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2013年06月17日

ひとづくりの一流企業 ~製造業の常識を覆す『中農製作所』~

大企業から中小企業まで、日本の製造業の優秀さ・技術力の高さは、国内外問わず、広く認められるところです。しかしながら、大手家電メーカーが軒並み大赤字を計上するなど、技術力の高さだけでは、行き詰まりを迎えていることもまた、事実です。

そんな中、製造業でありながら、モノから人へ、認識転換を図ることで業績を伸ばしている会社が、大阪のモノづくりの街、東大阪市にあります。

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今日は、次代の可能性を探っている『』をご紹介します。


株式会社中農製作所は、大阪府東大阪市に本社を構える、自動車や産業機器、油圧機器等に使われる精密部品の製造を行っている会社です。(年商約10億・社員数50人・1949年創業)

これだけ書くと、他にも似たような会社が・・・と思われるかもしれません。が!!

中農製作所には、毎年、日本各地の企業や団体、学生、そして国内に留まらず、中国・ベトナム・アフリカなど世界各地からもぜひ会社を見たいと、たくさんの方が見学に来られているのです!!

さらに、モノが売れないと言われている時代。製造業はどこも厳しい経営状態に晒されています。
そんな中、中農製作所は、売上こそ、リーマンショックの煽りを受ける前の2008年10月がピークで、現在はその7割程度ですが、経常利益はピーク時の2倍にもなっています!!() 

行政からも注目されており、
・経済産業省近畿経済産業局 
受賞
・中小企業庁 
2007年明日の日本を支える元気なモノ作り中小企業300社 受賞

と、高い評価を得ています。

中農製作所が、大きな注目を受け、会社としても成果を出していけているのはなぜなのか?その秘訣を探ってみたいと思います。

◆会社の軸は人材育成!みんなとの充足が社員達の活力源に

モノを作り出すのは人。人=社員が活力をもって日々いられるかどうかは、会社にとっても重要なポイントです。
中農製作所では、そのために、人材育成に軸を置いて、あらゆる試みをしています。

・充足の場作り
→「納涼会」や「望年会」の開催(中農製作所ブログ)、毎月給与袋に同封される社内報:「中農通信」の発行を通じて、社員同士が繋がれる、充足の場作りに力をいれています。
社内報は、担当社員以外の方からも、色々ネタの提供があるくらい、みんなが注目しています♪

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・若手や女性を積極登用
→高齢化が進む中小企業の製造業では珍しく、高卒の若手や女性を積極的に採用しています。
真っ白な状態で入社してきてくれる若手は、“会社が好き・人が好き”を活力源に、会社を良くするためにゼロから考え、みんなのために働いてくれるそうです。そのように活躍してくれる若手から、将来を担う有望人材が続々と育ってきています。
現社長の西島氏は“33歳”、現営業課長の岡田氏は“26歳”!どちらも高卒で入社された方々です。

また、中農製作所では、「製造業の問題点は、男だけしかいない社内環境。女性がいると、社内の雰囲気が和む」と、10年前から積極的に女性の採用を進めています。そのため、女性は事務方だけでなく、現場でも男性社員と同じように働いているのです。
現場にも女性が多くいることで、充足の場作りや部署を超えて人と人とを繋ぐ潤滑油の存在にもなってくれ、職場が充足の空気で包まれています♪

・人材育成に対する思いが最も表れている、次期社長選び
→中農会長が社長であった8年前、次期社長候補として、現社長の西島氏を指名しました。高卒で入社し、当時若干25歳。その若い西島氏を指名した理由は、経営的センスと、若いながらも幅広い年齢層から慕われる『何よりも人が大好き』という人柄でした。

・人材育成図解『バリューチェーン』の作成と活用
→【豊富な知的資産によるお客様の課題解決力の高さ】を最終目標とし、自社の強みをどう仕事に生かし、目標達成につなげていくかを図解化しています。
これは、社員がプロジェクトチームを組んで、自分達で意見を出し合い、作成したものです。
この『バリューチェーン』は、会社の期待が詰まったものです。年4回行われる個人面談でも使われ、社員がこれからどこを目指して成長していけば良いのかが鮮明になりました。

・「多能工」の育成、グループウェアの導入
→製造工程では、自分の担当工程だけでなく、全工程を担える、「多能工」を育成しています。現場と事務方・営業の垣根もなく、事務方・営業も、現場の経験を積んでいます。
また、グループウェア(社内ネット)上で工程の進捗状況を共有し、誰でも把握できるようになっています。
こうすることで、担当者が休みの時なども、お客様に迷惑をかけることなく、みんなで助け合いながら進めることが出来ます。それだけでなく、担当という枠に拘らず、指摘をし合えたり、上手くいった充足も同じように分かち合うことも出来るんです♪

