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2013年08月13日

未来を拓く、社会事業の可能性―4 市場がつくり出した枠組みの崩壊⇒地域共同体の再生

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これまで、NPOや社会事業を専業とする企業(リンク)、本業を持ちながら新たに社会事業に取り組む事例(リンク)を紹介してきました。
さまざまな事例を見る中で、社会事業に本格的に取り組む企業ほど、市場社会が作り出した企業という枠組みを超えて地域や社会の役に立とうとしていることが明らかになってきました。
 
今回は、特定の企業や団体だけではなく、複数の企業や集団による組合などで行う社会事業を紹介します。社会事業への取り組み開始時点から単一の企業という枠組みを超えている事例や、事業を行う中で自然に供給者のネットワークへと発展している事例です。
社会事業を行う事例の最先端は、企業と行政、生産者と消費者など、既存の枠組みを超えた取り組みへと発展しています。そのような取り組みの中から、このシリーズのタイトルでもある「未来を拓く、社会事業の可能性」を探ります。

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■企業組合による自立型経済圏、地域課題への取り組み
 

1.コープおきなわ(沖縄県)
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○事業開始経緯
一次産業が活性化しないと地域経済が成り立たないという問題意識と、たくさん寄せられる地域の困りごとの解決もなんとかしたいという思いから事業を開始。
 
○活動内容
役場・メーカー・住民と連携して、海鮮や農作物、牛などの地域資源を活かした商品を開発。収益金の一部を地域課題の解決に使用する。子どもたちの書籍購入費、高齢者の農業支援、離島の教育格差の軽減など。
地域の一次産業活性化と地域の課題解決の両方を実現する知恵。地域の資金循環をつくり、地域に信頼のネットワークを広げる仕組み。
 
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○成功ポイント
・多業種のネットワーク化、特に第一次産業を活かしていることがポイント
・教育活動への取り組み、後継者を育成

 
参考:コープおきなわ

 

2.陽気な母さんの店(秋田県)
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○事業開始経緯
地域の伝統的な食文化が衰退していくことに対する危機感から事業を開始。「農作業自然体験は、地球を元気にする」という思いを同じくする農家女性で発足。
○活動内容
秋田県大館市の女性農業者による地産地消の体験交流型直売所。施設への初期投資を削らずに販売努力と品質向上により採算を確保。農業体験に特に力を入れ、伝統食の継承も行う。農業体験を通じて地域の食文化を見直す。農業体験の受け入れは年83回で2,420人。地元の学校や福祉施設向けの給食に加え、通販も開始。
 
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○成功ポイント
・女性農業者の女子力→農作業体験での充足づくり(体験事業との相性のよさ)
・学校や福祉施設など、継続的・安定的な販売ルートの確立

 
参考:陽気な母さんの店

 

3.なつかしい未来創造株式会社(岩手県)
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○事業開始経緯
震災後の2011年7月、千年先の未来を見据えた地域の復興を目的に、陸前高田市の産業界(岩手県中小企業家同友会、陸前高田市青年会議所等)が結束して株式会社を設立。
 
○活動内容
エネルギー問題、雇用創出問題、第一次産業のビジネス化などの地域社会が抱える様々な課題を解決する事業推進を目指す。
ゴミの再資源化、木材のカスケード利用、自然エネルギーによる宿泊施設建設などを構想。市民ファンドの活用や人材育成も行う予定。
地元の資源を活かしながら、社会の今日的課題に応え、将来的に約500名分の雇用を創出。複数の事業を育成し、なつかしい未来創造株式会社自体は10年間で発展的に解散することを目指す。
 
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○成功ポイント
・エネルギーや第一次産業などの生活の基底要素を中心に据えている
・震災を契機にした意識変化(自給期待)を具現化

 
参考:なつかしい未来創造株式会社

 
 
■「自立」を選択した行政が主導し、住民を巻き込んでいる事例
 

1.海士町:「ないものはない」(島根県)
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○概要
島根県の離島。人口2400人。交通の便が悪く、人口は減少、高齢化が進んでいた町。しかし、近年、Iターンが増え人口は社会増。
平成の大合併が進む中、平成15年に「単独町制」を決断。退路を断ち、自立の道を選んだ。町長は、まずは議員を含む職員給与の大胆なカット(全国で2番目に低い)を実施。その動きに呼応して、町民からのバス料金の値上げ申し出、補助金返上、各種委員からの日当減額申し出などが起こった。
次いで島ブランドの創出。第三セクターによる「島じゃ常識!さざえカレー」、Iターン者による「海士のいわがき春香」の築地市場への出荷、建設業者が畜産に参入して「島生まれ、島育ち、隠岐牛」のブランド化などに成功。
住民みんなでまちの将来について語り合い、つくる総合振興計画「島の幸福論」。Iターン、Uターン、地元継続居住者の間にあった壁を取り払い、みんながまちのことを考え、楽しむまちへ。みんなで決めたことは、ひとつひとつ役割を明確化し、誰がリーダーとなり、誰が支援しながら進めるのかを明記。
現在のキャッチコピーは「ないものはない」。①なくてもよい、②大事なことはすべてここにある、という2つの意味が込められている。
 
