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2018年05月16日

志を通じた新しいつながりへの挑戦 ~レストラン「ル・クロ」②

お箸で食べられるフレンチのパイオニア「ル・クロ」。オーナーの黒岩功氏は志で、逆境をプラスに変えていきました。しかし黒岩氏だけでは、その後の店舗展開はできません。戦力になるスタッフが不可欠です。
華やかさが目を惹き易い一方で、離職率も高いのが飲食業界。黒岩氏は、そんな飲食業に飛び込んできたスタッフをどう戦力化していったのでしょうか。今回も「人に喜ばれる仕事をしよう」(坂本光司著:WAVE出版)から一部引用・要約して紹介します。

「働き方や、その人の“あり方”が間違っていなかったら、技能はちゃんと教えられます。その人の“伸びしろ”をどこまで伸ばせるか、それを信じられるか、が私のモチベーションの源泉です。飲食業は言ってみれば“誰もが就職、参入できる業界”。入るときは何もできなくてもいい、但し入ってからが勝負なんです。『変わりたい』『成長したい』という純粋な気持ちがある人だったら、おこがましい言い方だが、助けてあげたいんです。私が出来ることをしてあげたいんです」(黒岩氏)

黒岩氏が、ここまでスタッフ目線に立って物事を考えられる理由は、前回紹介した自身の「落ちこぼれ経験」が要因。本人によれば、常に人からどう思われているのか?を気にし続けている、“臆病な人間”として大きくなってきました。それが武器に変わります。

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転機はスイスで働いたレストランのシェフ、フーバー氏との出会い。
そこは世界中からスタッフが集まるレストラン。言葉も考え方も宗教観も違うスタッフをまとめるフーバー氏から、料理もさることながら、個性的なスタッフの指導方法を学んだそうです。彼のやっていたのが「お伺い」でした。フーバー氏はまず厨房に入るとスタッフ全員と握手を交わし笑顔を誘い出します。そしてフランクな会話から、その日の相手の状況や困っていること、求めていることなどを引き出していました。

それを見た黒岩氏は、自分の「人の目を気にする」というコンプレックスを「相手のことを観察する」という武器に切り替えたのです。
そこから相手の情報を引き出すことで、一歩踏み込んだコミュニケーションを生み出し、「スタッフの立場を考える支援環境」を作ることに集約し、チーム力UPにつなげていきました。

さらにル・クロには、「出戻り社員歓迎」という方針があります。実際に社員の3割が「出戻り社員」です。この経営方針は彼の人柄を如実に表しています。「一度やめた人間に、二度と敷居をまたがせない」という経営者が多い中、黒岩氏は彼らを祝福して送り出すのです。そして「何かあったらいつでも戻ってこい」と温かい言葉をかけます。

「戻ってくるには大変な覚悟が必要なはず。それでも戻ってきてくれるスタッフは、“誰よりも意思が強い人間”だと言えるのではないでしょうか。一度そんなふうに覚悟を決めた人間は、若いスタッフにとっても、良い影響を与えてくれるのです」(黒岩氏)

「飲食業界は、腰掛気分で、ちょっとしたら辞めていく人も珍しくない業界。ですが私は真摯に向き合って、ちゃんとやれる人が来てくれたら、その人にお店をまかせたいのです。すると、次々とそういうメンバーが出てくるから不思議なんです。」(黒岩氏)

ル・クロの特徴は
・自分の都合でル・クロを辞める社員に対して  ← 出戻り歓迎で拠り所になる
・料理も人としても力量が上がった社員に対して ← 独立を支援する
自分の店だけでなく、飲食業界全体の視点で人材育成することにつながっている。これは「料理で人を喜ばせたい」という志の対象が、母親から出発し、次に食べる人、さらに料理を提供する側まで広がっていることを意味している。志が係る人を通して循環し、人と人とのつながりを形成している。黒岩氏が意図していたかは不明だが、こうしたつながりは血縁、地縁とは異なる、現代のつながり形成の挑戦だといえます。

 

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