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2014年08月19日

老人共同体の実現に向けて その萌芽となる事例の紹介 ~知恵を伝承する寺子屋事業~

「老人共同体の実現に向けて その萌芽となる事例の紹介」シリーズの第3弾。
市場社会を卒業した高齢者が、新しい事業を起こしていく可能性
枯れた町を再生した老人の力~徳島県上勝村゛いろどり事業“

総務省統計局の発表によると、2013年9月15日時点推計で65歳以上の高齢者人口は、3,186万人と発表されている。総人口に対する割合では25.0%となり、人口・割合共に過去最高になっています。 
 一方、政治の動きはというと、2013年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」で、2025年に向けた大きな改正がありました。いわゆる65歳定年制の導入です。 
 しかし、65歳を超えても、「まだまだ仕事がしたい」「社会の役に立ちたい」という高齢者は多く、単に5年定年を引き上げたというだけでは、目先の方針に過ぎないという感覚は多くの人が持っています。

 そこで、改めて高齢者の役割は何か?を考えた場合、史実を遡ると、集団の中で非常に重要な役割を担っていたことが分かります。

 「江戸時代の老人の役割」
「高齢者の役割 ~文化・知識・技術の伝承者および子育て~」

 引用元の表題にあるように、高齢者の役割は、集団を存続させていく上で重要な「知恵や技術を伝承」してくことにありました。現在は特に都市部において核家族化が進んでいますが、「教育」「伝承」という視点で、地域共同体社会の再生とも取れるような、可能性のある事例を紹介したいと思います。

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◆高齢者が中心になり、地域に応える形で学童保育を実践

熊本県宇城市で、ボランティアではあるが地元の高齢者の方々が中心になって、学童保育に取り組んでおられる事例を紹介します。 
◇概要
 所在地 : 熊本県宇城市不知火町
 母体   : 地元の有志ボランティア
 種別   : 学童保育
 HP   : 紹介記事
ブログ写真1改                                    画像はこちらから引用しました

地元の学童保育園が平成19年に廃止されたことをきっかけに、スタートとした取り組みです。
小学校の空き教室を利用して、校長先生や保護者、地域の高齢者の方々が協力し合い、一日3~6人の当番制でシフトを組みながら学童保育を実践しておられます。

単に子ども達を預かるだけではない。知恵を伝承していく試み。 

中でも注目ポイントは、子どもたちを預って面倒を見るだけでなく、高齢者達が経験や技能を生かして先生役になり、教育を提供しているところです。

習字やそろばん、パソコンや体験学習(昔遊び、折り紙など)に始まり、最近では「論語の読み聞かせ」が新しいようで、高齢者と共に声を合わせて読んでいくスタイルは、江戸時代の寺子屋を彷彿とさせる、言語能力の鍛錬に直結しそうな課題も組み込まれてています。
講座は、年間を通じて180日開催されています。 

高齢者たちが、将来に活きる知恵や力を子供達に伝承しようと、高齢者自身も楽しみながら追求し、実践している有り様が、地域共同体の萌芽とも取れて可能性を感じます。

◆高齢者が講師役、地域の方に人気の「寺子屋教室」

次は、神奈川県平塚市で高齢者が講師役になって、1講座につき月謝2,000円~4,500円という低料金で授業が行われている「寺子屋事業」を紹介します。
◇概要
 所在地 : 神奈川県平塚市西八
 母体  : 公益財団法人平塚市生きがい事業団
 種別  : 教育事業
ブログ写真2改                                     画像はこちらから引用しました
                                       
全国でも珍しい、高齢者の方々が特技や技能を生かして講座を開設し、子ども向けから大人向けまでの受講者を対象に授業を行う取り組みです。
母体は全国の市区町村にもある呼称「シルバー人材センター」で、開設3年目の新しい事業です。

