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2012年12月18日

物流業界の可能性は? ~前編~

■ 業界分析と展望シリーズ 続編を始めます
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>明らかに、時代はかつて無かったほどの大きな転換期を迎えています。おそらく今回の大転換は、ありふれた企業理念や小手先の方法論では生き残れないでしょう。
時代はもっと根本的な転換期を迎えており、この大転換に対応する為には、この転換が何を意味しているのかを理解し、現在すでに形成されつつある人類の新たな活力源と、それが生み出す新しい社会の姿を明確に掴む必要があります。<
『これから生き残る企業に求められる能力は?』
上記のような時代認識を元に、私達はこれまで、いくつかの業界をピックアップし、それらの業界が歩んできた道、現在直面している壁、新たに登場している潮流などを分析し、これから企業が進むべき道はどの方向なのか、試論を展開してきました。
『業界分析と展望シリーズ ★総集編☆.。.:*』
この一連のシリーズに続く形で、あらたにいくつかの業界について扱い、その可能性を発掘していきます。但しその可能性が絵空事に終わらないように、現実に登場している活力ある企業群の中に、その実現態(に近いもの)を見出し、企業経営者の皆さんや、自分たちの職場をもっと良くしていきたいと奮闘されている皆さんに、「これならいける!」「ぜひ真似したい!」と感じていただけるような記事を作っていきたいと考えています。
さて、続編・第1回目の今回は 物流業 に焦点を当てます。
いつもありがとうございます
               

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■ 物流業界って、何?
1.どんな仕事?
物流業界は、「関わりの薄い一般の人にとってはよくわからない業界」と言われます。それは、実際には会社員であれ、主婦であれ、あるいは学生であれ、誰もが物流業の恩恵にあずかっているにも関わらず、その活動はもっぱら“裏方”であるため、実態が見えにくいからです。
>物流業は広くあらゆる産業の発展を陰で支えている。製造業であるメーカーが工場でモノを生産するときに、原材料や部品を調達し、生産した製品を出荷しなければならない。こうした調達や出荷を陰で支えているのがまさに物流業なのである。華々しく店舗で商品を販売する小売業でも、並べられる商品をどこからか調達しなければならない。こうした商品の移動を可能にしているのも物流業にほかならないのだ。(中略)こうして物流業は、一般の企業に物流サービスを提供することで事業活動を支え、非常に広範囲に経済的影響を与えているのだ。
(齊藤実『よくわかる物流業界』)<
このように物流業は、私達の日常はもちろん、産業界全体の活動と密接に関わっているのです。
ところで「物流」とは、『輸配送→倉庫保管→荷役→流通加工→梱包・包装』といった一連の流れを指しています。物流業界は、この一連の流れに関わり、それを業とする企業群全体を指しているのです。したがって、「物流」と聞いてすぐにイメージされるようなトラックや貨物列車などによる運送業ばかりでなく、倉庫業や流通加工業といった仕事を請け負う企業群も、物流業界に属しています。
※「物流」と似通った概念である「流通」とは、メーカーから卸売業、小売業を経て消費者にいたる商品の流れを指しており、この一連の流れは商品の「所有権」の移動ルートを示しています。一方で「物流」は、所有権の移動を伴わない単なる“物の移動”として捉えることができます。
2.業界規模は、どれくらい?
物流業界の業界規模は、営業収入(売上)で約26兆円、企業数は約76,000社、就業者数は約150万人と見られます。製造業の約340兆円(企業数 約443,000万社、就業者数 約870万人)と比べると、売上規模では10分の1以下ですが、1企業当りの就業者数ではほぼ同等(約20人)で、どちらの業界にも中小事業者が多数存在していることを示しています。
※物流業界の規模は2007年値(齊藤実『よくわかる物流業界』)。製造業界の規模は2008年値(経済産業省)。
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業界規模の内訳を示したのが、上の表「物流業界の概要」です(出典:齊藤実『よくわかる物流業界』)。ここには、物流業のうち11の事業規模が示されています。
表から分かるように、物流業の中で圧倒的な規模を誇るのが「トラック運送業」です。2006年度で年間の営業収入は約14兆3000億円に達し、約63,000の事業者がいて、約132万人もの従業員が雇用されています。「わが国の物流業の大部分をトラック運送業が支えているといっても過言ではない」(齊藤実、同書)のです。トラックに次いで営業収入が多いのが、海外で事業展開を行なっている「外航海運業」(約5兆8000億円)で、「倉庫業」(約1兆7000億円)、「港湾運送業」(約1兆2300億円)と続きます。
比較的小規模でありながら重要な役割を担うこの業界は、実は現在、大変な逆境に立たされているのです。いったい、物流業界で何が起きているのでしょうか?
               
