2019年09月05日
イケア ~顧客を育てることがマーケティング・マネジメント
今回は「IKEA」です。今回も「戦略の教室」(鈴木博毅著:ダイヤモンド社)を参考にして展開します。
「IKEA」は、おしゃれな北欧デザインの家具を低価格で提供する、スウェーデン発祥の世界最大の家具販売店。売上高4兆円、純利益4000憶円、従業員15万人以上に及ぶ巨大企業は、1943年に17歳のイングヴァル・カンプラッドが創業した安売り雑貨店から始まりました。
1947年に地元家具店と契約して格安の家具販売に乗り出すとこれがヒットし、順調に売上を伸ばしていきます。しかし次第に競合との価格競争に巻き込まれ、さらに仕入先である家具メーカーとの取引停止を食らい、窮地に追い込まれます。
そこでカンプラッドは、業界が見向きもしなかった若い家族をターゲットにします。
そして「低価格で良質の」家具を提供するために、今のイケアの原点である5つのコスト削減の方法を採用します。
5つのコスト削減方法
① 大量購入・注文によるディスカウントを達成する
② 家具を組立式にして輸送費を安く済ます
③ 顧客はショールームで家具を見て倉庫から自分で運び出し、車で持ち帰る
④ 顧客は自分で家具を組み立てる
⑤ 大量販売を徹底し、低いマージンに抑える
DIYは第二次世界大戦後のロンドンで、「破壊された街を自分たちで復興させよう」と始めた動きですが、それ以前からヨーロッパでは住居を自前でケアしていくことは、文化の一つでした。なので家具を自分で組み立てることに特に抵抗がなかったことも、イケア方式が浸透する要因になっているのでしょう。★マーケティング戦略の勝利といえます。
アメリカの経営学者でマーケティングの世界的権威であるフィリップ・コトラーは、マーケティングをマネジメントするための5つのステップを提示しています。
① 調査(research)
市場機会の調査。不満や問題を検出することや、よい良い製品やサービスを想定する。
例:イケア 若い家族は高価な家具は買えない、状況を把握。
② STP
同じニーズを持つ消費者の区分(segmentation)を明確にして、自社が上手く満足させられるところを対象化(targeting)する。その上で自社のオファーをより高く評価してもらう地位(positioning)を確保する。
例:イケア 高価な家具を買う余裕がない若い家族を対象に、低価格でおしゃれな北欧デザインの家具を提示する。
③ マーケティング・ミックス(4つのP)
顧客が製品のポジショニングを理解できるように、製品(product)、価格(price)、流通チャンネル(place)、プロモーション(promotion)の4つの要素を設計する。
例:イケア 対象顧客に適した価格設定と、そのために必要な「自分で運び出して、自分で組み立てる」仕組みづくりとそのアピール。
④ 実施(implementation)
マーケティング・ミックスで設計された製品・価格・流通・プロモーションを実施する段階。設計意図が素晴らしくとも実現されなければ意味はなく、課題を乗り越えるには部門間の連携が強く求められる。
例:イケア 低価格を実現するための工夫として「フラットパック」方式を採用。平らな段ボールにパーツをコンパクトに収納することで、運送上の積載効率を高め、物流コストを圧縮。このことで配送時に商品を傷付ける危険性も軽減。一方で家具のデザイナーはフラットパックによる梱包を前提に、設計している。
⑤ 管理(control)
実施された結果としての市場の反応に耳を傾け、評価することで成果を向上させる改善を行う。目的地と現在の位置を常に確認し、マーケティング計画を正しく機能させる。
このマネジメント・プロセスは、5つのステップの頭文字を取り
「R → STP → MM → I → C」プロセスと呼ばれています。やはりポイントは、時代の意識潮流を捉える「①調査」。ここがズレているとその後の検討は徒労に終わります。
そしてフィリップ・コトラー教授は、現代のマーケティングについて次のように定義しています。
「マーケティングとは、利益に結び付く顧客を見出し、維持し、育てる科学であり、技能である」
つまりマーケティングとは、宝の山を発見することではなく、小さな芽を見つけ出し、それを大きく実を結ぶように育てていくことです。
日本ではかつては日曜大工といえば、お父さんが犬小屋を作る程度でしたが、今では若い女子にもDIYブームが浸透しています。これにより自分で家具作りが楽しい→イケアの日本での売上UPにつながっているのです。
- posted by komasagg at : 21:22 | コメント (0件) | トラックバック (0)
コメントする