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2014年10月07日

老人共同体の実現に向けて その萌芽となる事例の紹介            ~高齢者と若者をつなぐ「デザイン」の力~

「老人共同体の実現に向けて その萌芽となる事例の紹介」シリーズの第6弾。

以前までのシリーズは以下のとおり。
市場社会を卒業した高齢者が、新しい事業を起こしていく可能性
枯れた町を再生した老人の力~徳島県上勝村゛いろどり事業“
~知恵を伝承する寺子屋事業~
~高齢者によって再生される地域農業~
皆を巻き込む「きよぴー&とまと」

2060年には8674万人になると予測されている日本の人口。
高齢者の割合が増え、日本は現在の「高齢化」社会ではなく、完全な「高齢社会」となります。
出生率も上がらず、確実に老いていく日本。
しかし、身近なお年寄りを見てみると、まだまだ元気いっぱい!
むしろ、若い人よりも元気なんじゃないの!?と驚かされるほど。
ただ、元気なお年寄り同士で集まり、その活動の場は限られたものになりがちです。
「せっかくの元気をもっと社会と繋がった形で活用したい!」
そんなお年寄りの希望を見事に実現した事例が今回ご紹介する「patch-work」です。

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■「patch-work」の概要

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パッチワークの最初画像
(写真はコチラからいただきました)
「patch-work」 HP →  https://www.facebook.com/ethical.patchwork

基本データ
□設立     2012年7月7日
□場所     兵庫県神戸市中央区 650-0011
□受賞歴     edge2013ファイナリスト
□講演
・なにわ名物開発研究会様主催
『デザインでできる社会貢献 ~これからの商品開発へのヒント~』
・主催:社会福祉法人大阪市社会福祉協議会大阪市ボランティア
『閃きフューチャーセッションvol.2 ~20年後の自分・家族・地域の未来に思いをはせる~』
・主催:神戸モトマチ大学
『伝えるためのデザイン 手とハリとこころ』
□商品・サービス
・子供向け手芸用品
・教室事業
・就労支援
□連絡先情報
メールアドレス patchwork.kobe@gmail.com
ウェブサイト http://patch-work.wix.com/patch-work

現在も精力的に活動している「patch-work」は村上史博さん、丸井康司さんからなる男性手芸チーム。
2012年7月に行われた兵庫県高砂市の商店街活性化イベントを皮切り に、その活動をスタート。
これまで「ハッピーアースデイ大阪2012」や、「笑顔は世界共通のコミュニケーション」をテーマに様々なソーシャル 活動を仕掛ける「MERRY PROJECT」のクリスマスイベントなどで、ほぼ毎月ワークショップを開催。

具体的活動内容は、参加者が着なくなった服などを持ち寄り、兵庫県の綿織物「播州織」と合わせてティッシュケース、フリンジストラップをつくるという もの。
仕上げには“播州そろばん”の玉をボタンのようにモチーフとして取り入れるという、何とも遊び心のあるデザインで仕上げる。

パッチワーク 画像

(写真はコチラからいただきました)

「patch-work」をはじめたきっかけ----------------------------------------「patch-work」は自身のHP内で 『この活動をはじめたきっかけ』 について以下のように語っています。

おばあちゃんの笑顔がみたい
父がなくなり、母が実家で一人暮らしになるかもしれない…
唯一、生き残っているおばあちゃんは長崎の田舎で暮らしている…
母の老後やおばあちゃんの心配はずっと心に横たわっていました。
仕事も生活もあり、実家や長崎に住むことはなかなか出来ない環境…
「本当は自分が地元に帰りたいけど、仕事のことを考えるとすぐにはできない」
「遠くからでも何かできないか…」
「せめて暮らしの中でお母さんやおばあちゃんが楽しみを見出せる場所や、人とのコミュニケーションがあったら、生き甲斐につながるかも知れない」
・おばあちゃんがくれたポーチ​​
6-7年前から始めたおばあちゃんの趣味「パッチワーク」でつくった作品を僕にくれました。
「おしいな…」
「使ってあげたいけどなぁ…」
「おばあちゃんが使ってほしい気持ちと使ってあげたい気持ちをどうにかしたい…」

