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2016年12月09日

会社は社会を変えられる ①曙ブレーキ工業:会社のブランドは社員

会社の存在意義とは何だろうか。多くの人は「事業活動を通して利益を追求すること」「株主の利益を最大化すること」と答えるだろう。確かに利益が存在意義の一つであることに疑いはない。しかし私はあえてここで、会社の最大の存在意義は雇用を生み出すことにある、と言いたいのだ。(中略)
私の言う「雇用」とは、労働の対価として経営者から報酬を得るという、雇用主と披雇用者の関係性のみを指すのではない。本来人間は他者と交わり、そこに生きがいを感じる社会的な動物である。ここでいう「雇用」には、そうした人間が社会的な存在となるための「場」や「コミュニティ」としての機能が含まれている。

冒頭この文で始まるのはプレジデント社発行の『会社は社会を変えられる』(岩井克人・小宮山宏編・著)。

企業の社会的責任(CSR)の必要性が叫ばれて久しい。経営の世界では「市場成長率」と「市場占有率」という二つのモノサシを使って事業選択するが、CSR活動では「企業経営や事業活動にとっての重要性」「公益にとっての重要性」という二つのモノサシがある。

この本にはその二つのモノサシを持つ企業が掲載されており、それを一部引用、要約しながら紹介していきます。企業利益と公益は深いところでつながっていることを気付かせてくれます。今回紹介するのは、曙ブレーキ工業です。曙ブレーキ工業は創業昭和4年で、自動車、バイク、鉄道等のブレーキの製造・販売を行う企業です。ブレーキは非常に重要な機能ですが、一般の目に触れにくい。そこで曙ブレーキでは、社員そのものにスポットライトを当てるのです。

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曙ブレーキ工業の事業CSRを統合した報告書である「AKEBONO REPORT」を読んで、直ぐに気付くことがある。他の会社よりも社員の姿が目立つのだ。例えば、2013年度の表紙を見てみよう。圧倒的に社員の露出が多い。2012年にいたっては、全ての写真が世界各地で活躍する社員の顔だ。

表紙を開いても出てくるのは社員の顔だ。表紙の裏の「曙の理念:私達は『摩擦と振動、その制御と解析』により、ひとつひとつのいのちを守り、育み、支え続けて行きます。」という言葉の下には、社員の写真とともに、その「理念」を自分自身に引き寄せた彼ら自身の言葉が書かれている。普遍化、結晶化された理念としての言葉と、当事者として考え行動する社員たちの身近な言葉を通じて、曙ブレーキとはどのような会社であるのか、そこで働くことは社会にとって、そして自分自身にとってどのような意味があるのかを分かりやすく表現している。
(中略)
ではなぜこれほどまでに社員の顔が並ぶのだろうか、そして、社員が自分の言葉で語ろうとしているのだろうか。

そもそもの話に戻るが、曙ブレーキは自動車や鉄道等のブレーキをつくる会社だ。自動車用ブレーキ分野で高いグローバルシェアを誇る、日本を代表するモノづくりの会社の一つだ。ブレーキとは、摩擦現象を利用して運動エネルギーを熱エネルギーに変換し、車を止める装置の総称のことである。ブレーキは命を守る大切な役割を果たしている縁の下の力持ちのような存在だ。しかし、ユーザーからすれば、かなり地味な存在であることも事実だ。トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、と完成車メーカーの名前は知られているが、ブレーキメーカーの名前を挙げられる人は少ない。

実は、曙ブレーキの社員にとっても、それは同じことだ。自社の製品を直接手にすることが出来ない、完成車を見ても自社の製品が使われているかはよく分からない。日々の努力を積み重ねた製品や部品であっても、表から見えにくい製品を扱うがゆえに、自社製品や自社に対する誇りが失われがちになってしまう。 (「会社は社会を変えられる」より)

曙ブレーキでは、取引企業からの評価は高いにもかかわらず、社員自身の自社製品に対する評価がそれほどでもない、というミスマッチを起こしていることが、アンケート結果から明らかになっています。そこで曙ブレーキはブランディングに取組みます。

CSRに全社で取組み、それを取りまとめる役割を、同社では「ブランディング推進室」が担当している。ブランドは消費者にとってのロイヤリティをつくるもので消費財企業ではしばしば事業戦略の一つとして位置付けられるが、企業を顧客とする B to B 企業におけるブランディング推進はあまり聞かない。

曙ブレーキにとってブランディングとは社員にとっての会社や製品に対する誇りを育てることであり、そこに大半のリソースを注いでいる。一般に、事業報告書やCSR報告書、統合報告書、アニュアル・レポート等は全てのステークホルダーを読み手として想定して書かれたものだが、曙ブレーキの統合報告書である『 AKEBONO REPORT 』は、重要な読み手として社員を強く意識している。社員が会社のことを自分自身のこととして考え、行動することができるよう、その手引きとして作られている。

実際『 AKEBONO REPORT 2013 』のトップメッセージの結びには、こう書かれている。
「ブレーキは、自動車の単なる一部品ではなく、クルマを『安全かつスムースに走らせる』ためになくてはならないものです。akebonoグループの全員が、ブレーキという製品を通して人々の『安全と安心に貢献している』ということを誇りを持って、自分の価値を知り、自ら積極的に考えて行動できる人になってほしいと願っています。akebonoが2005年より取り組んでいるコーポレートブランド経営にはそうした意図があります。社員がakenbonoにとって最大のブランド発信者であるという認識を持って日々の業務に取り組むことが、一人ではできないことを皆で実現するという会社の組織力を強くし、広くステークホルダーに企業としての価値を認識していただくことにつながっていくと信じています」 (「会社は社会を変えられる」より)

創業90年近い老舗製造企業ともなれば、これまでの製品や名物社長が “ 企業の顔 ” になりそうなもの。社員の顔をブランド化するのは、おそらく社員を単なる労働力の提供者ではなく、それまでの生き様も丸ごと受け入れた ” 組織の担い手 ” という位置づけなのだろう。企業を活性化させるヒントはココにあるのでしょう。

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