 
■物流業界に圧し掛かる3重の圧力
今、物流業界では業界全体が強力な圧力下に置かれています。それは、「輸送量の頭打ち」、「物流コストの削減」、そして「同業者の激増」といった3重もの圧力です。それではこの3重の圧力とはどんなものなのか、詳しく見ていきましょう。
1.輸送量の頭打ち
下図は戦後からの物流業における輸送量の推移を示したグラフです。(出典:齊藤実『よくわかる物流業界』)
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戦後の高度成長期には右肩上がりに伸び続けた貨物輸送量ですが、各家庭に生活必需品が行き渡った1970年代以降には、その傾斜が緩くなり、バブル崩壊後の1990年代以降、とうとう頭打ち状態となりました。
社会が豊かになり物的需要の飽和限界を迎えることで(物が売れなくなり)、貨物輸送量の拡大も限界を迎えたのです。
2.物流コストの削減
このようにモノが売れない状況で、荷主企業は物流コストの削減に力を入れ始めます。その手っ取り早いコスト削減方法として、彼らは物流企業の運賃や料金を値下げするよう要求してきたのです。
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上記のグラフは荷主企業の売上高に対する物流コスト比率を示したものです。(出典:全日本トラック協会『企業物流とトラック輸送』より作成)
「売上高物流コスト比率」を見ることで、物価変動の影響を除いた“物流コスト削減率”がわかります。
主要製造業でみてみると、1975年売上高の内、物流コストが10.16%だったのに対し、1995年には8.55%、昨年2011年には6.44%と、この約35年間で4割も物流コストが削減されています。
また、この傾向は製造業だけでなく、日本の全業種で見ても、同じです。
上記のような、たび重なる荷主企業からの値下げ要求に加え、さらに現在では、荷主企業による「物流の自前化」(外部に委託せず自社のトラック等を使うこと)や、「物流経路の縮小」(流通加工や配送作業等を省くこと)など、物流企業の「存在そのもの」を脅かす圧力にも晒されています。
物流を自前化した事例:しまむら(衣料品)
物流経路を縮小した事例:イケア(家具)
このように、様々な企業が物流過程を縮小することにより、物流業界全体に激しい淘汰圧力がかかっている状況にあるのです。
3.同業者の激増
1990年以降、物流業に携わる事業者の数は急増しています。中でも、トラック事業者は90年時点で約4万社でしたが、現在では6万社強まで増加し、約15年間で1.5倍以上になっていることが下のグラフからわかります。(出典:全日本トラック協会『企業物流とトラック輸送』より作成)
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この拡大要因には、1990年以降の規制緩和が大きく影響しています。規制緩和は、米国や経済界の要求から実施され、トラック事業への参入を容易にし、運賃を自由化しました。これが引き金となり、事業者数は急拡大したのです。
これだけの圧力を受け続け、危機的状況にある物流業界の突破口はどこにあるのでしょうか?
それを探るために、次回は物流業界の歴史を業態変化に焦点をあてて見ていきましょう 😛
               
参照
橋本直行・著『物流業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』秀和システム(2010年)
齊藤実・著『よくわかる物流業界』日本実業出版社(2003年)
全日本トラック協会『企業物流とトラック輸送』

 

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