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2018年03月21日

“脱”下請でクライアントの想いを直接受け止める ~浜野製作所~①

株式会社浜野製作所は、東京都墨田区にある板金等の加工会社。今年3月に経産省から「地域未来牽引企業」の認定を受けるなど、ものづくりのまち「墨田区」で、特に精力的な存在として知られています。
創業は1978年。当時は下請け、孫請け、いや5次、6次の下請け会社でした。それが現在のように発展したのはなぜでしょうか?そのきっかけとなるエピソードをどうぞ。『人に喜ばれる仕事をしよう』(坂本光司著:WAVE出版)を一部引用して紹介します。

未だ下請業務に明け暮れていたある日、浜野慶一社長が営業から戻り、メールをチェックすると、珍しく個人からのメールがありました。内容は「既存の鉄パイプの加工と新たな鉄パイプの加工をいくつかお願いしたい」という一方変わった依頼。その後、メールの差出人から電話が入り、よくよく聞いてみると

「今度6歳になる娘の誕生日に、加工した鉄パイプをプレゼントしたい」

「ん? どういうこと?」

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実は、電話してきた男性には幼い一人娘がいました。しかし自身の不注意もあって娘さんが不慮の事故で歩けなくなり、車椅子の生活を強いられることになってしまったのです。悲しみの中「自分の体と引き換えてでも、娘にもう一度歩いて欲しい」という思いにかられて、幾つも病院を回ったそうです。その中で「毎日のリハビリで歩けるようになるかもしれない」と言ってくれた病院があり、父親は「娘と一緒に頑張りたい」と思ったそうです。そしてその病院の先生に「娘さんが使用中の介護用ベッドの手摺を改造することから始めてはどうか」と提案されたのでした。

「娘の6歳の誕生日にリハビリ用のベッドに装着するパイプをプレゼントしたい。そのときに『歩けるようにパパと一緒にリハビリしよう』という自分の思いもしっかり伝えたい」

父親はベッドを買った店や、メーカーに改造の相談をしたのですが、全て断られ、ネット検索を繰り返し、やっと同製作所のホームページにたどり着いたそうです。
「こんな手間隙かかる仕事を請けてしまったら、他の仕事にも悪影響が出るだろう」
浜野社長はそう考えながら工場に入り、社員たちに 一部始終を話し「どうする?」と聞いたところ、そこにいた全員が「社長、やりましょう」と答えてくれたのです。 早速、担当者はその父親と何十回も仕様についてやり取りを続けました。
「女の子の身長はどれくらいか」「右利きか左利きか」「直角になる部分は角張っていると危険だから、丸味をつけた方が安全」等々。
社員たちは、その父親と娘さんが手をつないで散歩している姿を思い浮かべながら、作業に励んだそうです。徹夜の日もありましたが、何とか女の子の誕生日に届けることができたのです。
次の日の朝、その父親からメールが届いていました。

「浜野製作所の皆様へ
ありがとうございました。実を言うと、浜野さんの所で作ってもらったものの、渡そうか渡すまいか直前まで悩みました。一人娘であること、障害があるということ、歩けないということ、その責任は自身にもあるということ、そういう理由もあり、娘を甘やかせて育ててしまい、おもちゃとか買いたいというものは限りなく買い与えていました。しかし今回の誕生日プレゼントは渡すのを迷いました。
『いらない!パパ約束が違う、こんなの誕生日プレゼントじゃない。ままごとセットが欲しいって言ったじゃない!リハビリなんかやらないし、そんなのいらない!』
そう返されてしまうのではないかと心配で不安で、直前まで悩んでいました。

けれども浜野製作所の皆さんが本当に一生懸命作っていただいたものだから、勇気を振り絞って、自分の思いを正直に一生懸命伝えました。
『これが今年のプレゼントだ。パパと一緒に頑張ろう』と言うと、6歳になる娘が、大きな瞳に涙をためながら『パパありがとう』と言って、抱きついてきてくれたのです。
浜野製作所の皆さま、本当に有難うございました。」

浜野社長はこう語ります。

「ウチはいわゆる下請仕事しかやってこなかった会社なので、自分たちのやっていることが、どういった形で人様の役に立てているのか、正直な所、よくわかりませんでした。日々、有難いことに仕事があり、常に納期に追われ、目の前にある仕事を淡々と処理することに精力を注いでいて、お恥ずかしい話ですが、広い視野を持って自分たちの仕事について考えたことなどなかったのです。
けれども、そのお父さんから御礼のメールを頂いたとき、我々みたいな小さな会社でも誰かの役に立つことができる喜んでもらうこともできる僕らの仕事って何て素晴らしい仕事なのだと、心底思えたのです。社員たちにもそのメールを回覧しましたが、彼らも仕事に対する喜びや誇りを感じてくれたようです。」

「指示されたことをやる」お金はもらえても、それだけでは充足できない。答えのない無理難題や営業上のリスクを含めても、直接クライアントと接することで、求めているコトやその想いに触れることができる。そして創意工夫に思考が動く。そのことに組織発展の可能性を重ねた浜野製作所は、脱下請に舵を切ることにしたのです。

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