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2015年07月30日

地方紙の研究 ~琉球新報 県民の意志を明確に伝える地方紙

平成27年6月25日、自民党勉強会に出席した作家の百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞はつぶさな­いといけない」と発言していたことが、マスコミに大きく取り上げられました。さらに参加した自民党議員から「マスコミを懲らしめるには­広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組­を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制すべきだ­という意見が出ました。
オスプレイ
槍玉に挙がったのは『琉球新報』『沖縄タイムス』の2誌。実はこのように政府からのバッシングは、以前から執拗にあったのです。
今回も月刊「潮」が1998年から3年程連載していた「地方紙の研究」(潮出版社)を一部引用して、地方紙のあり様を探って行きましょう。約20年の時を経ても、流されない沖縄の姿が垣間見えます。

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沖縄を訪れた人は、沖縄の新聞である「琉球新報」や「沖縄タイムス」を眼にして新鮮な驚きを感じたはずである。そこでは基地の問題や米軍の演習や事故、あるいは米兵の暴行事件やそれに対する県民の反対闘争などが前面に据えられ、政府発表記事が一面トップを飾る、本土の見慣れた紙面とは、明らかに異なっている。

新聞が「社会の木鐸」と言われなくなってから既に久しい。しかしここでは、木鐸などというよりもなお、必死の主張といったような、一種の清々しさを感じさせられる。「国民」や「県民」というようなひと括りにした言い方には、どこか危うさが漂っていて、そこに共通する願いを取り出すのは至難の業なのだが、沖縄の人々には、共通する熱い想いがある。「基地の縮小、移転」である。これは財界人をも含めた圧倒的な世論と言える。

日本にある基地の75%を、この細長い、小さな島に押し付けられている現実の悲惨から、沖縄の新聞は出発している。本土の泰平を決め込んでいる、水ぶくれマスコミとは、似て非なる紙面とならざるを得ない必然がある。(「地方紙の研究」より)

実は、日本史上、最大の反政府運動と言われる60年日米安保闘争のときでさえ、沖縄は争点から外れていました。無関心な本土のスタンスも沖縄の反基地活動が継続している理由だと思われます。

これに対して政府や本土の政治家は苛立ちを抑えきれないようで、最近になって、反撃も始まっている。例えば「産経新聞」などには、次のような批判が堂々と掲載されるようになった。「報道姿勢問われる地元紙」(97年4月12日)にはこう書かれている。

「特措法改正については、法案の閣議決定を伝えた4日朝刊で『苦痛を強いられる改正』(新報)『がまんできぬ改正』(タイムス)と社説を掲げて以来、社会面や総合面で、反戦地主・平和団体による反対運動や県内識者の反対談話をほぼ連日大きく取り上げる一方、賛成の意見はほとんど取り上げられていない。」

まるで、政府に反対するのは悪だ、とでもいうような論調である。この他にも、杏林大学の田久保忠衛教授が、衆院安保土地特別委員会で「二つの新聞は普通の新聞ではない」と発言、新進党の西村眞悟代議士は「沖縄の心がマインドコントロールされている」とまで言い切っている。(「地方紙の研究」より)

ここでいう「特措法改正」とは、1951年締結の日米安保条約に基づいて米軍基地用に土地を提供する契約が、1997年5月15日に使用期限を向かえるにあたり、期限切れ後も暫定使用を可能とする米軍用地特措法改正案のこと。沖縄にとっての戦後が大きく引き伸ばされたのです。

本土からの心ない批判に対して「琉球新報」の三木健編集局長は、憲法記念日の「社説」で次のような反批判を書いている。

「この情報化時代にあって、一、二の新聞によって「マインドコントロール」されるほど、沖縄県民が愚かではない。もしコントロールされているというのであれば、これほど県民を愚弄し、侮辱するものはない。県民の声に背を向けて、コントロールしようなどといった思い上がった新聞なら、既に県民読者によって葬り去られていよう。県民の声を支えとし、その権利や利益を守ることが偏向だというなら、私たちはその批判を甘んじて受けよう。」(「地方紙の研究」より)

実は冒頭に紹介した百田氏に対する琉球新報の反論も、ほとんど20年前の内容と同じでした。ということは自民党の考えは、この20年間ほとんど進歩していないということでもある。変わったのは、昨年の知事選挙と今年の統一選挙での沖縄惨敗で、自民党のあせりと苛立ちが誰の目にも明らかになったこと。補助金や交付金という名の札束で、大衆を懐柔する手法が、効き目がなくなったことにようやく気付いたのでしょう。
既に沖縄は「基地の補助金なしでは生きていけない」状況ではなくなり、日本でも有数の観光立県として独り立ちを進めている。琉球新報の政府に対する毅然としたスタンスの報道は、単なる情報媒体ではなく、高々1万4千人とはいえ県民の想いを背景にした強い意志を示している。

 

 

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