こうした「せっかくもらったおばあちゃんからのうれしい気持ち、何とか社会と繋ぎ、どうにか活用できないものか…」という思いから「patch-work」はその活動を開始しました。
「社会との繋ぎ」がないのはおばあちゃんたちと若者との間に「世代間のギャップ」が立ちはだかっていることに着目した村上さんらは、「今の自分たちに出来ることは何なのか?」という発想で、このギャップの解消のため、既存のパッチワークに【あるもの】を取り入れ解決しようとします。
その【あるもの】とは一体何か?

■ 「パッチワーク × デザイン」 

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そもそも核家族化が浸透する前にはきっとあったはずのコミュニティ。
そこでは年齢に関係なく様々な世代の人々が交流し、助け合い、生活の智恵を伝えあってきたはずです。
核家族化&地方の過疎化が進んだ今、「老人の孤独死」は多く、おばあちゃんたちの世代から続く暮らしの智恵や技は途絶えてしまいがちです。
何がきっかけでなくなってしまったのか、原因はいろいろあるんだろうけれど。
そこに帰れないものかな、と思うところがあったんです。でも僕らができることは“デザイナーとしてのデザイン”しかない。
そんな時、村上さんのおばあちゃんが趣味で続けていたパッチワークがヒントになりました。
おばあちゃんがパッチワークしてくれたポーチをもらったものの、布地の組み合わせ方がしっくりこなくて、残念ながら人前では使えなかったのだとか。
僕に使ってもらいたかったおばあちゃんの気持ちと、リアルには使えないという切ない現実。
その隙間をデザインで埋められないものか、という仮定のもとに僕らもパッチワークを習い始めたんです。
デザイナーとしての経験と知識を生かし、パッチワーク商品を若い世代も積極的に欲しいと思えるデザインのものにすれば、おばあちゃんにつくってもらったものも古臭くなく、使えるものになるのでは…
そうすれば若い世代はそんなおばあちゃんを尊敬し、おばあちゃんは知識と経験を生かして社会における役割を担える…
デザインの力で世代間の交流をつなげたい…」
「高齢者の生きがいや知識と経験を引き継げる場を…」
そして、すぐさまパッ チワーク教室で技術を学んだ二人…。

現在、技術も会得した2人はワークショップとして活動を続けるのはもちろん、布や色の組み合わせ方まで最後まで「デザインした」パッチワークキットをネッ ト販売し、その活動の裾野を広げること考えているそう。
兵庫県の伝統的織物の認知度を全国に広めることが出来れば、過疎化した地域の活性化も可能になり、その波及効果はあるでしょう。

■「若者 × おばあちゃん」

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また、村上さんたちが思う「播州織の魅力」は何もデザインによって掘り起こされた「品物としての良さ」だけではありません。

パッチワークは布の組み合わせ方次第でデザインががらりと変わります。
おばあちゃんの趣味と思われがちですが、完成形までしっかり僕らがデザインして、誰が縫っても素敵にできるキットをつくりたいです。
そこにローカルな部材を組み込んだら 自分たちの住む街の歴史や誇りも一緒に伝えていけると思う。
パッチワークを通して、若い人とおばあちゃんが自然にコミュニケーションする場ができると考え ています。今後は日本各地の布や工芸品を使い、ローカルで世界にひとつしかないパッチワークをつくっていきたいです。子どもからおばあちゃんまで。

人と人をつなぎ、地域の産業も活かされる。ネット販売でパッチワークキットを買ったものの、実際に自分が作るとなるとなかなかうまくいかない。そんなとき、パッチワークが上手なおばあちゃんに講師をお願いし、つくり方がわからない人が教えてもらえることが出来る教室を開いていきたいのだそう。

老人共同体の末路

(写真はコチラからいただきました)

高齢者が潜在的に持っているであろう「伝承したい」という想いと、「それを受け継ぎたい」という若者の想い。それらがともに共存する社会こそ、これからの老人共同体実現への重要な鍵になるのではないでしょうか。

 

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