○成功ポイント
・「自立」の選択、共同体的風土と第一次産業の残存
・Iターン者との融合、みんなの充足イメージに基づく役割の明確化

 
参考:いいね!JAPANソーシャルアワード(動画もあり、活き活きとした様子が感じられます)
   海士町役場「小さな島の挑戦」

 

2.下川町(北海道)
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○概要
北海道北部の山間の町。かつては鉱山で賑わいをみせたが、閉山後は人口が1万5000人から3600人に急減。JRも廃止され、一時は財政再建団体にも陥った。ところが今、Iターン者や就職を希望する若者が全国から集まっている。
下川町の面積の9割は森林。町は合併の道を断って、森林組合とともに林業をゼロから基幹産業として育てた。輸入材に押され、木材だけの販売だけでは採算が取れないため、付加価値を付けた。高級フローリングや木炭、防虫剤にアロマオイル、木くずはバイオマス燃料に変えた。木を余すことなく使い、利益を生み出していった。
さらに、森林資源を活かし、バイオマスによるエネルギー自給を目指している。バイオマス燃料の発電プラントを作り、それによって、町全体の電力がまかなえるようにする計画が実際に進んでいる。
同時に、ガソリンスタンドにバイオマス燃料の販売を委託して雇用を維持したり、その利益によって児童の医療費を無料にするなど、町の資源を最大限活用した、エネルギー・雇用・福祉政策を実施している。

 
 
■組合員の全員が生産の主体となる取組み
 

1.消費者に組合業務への参加を義務付ける生協(リンク
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○概要
デンマークのコペンハーゲンにあるKBHFFという生協も日本と同じく組合員制の組織だ。コペンハーゲンにいくつかのショップをもち、組合員はそこで買い物ができる。そして、そこで扱う食べ物は地元産のオーガニックにこだわった野菜や果物である。日本の生協との大きな違いは「地元」にこだわっているという点、フードマイルなども含めこれからの農業を考えるうえで重要になってくるであろう「都市近郊農業」に積極に取り組んでいるのだ。
この生協が面白いのは、組合員は単なる「お客さま」ではいられないということだ。KBHFFでは組合員に月に3時間、組合の業務の手伝いをすることを求める。この生協では消費者は商品を選ぶことだけによって経済にコミットするのではなく、組合の一員としてもっと深くかかわることを求めているのだ。その業務というのは市内に9つあるショップのレジ係として働くことでもいいし、組合の運営 会議に参加することでもいいし、自ら野菜の買い付け先を探すなどイニシアチヴを取る行動でもいいのだという。
安く、安全でおいしい野菜が食べたいという消費者を、地域の生産者と消費者を結ぶ組合の活動に巻き込むこの生協のあり方、都市生活者が今後どう農業や食とかかわっていくべきか考えるヒントになるのではないだろうか。
 
○成功ポイント
・地域密着、かつ消費者が生産の過程に加わることを条件にしていること
→生産過程に関わることによる安心や満足の上昇、組織化の実現

 
 
以下は、明確な事業として全体が考えられているものではないですが、ひとつの成功事例を契機に、自然発生的にさまざまな活動が起こり、それが事業とも繋がっているという点で注目されます。
 
