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2019年12月04日

ビッグデータによる保険の可能性

年末調整の時期ですが、みなさんは生命保険に加入していますか? 生命保険の起源は、中世ヨーロッパの都市で組織された同業者組合「ギルド」だと言われています。仲間同士で仕事で困ったときの資金援助や、病気やケガで働けなくなった時、死亡したときの遺族への生活援助などのためだそうです。

保険の基本機能は、今でもリスクに対する相互扶助。つまり加入者全体で事故や病気に合った人の生活の一部を支えること。しかし保険があっても病気や事故などの社会のリスクそのものは変化しません。だが果たしてそれでいいのだろうか、と疑問を提起したのがアニコムホールディングスの小森伸昭社長。

本当は、保険金を受け取って幸せな人はいない。保険金を受け取るということは「病気をした」「事故が起きた」など何らかの悲しい出来事が身の回りに起きているからだ。保険会社は自己の類型化と分析をやっているのだから、二度と同じ悲しみを繰り返さないように社会に情報を提供することで、がんが減ったとか、事故が減ったとかリスク自体を減らし、社会目標に能動的に貢献できるはずだ。(小森社長)

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小森社長は事故や病気を予防することを「涙を減らす」こととし、それをミッションに掲げた新たな保険会社「アニコム損保」を立ち上げました。その第一歩として小森社長はペット保険という分野を選び、そこで動物の疾病に関するビッグデータを分析し、契約者へone to oneで情報提供するという予防型保険サービスを実践しています。
ペット分野を選んだのは、人間ほどプライバシーを気にすることなく大量のデータが収集できるため。何を食べ、体重はどのくらいか、どんな血統か、どんな病歴があるか、どんな性格か、動物のこうした情報と、アニコムのペット保険の年間200万件に及ぶ保険金支払いデータを上手く活かせれば、予防型のアクティブな保険サービスができるのです。

写真はコチラからお借りしました

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実際小森社長は、社内にペットの疾患関連遺伝子研究所を設置しました。ゲノムの99%はどの犬も共通なので残りの1%を調べれば、その犬がどんな病気にかかりやすいかが分かるのです。ところが遺伝病の遺伝子を持っているのに発症しない個体がおり、遺伝子だけでは説明しきれません。

そこで小森社長は、遺伝子への刺激の与え方が影響していると考え、人の医療分野でも疾患との関連が明らかになっている腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)に着目。腸内細菌は、犬と猫で異なり、さらに犬種でも異なることが分かり、腸内細菌を活性化させるための食事や生活環境、運動などのサポートを行うことにしたのです。

さらにアニコムは加入者から収集したデータから、日本初のペットの疾病に関する統計「家庭どうぶつ白書」も作成し、年1回刊行しています。その分析によると、この数十年でペットの寿命は各段に伸びているという。猫だと20年、小型犬だと15年というのも珍しくない。昔は外飼いが多く、みそ汁を掛けたご飯を食べ、蚊に刺されることも多かったが、今は家の中で飼うのが一般的で、快適な室温下での生活、総合栄養食、予防接種などによって、ペットは長生きするようになったのです。他方で、人間と同じように、認知症、糖尿病、がん、アトピーなどが増加しており、しかも人より早いスピードで進行するそうです。

小森社長が取り組んでいる大量のデータ分析によって、世の中の病気や事故の予防に貢献する「新しい保険会社」というビジョンは、果たしてペット保険だけに止まるものでしょうか。生命の構造解明そのものは時間がかkりそうですが、データによる傾向分析を基にしたアドバイスにより、怪我をしなくなった、健康になった、キレイになった、長生きするようになった、そんな保険が出現したら皆驚くでしょう。リスク因子を減らし、涙を減らし、笑顔を支える保険。小森社長のビジョンは、広く保険業界の価値創造の在り方を変えていく可能性もあるのです。

 

 

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