このように、充足の場づくりをベースとして、社員の活力→能力を上げるための様々な取り組みを行っています。

◆作れば売れる時代の終焉⇒「類的価値の供給」が必要、という時代認識

中農製作所がここまで「人材育成」に力を入れているのは、なぜなのでしょうか?
背後には、次のような時代認識がありました。

物を作れば売れる時代が終わり、これからのものづくりは製品に心を入れて作らなければならない。「誰かに何かを作ってあげたい。どんなものを作れば喜んでくれるだろう。」
ものづくり本来の意義を感じ、それを実現できる工場にしよう。

(『知的資産経営報告書2011年』p.35)

1970年以降の日本では、物的な豊かさを実現し、人々の活力源は、物的価値から類的価値(人つながりや仲間関係の中で生み出される充足を得ること)へと移行していきます。そうした中で、「作れば売れる」という生産者優位の時代が終焉し、市場は縮小に転じたのです。

だから当然に、モノづくりを業とする国内製造業全体の業績は頭打ちになります。

生存圧力が衰弱すると、私益追求の欠乏も力強さを失って徐々に衰弱してゆく。そして’70年、三種の神器が行き渡り、ほぼ豊かさが実現されると、物的充足が飽和限界に達したことによって需要が頭打ちとなり、市場は拡大を停止するしか無くなった。
潮流4:輸血経済(自由市場の終焉)

そのような逆境下で、中農製作所が突破口としたのは、モノづくりの背後にある「誰かの力になりたい」「誰かに喜んでほしい」という、作り手の“心”でした。つまり「製品に心を込める」=「製品の類的価値を高める」ことで、新時代での生き残りを図ったのです。
これは、先端技術こそ最大価値ととらえてきた大手電機メーカーや、コストダウンを極限まで進めることで生き残りを図る多くの部品メーカーなどとは、対照的な発想です。

 
そして「類的価値を高める」ために最も重要なのが、製品に“心を込める”ことの出来る人材を育てること、すなわち「人材育成」だったのです!

 

その人材育成を核にして業績を伸ばしていった中農製作所ですが、さすがに2008年9月のリーマンショックでは、厳しい経営環境に立たされました。

 

同年11月には自動車関連の売上が半減、2009年2月には全体の売上も半減しました。
この苦境を乗り切るため、人材第一の中農製作所では、「リストラはしない」の一念で、経費削減に努めました。 

 
それだけではありません。
受注が減り、空いた時間を使って、取り組んだこと。
それが、知的資産経営報告書』の作成です。
知的資産経営報告書とは、「企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産の認識・評価を行い、価値創造につなげることを示すための報告書」です。

この報告書も、社員13人を選出し、プロジェクトチームを組んで、わずか半年で作成したものです。(先ほどご紹介した人材育成図解『バリューチェーン』もここに掲載されています。)

確かな時代認識があるから、次代(モノから人へ)を読む力がある。勝っていくことが出来る。
この知的資産経営報告書が出来たおかげで、業績がUPし、取引先や金融機関からの信頼も高まったそうです。

◆モノづくりの原点は、『感謝の気持ち』

中農製作所が、このような時代認識を持つようになったのは、なぜでしょうか?
その原点には、モノづくりへの感謝の気持ちがあるようです。

中農康久会長は、インタビューで、次のように語られています。

日常生活のすべてのモノは人間が作ったもので、それも1人の人間が作ったわけではない。しかし1人の人間でモノは簡単に壊すことができる。多くの人々の手を通して作られたモノを大切にする気持ちは、ほかの人間に対する感謝の気持ちから生まれる。
上田義朗セミナー

 
従来の製造業では、技術力の向上こそがモノづくりの原点でした。しかし中農製作所にとっては、“感謝の気持ち”がモノづくりの原点にあるのです。

20代で会社の経営を引き継ぎ、一方的な号令では社員達が着いてこない。「社員のやる気を上げるには、どうすれば良いのか」試行錯誤を重ねる中で、感謝の気持ち=“心のありよう”こそが人を動かすことを、中農氏は強く実感されたのでしょう。

 
「これからのものづくりは製品に心を入れて作らなければならない」という『類的価値の供給』の時代認識も、このような“心のありよう”を重視した経営を通して、生み出されてきたのではないでしょうか?

 
以上ご紹介してきた中農製作所の理念や取組みを整理すると、図解のようになります。

 

原点にある“感謝の気持ち”から発展した、「類的価値の供給」の時代認識、さらに人材育成を軸とする経営理念。それらが社員と顧客を充たす様々な取組みを生み出し、高い成果につながっています。

今後の活躍が、ますます楽しみな会社です♪
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

*参考資料*
株式会社中農製作所HP
株式会社中農製作所ブログ

*オススメ記事*
『日本のものづくり 製造業はどうなる?~前編~』
『日本のものづくり 製造業はどうなる?~後編~』

 

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