開き出せず、結局「初めてだし」「まだ若手だから」「時間が足りなかった」と自分に都合の悪い状況を自己正当化し、仲間からの指摘を流してしまうことに起因していたのです。
◆Eさんの殻を破ったのは、仲間から掛けつづけてもらった期待圧力があったから
ところが、そんな彼にも転機が訪れます。30代を迎え年齢的にも中堅の仲間入りを果たしたEさんは、さらに高度な課題が与えられるようになると、仕事上のミスを続出させてしまったのです。加えて、ここ3,4年、元々、応合性の高い後輩達が入社し、成果を出していく姿を目の当たりにするようになります。すると、「このままの自分のやり方では、これ以上皆の役に立てない」といった自覚がEさんに芽生え始めてきました。
そこで前回のミスに対して、もう2度と同じミスを繰り返さないように、Eさんは、社内板(弊社の社内イントラネット)にすぐさま総括投稿をしました。しかし、その投稿に対して、キャップのYさんからもらったのは、発信してくれた姿勢は評価しつつも、『誤魔化しの指摘』と『更なる期待がけ』でした。
E君の総括には、『ミスの原因は、今回の課題が未定型課題であったため、難度が高く、その分析の精度が低かったために生じてしまった』と書かれていましたが、今回の課題は、チーム内で条件整理をしており、留意事項も共有していたはずです。つまり、今回の課題は、E君の言うような未定型課題ではなく、チームの皆によって既に定型化されていた課題であり、E君の総括は『誤魔化し』です。
今回のミスの主要因は、条件整理はできていたのに、それに見合うものになっていなかったことにあります。むしろE君に必要なのは、“どうしてチーム内で共有されていた危機意識を流産させてしまったか?”“どうしたら最終成果品まで貫徹することができたのか?”に対して総括→追求を進めることですがどうでしょうか。
そして、この社内板でのやり取りを見ていた周りの仲間からも、「今回、E君が周りに開き出してくれたおかげで、皆とのズレがよく見えてきた。そこはみんなすごく評価している。だから、Yさんからの指摘も同じように、もっと周りに開きだして考えていけばいいよ」と声を掛けてもらい、本気で自分の殻をやぶるためにEさんは相談の場を設けるように動き出しました。
相談の場で、Eさんが仲間から伝えてもらった内容は、以下のようなものでした。
共認時代では、何を実現するにも「相手の期待に応えることが大前提」、E君の自閉構造がそれを阻害してしまっている。まずは、「小まめに発信すること」から初めて、意識的に周りに「開き出す」訓練から始めよう。
そこで大切なのは、自身の評価(目先の結果)にこだわるのではなく、
「判断とはまわりを羅針盤にするもの」
「判断力とは周りからの評価で身に付くもの」
「判断力とは周りへの同化で身に付くもの」
という認識に塗り替えていくことです。
つまり、「開き出す」とは、課題の先の相手が喜ぶ顔をどれだけ具体的に思い浮かべられたかを、言葉として周りに発信することです。
具体的には、『皆の充足イメージ⇒開き出す⇒発信⇒評価⇒論理的思考の獲得⇒更なる皆の充足イメージ・・・』とループさせて成功体験を積み重ねていくことです。
こうして、実際に周りに相談してみると、自分で思う以上に皆がEさんのことをよく見てくれており、自分のことのように心配してくれていたことが分かってきました。そして、周りの仲間が、自分では捉えきれなかった意識の深い部分までを言葉化して伝えてくれ、足りていなかった部分を固定化してくれました。その結果、自己正当化の思いは消え、周りの声がスッとEさんの心の奥に届いたのでした。この意識の変化は、仲間が自分の全てを受け止め、寄り添ってくれる想いに触れ、仲間への感謝の想いがより一層深まったことで生じました。そして、ここに来て初めてEさんは「できていない現実を受け止めること」ができたのです。
◆『自分からみんなへ』の意識転換
この相談の後に、Eさんが社内板にすぐさま決意表明を発信します。
小さなスタートとしてですが、部署内での細かな課題の報告(他部署の状況も踏まえ)を行っていきます。
具体的には、キャップ報告(1日10分)、細かな方針の修正を密に行います。
中身の案としては、以下を考えています。
①仕事に取り掛かる段階
・こういう風な段取りで成果品を作ろうと思います
②途中段階
・ここまでこう進めました。なぜならば○○だからです。
・これからはこう進めようと思います。なぜならば○○だからです。
③最終報告
・確認のみ
④全体課題の発信(期限・SK付きで)
これ以降、Eさんは、決意表明の通り、小まめに発信を心掛けて「開き出す」ことを確実に実行していきました。みんなの充足イメージを第一に感じながら、それを具体的に言葉として発信して仕事に取り組んでいくようになったのです。
彼は、ここで初めて『自分からみんなへ』という意識転換ができたのでした。これから1年後、彼は、素直にキャップや後輩、同期に何でも開き出せるようになり、ミスが大幅に減り、中堅として後輩からも慕われ、先輩からも安心して任せられる人材へ急成長します。
最後に、彼の成長を喜ぶYさんの投稿より
昨日、部署の忘年会を開催しました。(中略)
なんといっても、今年最大のトピックは「E君が後輩の誰からにも認められ、先輩からも安心して任せられる存在に成長した」ということだと思います。その経緯を、皆と振り返って、それは決してキャップの指導だけでなしえたことではなく、若手や同期たちの下からの期待圧力こそがもっとも彼が成長した動因であり、その期待圧力を受けて、E君自身が、キャップたちを注視し続けたことがもっとも大きいのかなと感じました。(中略)
仕事振りやキャップの考え方を、表情や行動から真似ていった結果が、仕事の成果となって現れたのだと思います。
◆自分の殻にこもる中堅人材を頼れる存在へと変えたものとは?
