2013年12月28日
関西を知る~京都企業の業績がいいのはなんで?~京セラ編~
「京都企業の業績がいいのはなんで?」と題して、様々な角度から京都企業の強さの秘密を探ってきました。
過去3回の記事を振り返ると、
第1回:歴史編(リンク)
各時代の文化・技術の粋を結集して創られた京都の伝統は、現在もなお研鑽が続いている
第2回:「風土と工匠編」(リンク)
日本文化を創り支えてきた京都人の誇りが、最後まで粘り強く最後までやり遂げる精神力を支えている
第3回:「老舗の理法」(リンク)
京都の老舗は、先祖代々の業を守り継ぎ、長年の営業で顧客の信用・愛顧を得ることで永続・繁栄してきた
上記のように、千年の歴史に培われた伝統、文化、風土、精神は、現在も脈々と受け継がれて京都企業の強さを形成しています。
今回はその代表格、「京セラ」に注目です。
>http://www.soumunomori.com/column/article/atc-47941/
今回のメニュー
【1】理念経営という名の人活経営で成長を続ける京セラ!
1.京セラとは?
2.稲盛流理念経営の真髄!
3.稲盛和夫名誉会長はなぜ影響を与え続けるのか!
4.アメーバ経営で会社も社員も成長する!
【2】まとめ
【1】理念経営という名の人活経営で成長を続ける京セラ!
1.京セラとは?
1959年(昭和34年)、稲盛名誉会長が資本金300万円、社員わずか28名で「京都セラミック株式会社」として創業を始めました。
現在、資本金1,157億円、売上高1兆円突破、連結税引き前利益1,200億円を誇る超優良企業です。グループ企業は184社を数え、アメーバ経営(独立採算制)で運営しています。
事業も多岐にわたり、電子デバイス、情報機器、通信機器、ファインセラミック、光学機器など手広く展開しています。「選択と拡大」を経営戦略に据えているのです。
京セラは、資金も信用もない小さな町工場から出発しました。頼れるものはなけなしの技術、そして信じあえる7人の同志。会社の発展のために、一人ひとりが精一杯努力し、経営者も命をかけてみんなの信頼に応える努力を止めませんでした。
京セラの経営は、「社員みんなが本当にこの会社で働いてよかったと思える会社でありたい」という想いが形になったものなのです。
2.稲盛流理念経営の真髄!
「従業員の物心両面の幸福を追求し、人類、社会の進歩発展に貢献する」。
これがよく知られた京セラの経営理念です。しかし稲盛名誉会長は“準理念“と言ってもよいような心に残るキーワードをいくつも発信してきました。例えばその一つに「高い目標と強烈な思いが企業を伸ばす」というのもあります。
従業員の物心両面とありますから、給料だけでなく心の幸福も合わせて追求するわけです。心豊な人格を形成しなければ真の幸福とはいえないという考えです。人類とは顧客をはじめ全てのステークホルダーと考えれば分かりやすいですね。当然社会への貢献ですから「企業の社会的責任(CSR)」を果たしていくということです。40年も前に掲げられた理念ですから、その先見性の高さをうかがわせます。
バブル崩壊後、厳しい経営環境が続きましたが、どんなときでも成長を続ける会社というのがあります。一体なにがどう違うのでしょうか。稲盛名誉会長の言葉を借りれば「経営理念が末端までどれだけ浸透しているか、その差だ」ということです。
どこの会社も経営理念は掲げているでしょう。しかし、「仏造って魂入れず」になっている会社が多いのです。高い目標を掲げても、崇高な理念を掲げても社員全員が強烈な思いを持って実行しなければ何の変化も起きないのです。
物的な豊かさと精神的な豊かさ、この両方を手に入れるために、具体的にはどうしたらよいのでしょうか?
