2013年11月15日
日本の大学どうする? ~秋田県・国際教養大(AIU)に見るこれからのグローバル教育
これからの日本の大学はどうなって行くのでしょうか? 大学はどうあるべきか。
現在、大学業界では生き残りをかけて、多様且つ大胆な取り組みが始まっています。今回はしのぎを削る大学教育界に於いて、新設開校にかかわらず僅か9年で就職率100%の大学としてブランド化に成功。そして今や一流国立大学と難易度で肩を並べるまでにもなった秋田・国際教養大学の教育戦略に注目してみました。
秋田県・国際教養大(AIU)は、2004年に開校した日本で初の地方独立行政法人運営による、新設の単科大学です。 グローバル人材育成にターゲットを絞り、過酷な英語学習カリキュラムでも知られるこのAIU。センター試験の成績で見れば既に、東京大学文系と同じ程度の高得点が必要だとも言われています。
その秋田県・国際教養大(AIU)の勝ち筋戦略と、残される課題に迫まります
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◆AIUの勝ち筋はグローバル教育の特化
国際教養大学(AIU)は、その理念として「英語をはじめとする外国語の卓越したコミュニケーション能力と豊かな教養、グローバルな専門知識を身に付けた実践力のある人材を養成し、国際社会と地域社会に貢献すること」を掲げています。大学の生き残りには大学規模に応じたポジション戦略が重要であるとされていますが、AIUのポジショニングは明快に特化したグローバル人材の育成です。
~徹底した英語集中学習環境と自学自習環境の確立~
国際的なコミュニケーション言語である英語力の確立を軸に、国際的に通用する人材育成を目指しコンテンツをキャンパスに凝縮、学習と生活を一体とする中で高密度な英語学習環境が形成されています。
・授業はすべて英語。
・厳しい学習カリキュラム→4年で卒業できる学生は半数に満たない。(但し途中退学者無し)
・24時間勉強可能な環境→大学内住環境の整備、24時間開放図書館。
・隔離型キャンパス→立地環境は郊外型キャンパス。
・共同生活の義務化→キャンパス内寮生活。
・1年間の海外留学義務化→グローバルコミュニケーション能力の確立。
・教員と学生の双方向授業→年間教育プログラムの共有。
24時間利用可能の図書館(AIU)
~企業の求める即戦力としてのグローバル人材育成~
遊ぶ場所も限られ、4年間みんな人一倍、勉学に励み、英語によるコミュニケーション中心の学生生活を送るAIUの学生たち。即戦力に足るグローバル人材を求める企業の目に理想的に映るのも頷けます。開校以来、就職率100%という数字はAIUの学習環境の高さを物語っているのでしょう。
◆評価分かれるAIU
ところが近年になって、AIUの課題もいくつか見えてきました。新卒人材の輩出から5年。<英語によるコミュニケーション能力を鍛え上げられた即戦力としてのグローバル人材>も、企業からの評価が分かれはじめているのです。
・山間部での寮生活が義務づけられるため、学生の間、日本の企業や社会人との接点がない。
・グローバル人材育成とローカル化のミスマッチ(秋田県に就職しない学生と県の税金投入の是非)
例えば、日本社会とのコミュニケーション不足が企業サイドでは指摘されはじめています。「使いづらい」という手厳しい評価も。また、この春に4年間勤めていた企業を退職したというある卒業生は、「自分のほかにも日本企業の古い体質と合わずに会社を辞めた人間は少なくないし、みんなが英語を生かせる仕事をできているわけではない」と漏らすなど。大学に戻りたいと口にするOBも多いとか。
新しい試みとして注目を浴び続けるAIU。国内の大学の中では徹底した英語学習環境が差別化として成功する一方、社会人排出から5年を経て、企業サイドからは高い英語力や国際的ビジネススキルの評価とは別に、日本企業内での日本的なコミュニケーションにおける違和感も現れはじめているようです。もちろんそれは、AIUの卒業生からすると、グローバル能力が活かせる企業が日本に少ないという違和感でもあるのです。
◆企業の求める人材と学生が求める企業のミスマッチ
海外との取引のある企業にとっては、英語に堪能な人材は欠かせません。けれども、海外企業は別として、日本企業の多くのビジネスは欧米スタイルではありません。英語力とは別に社内での日本的コミュニケーションも企業にとっては大変重要な要素です。
グローバル化=英語力は、国際コミュニケーションのベースではありますが、もちろんそれは必要条件であって、十分条件ではありません。国際教養大のグローバル教育に特化した教育方針と日本企業の求める人材には、徐々にミスマッチが生じてきているのです。
就職率100%を誇る国際教養大学。日本企業にとって必要な人材とは?そもそも「グローバル教育」とは何なのか?誰の為の教育なのか?大学教育における「グローバル教育の在り方」が問われ始めています
- posted by kasahara at : 14:45 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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