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2013年09月12日

“お互い様”が育まれる 旅館「料亭小宿ふかざわ」

東京から90分の距離に位置する湯河原温泉で、国内観光が年々衰退する中において、驚くことに部屋稼働率が平均96% を誇る旅館がある。
料亭小宿ふかざわ 
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料理が評判の料亭宿。清潔なお部屋と温泉も楽しめる隠れ家的な宿。駅から5分の街中に佇むこの旅館の何が人を“引き寄せる”のか?その秘訣を探るべく、3代目女将の深澤里奈子さんにお話を伺ってきました。

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ちょうどお昼時に旅館に到着し、早速ご案内頂いたのは、おもてなしチームのスタッフミーティングの場。
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今年入社したばかりの新卒社員さんの提案により、旅館のおみやげコーナー改善策の検討を行っていました。入社してまだ半年であるにも関わらず、しっかりと提案書をまとめ、それを先輩社員達が真剣に受け止めて議論を重ねる。議論の場はとても穏やかな空気でしたが、眼差しは真剣そのもの。旅館を訪れたお客様に、最上の時をすごして頂きたい。そして、この湯河原の良さを少しでも多く堪能して貰いたい。そんな想いから、アイデアの塗り重ねが行われていました。
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何故、入社半年でそこまで思いを巡らせることが出来るんだろう? 🙄
 
その答えは、深澤女将のもう一つの顔に有りました。
実は深澤さんは、週に一度横浜商科大学での講義も行っているのです。先ほどの新人さんは、その大学で直接講義を受けていた生徒さんだったのです。つまり、入社前から“ふかざわのおもてなし”を学び、その想いに共感して入社されたので、当事者としての意気込みが既に培われていたのです。
 
常に若手に期待し、また期待に応えようと頑張る若者の期待にも応え続けてきた。
中には、送ってきた履歴書に「無給でいいから料理を学ばせて欲しい」と思いを綴って飛び込んできた学生さんも居るのだとか。彼は法学部で社会の役に立つ仕事を目指していた学生であったが、ある日母親の代わりに料理を作った時に、たったそれだけの事で母親がとても喜んでくれた姿を見て、これだ!と思ったのがキッカケだったとか。人に喜んでもらえる料理の腕を身に付けたい一心で、料亭小宿ふかざわに飛び込んできた学生さん。運良く人手が必要だった事もあり、採用に至ったのだそうです。お客様だけでなく、働く仲間達もまた、深澤さんの『心のありよう』に引き寄せられて集まってきているのです。
 
今では平均年齢が20代という若手スタッフ陣が旅館を支えるまでに育っています。担当毎のグループミーティング、全体会議などを通じて、企画立案や改善活動などを自主的に進められる体制になってきた。スタッフ夫々が目指す姿、目標などを毎年しっかりと話し合い、それぞれが定めた目標がサービス動線の狭い通路に、ところ狭しと飾られています。
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常にお互いの目指す姿を共有し、応援し合える空間が作りこまれており、お客様用のスペースだけで無くスタッフ達の働く空間にも、充足が溢れかえっている印象が心に残りました。「働く=傍を楽にする」ことが、単なる理念では無くしっかりと実践に移されていることが解ります。
こんな順風満帆な旅館ですが、若干26歳にして深澤旅館3代目女将をついでからは、実際苦労の連続でもありました。
祖母の時代は企業の宴会を売りとしてきた旅館でした。深澤さんが受け継ぐにあたり、‘料理を残さず美味しく召し上がって欲しい’ことと‘人と人とが対話でつながる関係性を創っていきたい’との想いが強くなり、少しづつ、ご家族やご友人など個人のお客様をおもてなしする宿へと路線変更をしてきたようです。女将を継いだ頃は右も左も解らなかったそうですが、持ち前の感性を活かし時流を読んだ転換だった訳ですね(^^)♪
その後、1年間だけ他社で学んだ後、徐々におもてなし重視の旅館へと方向性を変えていくことになります。3人の子どもを出産し、多忙の末に33歳で離婚も経験。
女将として、経営者として、日々壁にぶつかりながらも走り続けてきた中で、ふと気付きを得た瞬間があったようです。HPの自身のプロフィールには、次のように表されています。

「自分の心の在り方がすべてを創り出している!」と痛感し、心理学や脳科学、コーチングを学ぶ。
心の在り方を日常や経営で実践し、体感していく中で培った自分軸の創り方。
人生の経験にすべて無駄は無し!

苦楽いろいろ経て、今は、宿の女将、大学講師、セミナーコーチ、コーチングコーチをしています。

 
大切なモノが見つかってからも、学びの日々。こうして、お客様としっかり向き合える旅館に時間を掛けて変えてきた今では、部屋数10部屋に対して、スタッフの人数は26人も居るのです!!
 
