2014年10月14日
企業と地域社会の関係はどうあるべきか?
◯「企業」と「地域社会」との関係は、これからどうあるべきか?
◯「事業体」⇒「地域」⇒「社会統合(国家)」という社会構造を考えた場合、事業体≒企業は社会の基盤(基礎単位)となる存在であり、地域社会との関係は極めて重要である。
◯ところが現代の多くの大企業は、グローバル化を標榜するなど、地域に根ざすこととはむしろ逆へ向かっているように思われる。国の政策も同様であり、いまだ経済至上の旧いパラダイムにある。これでは地域社会は衰弱する一方である。
◯一方で人々はこうした大企業やお上に背を向けはじめているように感じられる。意識の奥底では地域・社会の「秩序崩壊の危機」を感じ取り、自分たちで何とかしなければという、「自給志向」「自考・自行志向」が急速に高まっている。
◯こうした本源回帰の潮流から、何かやりたい(実現期待)、自分たちで地域を守る、社会を守るといった意識を反映して、中小ミニ規模でのコミュニティビジネス、地域密着の社会事業が登場し注目を集めている。
■1.近代以前:生産も消費も概ね地域に根ざした事業体
・日本には100年以上の歴史を持つ老舗企業が多い(世界でも極めて特異)。近代以前の事業体は、労働力・資源(生産)においても、商品市場(消費)においても概ね一定の地域に限定されている場合が多い。
・もちろんすべて自給自足というわけではなく、地域毎の産業集積、特産品も当然あるが、地域間分業の範囲である。もともと生活品は使うところの近くで適正な分業体制と規模でつくるほうが合理的である。つまり、生産も消費も概ね地域社会に根ざした行為であったと言える。
・一方、市場(商業、商人)は地域・国家を越境するという本質も存在する(こっちで安く入手してあっちで高く売るetc)。ただしその特質が現れるのは嗜好品・贅沢品の類であり、生活品・必需品はもともと一定の地域内で生産消費が賄われるのが自然であった。
※画像 http://www5.ocn.ne.jp/~matimoyo/bisiyuseni-1.htm
※参考投稿
日本人の資質(勤勉性・共同性・充足性) http://bbs.jinruisi.net/blog/2013/01/001128.html
老舗企業の技術革新 http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=182549
■2.近代工業化~経済成長期:市場拡大に支えられた企業と地域の共依存関係
※画像 http://www.showa-kd.com/conference.html
・企業と地域社会の関係が大きく変わるのは、近代工業化の時代である。
・大量生産の必要から、大量の資源・エネルギー、生産設備、労働力が集約される体制へ。工業地帯・工業団地の開発などが典型的である。一方で大量の商品を売る市場、消費の場は都会が中心となる。つまり、生産の場と消費の場が分化してゆく。
・生産を担う企業と地域社会との関係で言えば、企業は労働力や資源(土地、インフラなど)を期待し、地域は雇用と経済効果(税金、消費など)を期待、依存するという関係である。企業と地域の共依存、取引関係であるが、市場が拡大し経済が成長している間は双方に利点のある好循環をもたらした。
・企業の側も生産のために地域を利用するというだけでなく、企業城下町という言葉が典型であるが、企業が中心となって地域社会をつくる、地域全体の面倒を見ていくといった気概、器量も見られた。
・企業と地域の関係で特殊な事例では、原発誘致がある。原発を誘致した地方は、多くの雇用が保証され、補助金・交付金によってとても豊かになってゆくのだが、それによって原発なしでは生きて行けない地域となってしまった。経済=お金に依存しすぎると地域社会の自律性は損なわれてゆくという教訓でもある。
※画像 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E5%B3%B6%E8%87%A8%E6%B5%B7%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E5%9C%B0%E5%B8%AF
※参考投稿
日本の建設産業・都市の未来はどうなる? http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2012/04/001270.html
日本の戦後産業史-1-1945~1970年:市場拡大のメカニズム http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2012/02/1255.html
■3.バブル崩壊以降:企業の論理と地域の課題は相反関係に
※画像 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%B8%80%E6%A5%B5%E9%9B%86%E4%B8%AD
・経済成長に支えられた企業と地域の好循環は、バブル崩壊までの間しか続かなかった。