■成功事例が人を惹きつけ、地域を変える
 

1.「葉っぱビジネス」の上勝町 おばあちゃんに負けじと起業する移住者の波(リンク
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※「葉っぱビジネス」についてはリンク参照。
○概要
高齢者が生き生きと生活する上勝町に魅かれ、Iターン移住する人が増えているという。最近、そうした移住者による起業が相次いでおり、上勝町は新たな展開を見せ始めている。?
大きなきっかけとなったのが、内閣府による地域密着型インターンシップ研修事業だ。これは地域ビジネスの人材育成を目的とした事業で、上勝町など独自の地域ビジネスを展開する4地域で2010年度から11年度にかけて実施された。?
全国各地から236人の研修生が上勝町に集まり、1ヵ月交代で「彩事業」などを学んだ。上勝町で共同生活を送った研修生の内訳は20代が58%、30代が19%で、大学生が58%だった。研修生を受け入れた農家にとっても、有意義な事業となった。横石さんは「若い人たちに農作業などを教えてあげることで、高齢の方がさらに元気になりました」と振り返る。?
もともと高齢者中心の「彩事業」は開始から27年目に入り、後継者へのバトンタッチが急務となっていた。研修生の中から町に移住して「彩農家」となる人まで現れた。
また、研修終了後に上勝町への定住を希望する人が続出し、2ケタにも及んでいる。その多くが、地域ビジネスの起業を胸に抱いてのことだ。上勝町は内閣府のインターンシップ終了後、町単独で同様の事業を継続させている。実施主体は株式会社いろどりで、「いろどりインターンシップ」と名付けられている。
(中略)
上勝町と連携してごみゼロ推進事業を展開する一般社団法人「地職住推進機構」は、上勝町内で様々な事業を手がけている。買い物に困る住民を支援する商品の宅配や移動販売、商品を量り売りする「上勝百貨店」の経営や小水力発電事業などだ。?
こうした新たな取り組みは「地職住機構」に限らない。たとえば、ワンコイン(500円)の乗合タクシーが生まれたり、古民家を活用したシェアカフェが開店したり、地元の茶葉を生産販売する組合が誕生するなど、小さな町は昨年あたりから起業ラッシュの様相を呈している。
いずれも、町外から移住してきた若者たちが担い手である。まるで葉っぱから色々なものが芽吹いているようだ。おばあちゃんの町として知られる上勝町が、再度大化けするかもしれない。

 
 
■私権社会、市場社会がつくり出した枠組みが自然に融解しつつある
 
あらゆる枠組みが曖昧になり、境界線が消滅しつつあります。「企業」や「行政」、「生産者」、「消費者」・・・。
社会事業は、枠組みに捉われず、社会や生活の場そのものをつくっていく活動へと活動の範囲を拡げているのです。それらすべては楽しそう、誰かが喜んでくれそうという充足発。充足発の思考が、狭い職能意識を融解させています。
その中で、労働という概念も変わりつつあります。市場社会における、消費者は金を払ってサービスを受けるだけ、という常識は崩れ、生産者と消費者が一体となってさらにいいものにしていくという発想が芽生えつつあります。
歴史を振り返ってみれば、これらはすべて私権社会、市場社会がつくり出してきた概念に過ぎません。明治以降、実質的には戦後にしかなかった概念です。これらが現実の「事業」を通して変わっていきつつあるということであり、市場の限界とともに市場が人工的につくり出してきた概念は消えていくということを示唆しています。
 
 
■第一次産業を核とした、地に足のついた取り組み
 
注目されるのは、上記の事例のほとんどは、第一次産業を核としているということです。つまり、市場の浮き沈みに左右されない生活基盤をしっかりと持っている。だからこそ、自給志向(自分たちの力で生きていく)を具現化できているということです。
生存基盤である第一次産業が残っている地域の方が、精神的な余裕があり、脱市場への転換が早い。そして実際に転換が可能である。市場社会においては最後列に位置していた地域が、今後は最前線になる。この点は、非常に重要なポイントと思われます。
 
 
■自立型の経済圏=生活圏の形成⇒地域共同体の再生
 
第一次産業を含め、エネルギーなどの生活インフラや仕事(雇用)など、他地域への依存を前提としない自立型の経済圏をつくり出す動きが増えていることも見て取れます。
市場社会では、グローバリズムが象徴するように、脱地域を進めてきたわけですが、その逆の流れが加速しています。これは、まさに地域共同体の再生です。第一次産業を基盤とした自給志向、そして地域共同体の再生へ、という流れが実際に起こっていることは、非常に大きな転換であり、社会事業を考える上での大きな可能性と言えるでしょう。
 
 
■可能性の実現態が新たな供給者をつくり出す
 
上勝町が象徴的ですが、だれもが可能性を感じる充足の実現態が、地域の人たちの自信や愛着を育て、さらには他地域の人を巻き込んで発展的に社会事業が展開している点も注目です。
意識的に次代の供給者をつくり出す取り組みもなされていますが、充足や活力のあふれる場こそが、活力やイノベーションの相乗を引き起こすと言えます。みんなの充足を考え、活力にあふれる人たちが、リアルな外圧と可能性を伝え、みんなの当事者意識を高めることにつながっています。
 
 
■現在の「新しい」事例は、根源回帰
 
事例のすべてが「田舎」であることが示すように、現在は田舎の方が先進的と言えます。
あらためて考えると、最先端と感じる事例は、実は根源回帰、脱市場です。つまり、現在では新しいように感じられますが、かつては当たり前に各地域で行われていたことです。根源回帰・本能回帰の意識潮流が、第一次産業と結びつくことで本格化し、自給志向=地域共同体の再生に向かっていると考えられます。
その意味では、社会事業の可能性は、最先端事例に学ぶのと同時に、市場社会になる前の、人類の歴史=共同体社会の歴史に学ぶことで見えてくると言えるでしょう。

 

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