稲盛氏は次のように述べています。
「大切なのは日々懸命に働くこと。お釈迦さんの説かれる「精進」です。労働とは単に生活するための糧を得る手段ではなく、欲望に打ち勝って、心を磨き、人間性を高めていくことができる、崇高な行為です。仕事ことが精神修行の場であり、日々精魂込めて働くことが魂を磨くための修行になるのです。だから毎日を『ど真剣』に生きなくてはならない。」
3.稲盛和夫名誉会長はなぜ影響を与え続けるのか!
「会社の寿命30年説」というのがあります。伊藤謙介氏が社長を命じられたのがちょうど京セラ創業30年という節目の年でした。「企業が伸びるか廃れるか、それは君ら次代の経営者次第だ」と強烈なメッセージを稲盛名誉会長からもらいました。
伊藤謙介氏は社長時代、「京セラフィロソフィ手帳」を作成し、自ら陣頭指揮に立ち、全社員への徹底研修に乗り出したのはそのためです。「人間として何が正しいか」を物事の判断基準に置くことが明記されています。
稲盛名誉会長は鹿児島の出身、そして西郷隆盛の思想的影響を色濃く受けています。曲がったことは大嫌い、「人間として正しいことが経営においても正しい」と考えています。企業不祥事が発生するたびに法改正の繰り返し、そしてコンプライアンスが叫ばれます。
どれほど立派な法律を作っても法の網をかいくぐって悪事を働こうと思えばできるでしょう。稲盛名誉会長は法律ではなく、人間として正しいかどうかを判断のよりどころにしているのです。
こうした稲盛名誉会長の後姿を見ている人たちは、信頼して尊敬の念を持っているのです。だから他社の人も含めて稲盛名誉会長から大きな影響を受けるのです。
アメーバ経営という明快な採算管理とフィロソフィ教育、この二つを軸に拡大と利益の二兎を追い求めてきたのでした。
京セラフィロソフィは、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準におき、すべての行動において公明正大でまじめに一生懸命努力していくことの大切さを示す人間哲学、経営哲学なのですね。
4.アメーバ経営で会社も社員も成長する!
ヤシカ、キンセキ、三田工業など多くの会社を吸収合併しました。いわゆるM&Aです。傾いた会社の支援要請に応えたといったほうが正解でしょう。
建て直しの切り札は「アメーバ経営」です。アメーバは単細胞の生物です。関連事業部、関連会社をアメーバに見立てて、徹底した家計簿経営を推進するのです。
「入るを図って出(いずる)を制す」とは松下幸之助翁の遺訓ですが、アメーバ単位で採算計算をやり、ムダを削除していくわけです。A事業の赤字を他の事業が穴埋めしたり薄めてくれるという甘えた考えは一切通用しないのです。ここから将来の幹部候補が続々育っていくのです。
しかし一方で、アメーバが自らの採算にこだわりすぎると、会社全体よりアメーバだけの利益を追求してしまうという欠点を持っています。ここで、忘れてならないのは、アメーバ経営は経営哲学と不可分一体であるということです。
利益を上げたアメーバは当然賞賛されるのですが、その利益が個人の給与に直結するようなものではありません。給与は長年の会社への貢献なども加味して各アメーバではなく全体で決められます。つまり、日本の伝統である集団としての活動が生かされる仕組みになっているのです。
そういえば、京セラの経営理念は「従業員の物心両面の幸福を追求し、人類、社会の進歩発展に貢献する」でした。
従業員を大切にすることを第一に掲げ、社会貢献がその次に続きます。
【2】まとめ
1.理念経営は、掲げるだけでは機能しないこと。末端まで浸透させ、全員参加の経営になって初めて機能すること。
2.「人間として正しいことが経営においても正しい」という信念を持って経営すれば、不祥事など起きるわけがないこと。
3.アメーバ経営は小集団の組織が独立採算制で運営するもので、経営者意識を持ったリーダー育成にも適していること。集団としての活動が生かされる仕組みにもなっていること。
このような「フィロソフィ」と「アメーバ経営」が、京セラでは単に言葉で掲げられるだけでなく全社員に浸透しているわけですから、その強さ、誰もが納得です。
- posted by YAGU70 at : 13:44 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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