・大企業の多くはグローバル競争にさらされ、仁義なき利益競争→価格競争に突入する。地域から供給される労働力や資源は単なる「コスト」とみなされるようになる。より安い生産コストを求めて海外へ生産拠点を移さなければグローバル競争に勝てない。もはや大企業は地域社会の面倒など見ていられない状況となる。サプライチェーンのグローバル化によって、大企業の下請け中小企業も厳しい。
・大企業はもはや国内生産、国内雇用を守れないだけではない。リストラや非正規社員の増加、税金もあの手この手で納めないなど、なりふり構わない姿勢を感じる。
・一方で企業も自社利益の追求だけでは地域社会に受け入れられないことも理解しており、CSR(企業の社会的責任、社会貢献)の活動などに取り組んではいる。しかし多くの場合は付け足し的な、アリバイ的な活動にとどまっていることも事実だろう。
・地域の側はどうか。雇用減少、税収減少に苦慮しているところは多い。多くの地方都市は人口減少に歯止めがかからない見込みである。地域の産業がなくなる、生産活動の空洞化は、地域社会の存続そのものへの影響は非常に大きい。大企業に過度に依存した地域社会の歪み、ツケと言えなくもないが、なんとかしなければならない。
・バブル以降は東京一極集中という現象もある。金融資本の集中投下によって東京と地方の経済格差も拡大した。大企業の論理では生産拠点は低コストの海外へ、本社・情報・営業等の中枢機能は市場中心へ(金融中心へ)ということか。
(これだけの情報化社会において、東京へのセンター集中にどれほどの意味があるのか、疑問もある。東京一極集中はいつまで続くのか、反転はあるのか)
※参考投稿
大企業の終焉⇒これからは共同体の時代 http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2013/09/1615.html
■4.企業と地域社会の関係は今後どうなるか?
・企業:労働力、資源、インフラを「コスト」としか見ない大企業は(多国籍化というより)「無国籍化」してゆく。しかしどこの地域に根ざさない企業は果たして大衆の支持を得られるのだろうか。大衆は単なる消費者ではない、地域社会の当事者である。グローバル競争を闘うにしても本当に強いのは地域・社会に根ざした企業ではないかとも思う(ex.京都の企業群)。
・いずれにせよ、企業は地域との関係をどのように結んでゆくか、根本に立ち返って考える必要がある。そもそも世界の物的生産はすでに供給過剰であり、大企業型、工業生産型の企業とは異なる、新しい企業像を構想すべきだろう。突き詰めれば、地域・社会を創る企業なのか、壊す企業なのか、その志が問われる時代になるだろう。
・政策:現政権は地方創生、経済特区構想などの策を掲げているが、(ここでは詳しく述べないが)本音は別の所にあり、当てにしないほうがよい。市場依存の発想ではそもそも無理がある。これまでも同様の政策は悉く失敗している。
・地域:かつての企業誘致による地域経済の活性化という過去の成功パターンにしがみついていては展望がない。お上もあてにならない。地域再生のキーワードは、「自給」「自考・自行」「持続・循環」というあたりだと思われる。自分たちで地域を守り社会を守るしかない。自ら地域に必要な事業を創出し維持し組織化して行けるかどうか。
・実際に、自給志向、自考・自行志向の高まりから、特に3.11震災以降、地方発の中小ミニ規模でのコミュニティビジネス、地域密着の社会事業が登場しており、注目すべき潮流である。これからの需要源は生活に近い地域領域に多く存在する。また意識生産の分野(サービス、情報、教育、介護など)は、人と人との関係において生み出される価値であり、需要も供給も地域が一定限定される、地域型の事業となる必然性があると思われる。
・市場社会(私権社会)の次の姿、未来は共同体社会である。かつての村落共同体に代わる、これからの地域共同体をいかに再生してゆくことができるか。そのために、事業体≒企業はどのように変わってゆくべきか。草の根からの企業と地域・社会の関係形成が共同体社会の実現へ向けたカギとなる。実践的追求を続けたい。
※参考投稿
未来を拓く社会事業の可能性 地域共同体の再生 http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2013/08/001607.html
地方自治は今後どうなるのか? http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2012/12/001435.html
都市開発の将来予測 自給型・循環型のグランドデザインに向けて http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2014/03/1760.html
- posted by 岩井G at : 22:07 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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