シルバー人材センターは、地元企業や個人を顧客に、高齢者の方でもできる軽作業中心に仕事を繋ぐ役割を担っていましたが、昨今の不景気のあおりもあって年々減少。一方で従来型の仕事は「高齢者が持つ能力が十分に発揮されているとは言い難い」という問題も相俟って、新たに打ち出された事業です。

書道、絵画、囲碁、フラワーアレンジメントに加え、より日常生活に使うという意味で実践的な講座は、暮らしで役立つ筆文字、障子張り、農作業体験、デジカメコースなどなど。事業団の建物内にある10畳ほどの一室を利用し、子ども向けの講座も充実しています。通わす保護者達も「月謝も手ごろで敷居も低く、気軽に通わせることができた」との声もあって評判は上々のようです。

高齢者が自らカリキュラムを作り、授業を提供する

この事業で注目されるところは、講師役の高齢者はゼロからカリキュラムを組み立てて、授業を展開していくところです。既に用意されたものではなく、生徒の特徴やレベルを想定しながら、次のレベルに引き上げようと悪戦苦闘する場面も実際に多いようで、圧力が高い分、高齢者の方々にも大きな充足感が得られるようです。 

以下、神奈川県全域、東京都町田市の地域情報誌「タウンニュース」の紹介です。

平塚市生きがい事業団で、定年退職した高齢者が自身のスキルを市民に教えるという「寺小屋教室」が今月から始まった。指導役の高齢者はカリキュラム作りに悪戦苦闘している様子ながら、新しい「生きがい」に心を躍らせているようだ。
~中略~
 書道教室に足を運ぶ小学生の保護者は「習字は初めてですが、月謝も手頃で敷居が低く、気軽に通わせることができた」と話す。児童も「先生が分かりやすく教えてくれて楽しい」と、つぶらな瞳を輝かせた。
 金曜日の午前中には囲碁教室が開かれ、比較的年配の初心者を集めている。元会社員で講師の飯島賀郎さんは「ここでは知らないのが当たり前で、気後れせずに挑戦してもらえているのでは」と話す。 
 碁盤の前で恐る恐る碁石を置いていた65歳の女性は、大阪に住む孫が囲碁に夢中。対局を誘われるとルールが分からずに断っていたそうだが、「正月に帰ってくるから、びっくりさせてあげるの」と舌を出した。 

 寺小屋事業は、定年退職者ら同事業団の会員が、自身のキャリアを発揮する場を新たに創出する試みでもある。会員向けにアンケートを実施し、実現しそうな講座から開講した。
~中略~ 
 同事業団職員も「会員さんはもっと自分の特色を活かせる機会を求めている」と話し、寺小屋の今後に期待を寄せている。書道を教える久保寺さんも「子どもは学年も性格もいろいろで、一律に教えるわけにもいかないし、試行錯誤で大変。でも楽しいわ」と愉快そうに語っていた。

 以上、「教育」「伝承」という視点で、可能性のある事例を紹介してきました。
 中でも宇城市の取り組みは、平塚市の「寺子屋教室」とはまた違って、高齢者の方たちが周り(高齢者達、保護者、先生など)と協力し合ってカリキュラムを追求していく形態を取っているため、多様な知恵が集う場になっており、地域共同体の萌芽とも呼べる集団再生・地域再生の可能性を感じます。

 現状では「ボランティア」で運営されていますが、ここを「事業化」まで実現できれば、誰もが担える取り組みになり、広がりを生むことができるのだと思います。 

 また、カリキュラム自体も教育的視点を持たせるならば、趣味娯楽の域を超えて「将来生きて行く上で必要になる力を養う」テーマが、課題収束が強まる現代においては、より期待されるのではないでしょうか?

 例えば「衣食住」のような生きる上で最低限必要な課題に対して、高齢者の方たちが実際に身に付けてこられた「生きた知恵」「伝統文化」を伝承して頂くなど。

 今後も核家族化が進行し、家庭が教育機能を失いつつある社会において、高齢者の方たちへの教育的期待は高まる一方と考えられます。子供達への教育、伝承という要素に、新事業が成立する可能性が大いに感じられます。

 

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