ここで改めて感じるのは、Eさんの成長は、会社の仲間みんなが彼の成長を信じ、期待をかけ続け、サポートし続けてきたからこそ実現できたということです。そこには、純粋に『Eさんと共に課題を突破して充足していきたい』という仲間の想いがあり、それがきっかけとなって、彼自身が自分の抱える『壁』を本気で突破しようと思えるようになったのです。
以上より、自分の殻にこもる中堅社員を頼れる社員へと育てるために必要なこととは、
① 社員皆が全社的な視点を持って、期待圧力をかけ続けること
② 開き出したことを、社員皆で受け止め、共に考え、成功体験を積ませること
にあると云えます。
しかし、能力成果主義の会社でこんなことが果たしてできるのでしょうか?
この実現基盤には、実はもう一段階深い視点が必要です。それを端的に示す記事を紹介します。
るいネット 『団塊世代と成果主義が若手の人材育成の足枷か?』より
現在、多くの企業が「成果主義」を取り始めている。実はこれ自体が若手の人材育成の障害になっていると言える。
なぜならば、成果主義のもとでは、仕事は全て自分課題となる。下手に部下にノウハウを教えれば、足元を救われてしまう。中間管理職で退職まじかの団塊世代にとって、人材育成など二の次になり、いかに保身も含めて、無難にやりすごすかが、第一義になるからだ。
しかし、これは別に今始まったことではなく、徒弟制度が主であった戦前は当たり前のことだった。けれども決定的に違うのは、前提として「技術は盗むもの」という暗黙の了解があったことだ。5年間から10年の修行とは「技術を盗む期間」であり、また、人材育成のための徒弟制度は社会全体の課題としても機能していたことにある。
しかし、現在ではそんな境遇のもと「技術を盗もう」という若手は少ない。職場環境に問題があればすぐに転職したほうが楽なのだ。
だから皮肉なことに、現在の成果主義はフラット化等序列撤廃方策の足枷にしかならないし、人材育成の障害にしかならないと言える。
つまり、今回のように、社員一人にここまで踏み込めるのは、成果主義を採る普通の会社では難しいということです。必要なのは、企業を共同体企業へと変えることであり、社員全員を仲間として期待し続け、共に成長していける土壌にあるのです。
最後まで読んでいただき、有難うございました 🙂
【これまでのバックナンバー】
★シリーズ1:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:①プロローグ~
★シリーズ2:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:②庶務は雑用ではない、担当者はリーダー!前編~
★シリーズ2:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:②庶務は雑用ではない、担当者はリーダー!後編
★シリーズ3:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:③表層的だった若手社員が、皆の期待を掴めるまで成長できた鍵は?
★シリーズ4:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:④社員を主体的に変える人材育成
★シリーズ5:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑤トラブル解決の秘訣は「充足第一」~
★シリーズ6:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑥『ありがとうは魔法の言葉』~
★シリーズ7:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑦私の会社の社内ネット活性化事例♪~
★シリーズ8:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑧ゼロから考える思考法~
★シリーズ9:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑨女性の充足性を発揮したら営業はうまくいく~
★シリーズ10:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑩相手の想いを掴めるようになるには?~
★シリーズ11:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑪蛸壷化から脱するには?
★シリーズ12:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑫中途採用者がイキイキ働ける環境って?
★シリーズ13:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑬受付は会社の心~
★シリーズ14:成功を導く確かな理論~共同体・類グループの事例:⑭後輩指導に必要な力とは!?~
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