実際、経営者やコンサルタントの方に、採算が合わないのではないかと驚かれることも多いそうです。しかし、実際に今の人数でほぼ空きのない状態で回せる調度良いバランスが保たれている。確かに大きな利益は得られないが、それでも今の状態が維持できている事の方が重要だし、お客様に心からのおもてなしを提供する上でこの人数は欠かせない要素だと捉えられています。
 
誰もが心地よいと思える空間が創りだされている背景には、料亭小宿ふかざわの目指す理念がしっかりと行き渡り、スタッフ全員が一丸となって創りだす『心のありよう』が全ての空間を隙間なく埋めているからなのでしょう。建物や立地に関して言えば、特別なものは何も無い。そこには、人が人を受け入れる土壌、つまり人間関係の原点だけが在る。これが、多くのお客様を“引き寄せる”心地よさの正体かもしれません。
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(もちろん、素敵な展望風呂など、施設そのものも魅力たっぷり)
 
また、料亭小宿ふかざわにはもう一つ「おもてなし」を楽しめる工夫が散りばめられています。
 
その秘訣は、深澤さんが力を入れている「人育て」の経営。通常、人育てというと社員の人材育成が思い浮かびますが、それだけではありません。お客様が、主体的に旅を楽しんだり、自分の心の在り方に‘気づく’キッカケをも創り出しているのです。
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単に「癒やし」を与える(消費して貰う)のでは無く、時間や料理、人との関係を本当に楽しむ為には、お客様自身にも場作りの主体である事を意識してもらう必要があるとの考えで、場の雰囲気を作り、楽しむ事に主体的に参加して貰えるような仕掛けが随所に散りばめられているのです。例えば、料理を美味しく食べるのは作り手の心だけでなく、食べる側の気持ちも大切であり、どんな気持ちで食べて貰うのが良いか?を試行錯誤しつつ、お客様に合わせた声掛けを行ったり。単に与えるのではなく、「お互い様」を楽しめる空間作り。まさに【共認充足の場】を目指した旅館経営を行っているのです。
サービス業って、とにかく一方的にサービスを与えるだけの仕事に傾倒しがち。
お金をはらう消費者が、いつの間にか王様に成り上がってしまう。一昔前に、「お客様は神様です。」なんて迷言が流行ったこともありましたね。
しかし、私権時代の娯楽的要素、現実逃避のサービスでは、本当の充足は得られません。
むしろ、311震災→原発事故を受けて、今社会では大きな自給期待(自分達で生きて行く力を身に付ける必要性)が大きく膨らみつつ有ります。共認の時代、単なる消費者ではもう大した充足も得られません。自ら関わり、自ら作り上げていく喜びを実現できる時代へと転換し始めています。
バブル期の方針から転換しただけではなく、さらに次代の可能性に向けて社員一丸となってお客様と一緒に「もてなしあうことのできる充足空間」を作り上げてきたことが、人が人を呼ぶ経営へと繋がっているのでしょう。
従業員もお客様も“引き寄せる”魅力は、どこから生まれているのか?
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深澤女将の「心のありよう」が、その引力になっているのだろうと感じました。
深澤さんは、感性豊かで、自然体。昔は自分の壁(こうあるべきという自己規範)で雁字搦めだった事もあったが、ここ数年で全ての壁を取り払い、肯定視の地平に辿り着いたような方。自分1人では何も出来ない、という無能の自覚がある為、常に学ぶ姿勢を持ち続けています。週1の大学講義を持つ事により、いつも“気付き”のアンテナを広げ、周りから得た最先端の状況を伝える事を意識している。講師としてではなく、自ら追求する姿勢をそのまま見せていく。なので、カリキュラムは一切決めていないそうです。
「人育て」に関わる為に起ち上げたもう一つの会社名、『安寧』という言葉に、深澤さん自身の姿が表れています。
常に自然と一体で在りたい。そして、穏やかな秩序に身を委ねられることの幸せを、伝えていきたい。まだまだ、言葉にしきれない思いも沢山あって、だからこそまだまだ勉強したい、という意欲も湧いてくる。
深澤さんと会話し、またその周りの方々とも触れ合う中で、自然と「力に成りたい」と思わせてくれる素敵な女性。きっとこれからも、料亭小宿ふかざわには素敵な人々が“引き寄せられてくる”だろうな、と想いました。
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■参考HP
料亭小宿ふかざわHP:リンク
深澤女将のブログ:リンク
深澤さんのもう一つの顔 ㈱あんねい:リンク
あきゅ「森の楽校ラジオ」記事:リンク
仕事旅行社:リンク

 

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