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2018年02月14日

老舗企業大国日本② ~米の持つ力を引き出す勇心酒造

今回取り上げる香川県の勇心酒造株式会社は、安政元(1854)年創業で、既に150年以上の歴史を持ちます。現在の当主・五代目の徳山孝氏が30歳の若さで、勇心酒造を継いだ時、清酒業界は既に斜陽。市周りの老舗の造り酒屋が次々と倒れていった。そんな中、東大大学院で酵母を研究した徳山氏はコメと醸造・発酵技術を結びつけて、付加価値の高い商品を作ろうと考えたのです。今回も「世界が賞賛する日本の経営」(伊勢雅臣著:育鵬社)を一部引用して、老舗企業から学ぶべきポイントを抽出したいと思います。

「お米の場合、清酒や味噌、醤油、酢、みりん、あるいは焼酎、甘酒といった非常に優れた醸造・醗酵・抽出の技術があるんですけれども、明治以降、新しい用途開発が全くと言っていいほどなされていなかった。つまり、近代に入ってから、お米の持つ力を日本人は引き出してこなかった。(中略)
近代科学が行き詰まっている今だからこそ、米作りのような農業と醸造・醗酵の技術とをもう一度リンクさせて、付加価値の高いものを作ろうと、お米の研究に取り掛かったわけです。」(勇心酒造 当主 徳山孝氏)

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徳山氏は、先祖伝来の土地を切り売りしながら、毎年1億円以上を研究開発に注ぎ込みました。昔、米が湿布薬に使われていたという古文書の記述をヒントに、ようやく昭和63(1988)年にライスパワーエキス入りの入浴剤を開発して売り出したところ、たちまち年間300万本のヒット商品に成長した。

しかしある大手製薬会社が詐欺同然のやり口で徳山氏の開発した製法を知り、同様の製品を売り出した為、売上は激減、倒産一歩手前まで追い込まれました。そこに通産省が産業基盤整備基金を通じて3億8000万を融資してくれ、また地元の通販会社社長が窮状を察して1億円を貸してくれたのです。

それを元手に徳山氏は商品開発を続け、平成14(2002)年にアトピー性皮膚炎に効く「アトピスマイル」を売り出した。それまでに使われていたステロイド剤の副作用が全くないので、アトピー性皮膚炎の子供を持つ母親からは「救世主」並みの人気を集め、口コミだけで発売1年で12万本売れたのです。

さらに化粧品会社コーセーから、ライスパワーNO.11を配合した皮膚の水分保持能力を改善する「モイスチュアスキンリペア」を売り出すと、年間百万本を超す大ヒット商品となった。

遺伝子組み換えなどで自然界にない生物を作り出す西洋型のバイオテクノロジーに対して、日本古来の醗酵技術の組み合わせによって、安全な新製品を開発するのが日本型バイオテクノロジーだ、と徳山氏は言います。

「西洋のヒューマニズムを『人道主義』と訳したのは、とんでもない誤訳やと思うんです。有る学者が言うてましたが、あれは『人間中心主義』と訳すべきなんです。つまり何事も人間を中心に「生きてゆく」という発想。だから人間と自然の乖離がますます大きくなってきた。環境問題ひとつ解決できない。こういう人間中心主義は、もう行き詰ってきたんやないかと思うわけです。
一方、東洋には自然に「生かされている」という思想があります。私なんか、多くの微生物に助けてもらってきたわけで、まさに「生かされている」と思います。」(勇心酒造 当主 徳山孝氏)

回りの人や自然環境に生かされているという視点があるからこそ、環境の変化にも適応でき、結果として長い歴史を形成できる。老舗企業の歴史は、時代の変遷の映し鏡と言えるのです。

 

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