2015年01月13日
「地域共同体の再生 第3回vol.2 ~共同体の再生に力を入れている地域活動の紹介~
前回の記事では、数多くの失敗事例と課題を残す地域活動が問題として上がっていますが、全国の数ある地域活動の中でも成功し、これからの街づくりの可能性を感じさせる事例を紹介しました。今回は、地域活動から「共同体の再生」を目指している地域活動の事例を紹介します。
第二回の記事の中で、意識は高まっているのに対し組織活動がともなっていないのが大きな原因でした。
地域住民の中でも、率先して引っ張る住民が必要だったり地域内で課題を共有することが大事だったり。
一人で解決せずみんなで乗り越えていく、という一体感が一番の鍵だと感じます。
今回紹介する事例は以下の2つです。
上記の内容はもちろんのこと、さらに1段階上の目標に向かって前進している地域活動です。
Ⅰ 福岡県大牟田市認知コミュニティ事業
Ⅱ(株)大宮産業
Ⅰ 福岡県大牟田市認知コミュニティ事業~安心して徘徊できる街~
福岡県大牟田市
人口:123,683人 (高齢化31.6%、全国中でも高い高齢化率。)
福岡県大牟田市は、全国的にも高齢者の数が多く、加齢によって発症率が高まる認知症は地域にとって今後大きな問題になる、と予想。認知症になっても、誰もが住み慣れた家や地域で安心して豊かに暮らし続けることができるよう、「地域全体で認知症の理解を深め、認知症の人と家族を支えるまちづくり」をスタートさせました。
★取り組み内容
・小学校校区の身近な地域のネットワークをつくる
・子供のときから学んだり、触れたりする機会を増やす
・認知症ケアと地域づくりの要とあんる推進者を育成する
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★具体的な内容
・認知症コーディネーター養成研修(履修期間:2年間程度)
⇒認知症ケアやまちづくりの牽引役を育成するための大牟田市独自の人材育成プログラム。
⇒脳の機能や疾患、治療、コミュニケーションなど認知症に関係する内容を網羅的に勉強していきます。
・もの忘れ相談会
⇒認知症の早期発見・早期対応を目的として、もの忘れ予防・相談検診を実施
・高齢者SOSネットワーク「徘徊模擬訓練」
⇒日常的な声かけ・見守りの意識を高めるとともに、徘徊行方不明発生時に対応するSOSネットワークを構築
★「高齢者を守る」という切り口で街づくりがスタート
「介護」という国として大きな問題となっている「高齢化社会」に対して、それをあらためて地域の課題としたときに見えてくる「身近なSOS」を共有し、町全体で解決していく、支えていくという切り口は新しく、そして可能性に満ちていると思う。役所の一方的な支援ではなく、相互に支援し助け合って生活していく。今後の地域活動に注目です。
Ⅱ 108人の住民出資で設立した(株)大宮産業のその後の取組み
高知県四万十市
人口:100人弱の小さなまち
現在の大宮産業は、以前はJA幡多の大宮出張所だった。日用品をはじめ、ガソリンや軽油、農業資材などを販売する、いわば集落の要となる店舗でもあったが、2005年農業生産の減少にともない、出張所が廃止されるという話が持ち上がる。高齢者が長距離運転して、買い物をするのはかなりの負担となる。大宮を「買い物過疎地」としないためにも出張所を維持できないかと訴えたが、その声は届かず、廃止決定が下された。
★自分たちの地域は自分たちで守る!
訴えてもダメなのなら・・・「ならば、自分たちで店を開こう!」と立ちあがったのが、竹葉さん(現在の代表)をはじめとする大宮住民だ。
何度となく話し合いが行われ、住民の約8割、108人が平均6万円を出資し、資本金700万円の(株)大宮産業が発足した。竹葉さんを代表に5人の取締役と株主はすべて大宮の人たち。大宮住民のための、大宮住民による会社だ。
★取り組み内容
①自分たちでつくった大宮米のブランド化
②大宮地域復興協議会を設立
③大宮集客活動センター「みやの里」の設立
★具体的な活動内容
①大宮米のブランド化
・地域の人口の減少や、米価の低迷などの原因から衰退していた「大宮米」を、大宮の地元農家さんが、力を合わせて復活させようと活動しています。自分たちで食べる分はもちろん、「大宮米」を他県へ売り込み、四万十の里山農家の本当のお米のおいしさ知って頂き広めていくことをめざしている。
②大宮地域復興協議会を設立
・平成25年に大宮産業を核とした協議会。県や市と連携し、ふるさとインターンシップや移住体験ツアーも行ったりと、地域づくりの輪を着実に広がっていくように町全体でおこなっている。
③「みやの里」の設立
・大宮地域では、上・中・下の3部落、大宮産業やいちいの郷、婦人会、老人会などの各種団体が連携し、住民自らが主体的に地域の課題解決に取り組むことになった。大宮地区の将来を見据え、集落の維持、地域振興のために住民が団結して立ち上げたのが「集落活動センター」。地域の中でも「6つの部会」をつくり、部会ごとに地域活動を行っている。
今回紹介した2つの事例の活動スタートのキッカケとしては、「まずは課題を共認すること」だと思います。
みんなで課題を理解したあと、その次の段階としては、「このあとどうする?」「どうすればよくなるか?」と、しっかりと地域住民一人ひとりがまちと向き合い、対話しているか、が重要だと思います。
今回の事例はそれにプラスして「自分たちでどうにかしなければ」という危機感と、こうしたい、していこう!という主体性が、まち全体を巻き込み成功へと導いているのではないかと考えます。新しい可能性として、国で問題視されていることを地域課題としてとらえていること。そして、「問題意識からの行動力の高さ」が光っている地域活動が今後可能があると感じました。
- posted by 岩井G at : 20:49 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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