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2019年01月01日

板室温泉大黒屋① ~仕事は辛いもの?いえいえ楽しくできる術があります~

★☆★☆★☆★☆★☆★  謹 賀 新 年 ★☆★☆★☆★☆★☆★

写真はコチラからお借りしました

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昨年末には「暗黒のクリスマス」と呼ばれる株価大暴落がありました。今年もアメリカ・中国の関係が予断を許さない状況が続きそうな気配です。常に状況を把握し臨機応変に「どうする?」を追求すべき事が益々多くなりそうです。
今年も皆さんに参考となる事例を紹介し、一緒に明るく追求していきたいと考えております。

さて正月ということで、今回は湯けむり香る栃木県の温泉旅館のお話。
東北新幹線・那須塩原駅から車で30分ほど、那珂川沿いに旅館が立ち並ぶ板室温泉があります。その温泉街の中に室町時代1551年に創業した「大黒屋」という県最古の老舗企業と言われる観光ホテルがあります。
その老舗旅館の庭には、今では現代アートのオブジェが点在し、広いサロンではアーティストの作品展が開かれ、廊下にも室内にも至る所に芸術作品が飾られています。これらの現代アートの数々が、周囲の自然や雰囲気に溶け込み、板室温泉大黒屋の“空気感”を作っているのです。

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館内にはこんなプレートが掲げられています。

「保養とアート」の宿でございます。
対象となるお客様 : 健康を目的にされる方  「文化」「知」「美」に興味のある方

なんとここは客を選ぶ旅館なのです。ここには宴会場もカラオケボックスもなく、それでもリピーター率は年平均73%という高い数字。老舗旅館が現代アートを取り込むというまさに「創造的破壊」を行ったのは、一体なぜなんでしょうか?今回は「ちっちゃいけど世界一誇りにしたい会社」(坂本光司著:ダイヤモンド社)からの内容を要約して紹介します。

この改革を断行した室井俊二社長は、第16代当主にあたります。1946年に生まれ、長男だったため早くから老舗温泉旅館を継ぐべく育ったそうです。
地元の高校から早稲田大学に入学。卒業後に別の温泉旅館で1年間修行し、戻ってきたときに「旅館で仕事をする前に、半年間遊ばせてくれ」と猶予をもらいヨーロッパに渡ります。

「両親を見ていて“自分の体であって、自分の体ではない”ということを肌で感じていたんだろうと思います。人の命を預かる職業で、お客様が体調を崩されたとなれば、夜中でも駆け付けなければならない。そこにこの商売の辛さがあるということは分かっていた。どこかで“嫌だな”という気持ちと、“俺は跡を継がなければならない”という二つの心の葛藤があったのだと思う」

その葛藤は、板室温泉大黒屋で専務として働き始めてからもずっと消えませんでした。
そんなある日に、室井さんは宿泊客にこう言われました。

「あなたはとてもよくやっている。でも楽しそうじゃないね」

この言葉が室井さんの胸に突き刺さる。仕事は辛いことの方が多いのが当たり前じゃないのか・・・。
「楽しく働いている人なんてこの世にいるのでしょうか?」
その宿泊客はこう答えました。
「いるよ。アーティストは貧乏で水を飲みながらでも楽しく仕事をしている」
意味の分からなかった室井さんは「その人たちには何処に行けば会えますか?」
「東京銀座に行けばアーティストがゴロゴロいる」と話してくれました。
これがきっかけで、室井さんは銀座の画廊通いを開始。最初は全く理解できませんでしたが、1年半ほどすると「アーティストたちの考え方」が何となくわかってきたそうです。しかし実際に作品を買って旅館に飾るとなぜか調和しません。作品が「場に左右される」からです。
その後室井さんは、旅館に合う村井正誠というアーティストに出会い、作品を30点ほど購入します。そして館内に飾って、現代アートが経営に役立つことがわかったそうです。

「例えば端の部屋は玄関から遠いので、普通お客様には喜ばれません。端と言うだけで拒否反応がある。ところが廊下に村井さんの作品をかけておくと、拒否反応が出ない。絵を見ながらゆっくり歩いて楽しんでいかれるので、端部屋の模様替えをするより安上がりだ」と思ったそうです。

400年以上の老舗旅館に、それまでと全く異質な現代アートを取り入れることは、その歴史を引っくり返すようなもの。それでも働いている自分たちも楽しくなることで、お客さんもさらに楽しくなる、気持ちが上向きになる、そのことに賭けたのです。「仕事は辛いもの」と言い聞かせても押さえきれない「楽しみたい、充足したい」という欠乏が徐々に顕在化していく時代。いち早くそっちへ舵を切り追求に入った室井社長の大英断でした。楽しく仕事をするには、楽しくしている人と一緒にすることが最も手っ取り早いのです。 とはいえ当然摩擦もおきます。次回はそのあたりを。

 

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