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2021年06月03日

皮膚の機能を復活させて原始人類は生き延びた

人の皮膚は変わっていると思いませんか?
例えば哺乳類でもオラウータンやライオン、パンダは全身にみっしりと毛が生えています。ゾウやサイ、カバは毛が少ないが、皮膚は数センチの厚みがあり、体をガードしています。
ワニやトカゲ、ヘビなどの爬虫類はウロコで覆われており、ペンギンやフラミンゴなどの鳥類は、全身が羽毛に覆われて、飛び出た脚はウロコになっています。

人間の皮膚は、①体毛は薄く皮膚の表面は外部環境に直接さらされていること、②そしてその皮膚は極めて薄いこと、が大きな特徴。
人類が体毛を失ったのは120万年前と言われていますが、本能で生きられないほど弱い動物なのに、一体なぜ皮膚までこんな弱いのだろうか?

外部世界に皮膚を直接接触させている人間にとって、皮膚は世界と自身の境界です。その皮膚の最表層の表皮は0.2~0.06ミリの厚さしかなく、これが命を護るバリア機能を担っている。表皮はケラチノサイトという細胞で構築され、常に更新されていて、表皮の深い場所で生まれたケラチノサイトは、次第に形を変えながら皮膚の表面に向かい、やがて死に、平たくなる。このケラチノサイトとその隙間を埋める脂質で構築された角層(角質層)という0.01ミリほどの膜ができます。この角層のおかげで、私達は体内の水を流出させずに生きていけるのです。

しかし皮膚は単なる境界ではない。皮膚は自律機能を持っています。

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皮膚に何度かセロハンテープを貼り付けて剥がしたり、アセトンのような溶剤で皮膚表面を何度もぬぐうと皮膚のバリア機能は壊れてしまいます。そうなると角層を通って蒸発する水分蒸散量が劇的に増加します。その水分蒸散量の増加を測定していくと、最初の数時間で水分蒸散量は半分くらいになり、それ以降も少しずつ水分蒸散量は減り、約72時間で元に戻る。ここで角質バリア機能は完全に回復したことになります。
ところがバリア機能を壊した後で、水分を透さないプラスティック膜などのニセモノのバリア機能で覆うと、バリアが壊されたと気付かず回復しようとしません。他方、水蒸気を通すゴアテックスのような素材で覆うと、バリア機能は回復します。
つまり脳は視覚を通して皮膚の「損傷」を認識しているが、実際には表皮自身が水分蒸散量を観察して、異常ならば修復に向かうシステムなのです。表皮は自律機能も持っている。

画像はコチラからお借りしました

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さらにケラチノサイトは全身に1000億個以上あり、夫々がTRPと呼ばれるセンサー機能を持っています。以前の記事「考える身体のつくり方2~皮膚には考える機能がある」にあるように、TRPには、熱や光、色、音、電気、磁気、温度、大気圧、空気中の酸素濃度など、物理的な現象全てを感知する能力があり、まさに最先端で外部環境を捉えるセンサーです。
そして皮膚は五感よりも幅広い刺激をキャッチすることができるのです。

その一例として皮膚の聴覚機能を紹介します。ジャワ島でよく使われる打楽器ガムランの音には、耳では聴こえない超音波(2万Hz以上の周波数)が含まれています。そのためガムラン奏者はしばしばトランス状態になる。そこで首から下を防音材で覆ってみると、その効果は消失。つまり身体の表面に超音波を感知するシステムが存在すると考えられています。

これは不思議なことではありません。受精卵が人間の形になる最初の段階で、外肺葉中胚葉内胚葉と呼ばれる三つの部分に分かれますが、そのうちの外肺葉表皮になり、それがくぼんで溝を作り脊椎になり、その末端がふくれてになるからです。さらに眼や耳、鼻や舌のような感覚器も外肺葉からできる。 そう考えると、元々、表皮に様々な感覚器、情報処理システムがあり、それから脳や神経系、感覚器が作られるとも言えます。

実際、初期の多細胞生物はクラゲのような動物と考えられ、彼らの「皮膚」は外部環境に直接接していて、海水の温度、流れ、pHのような因子を感知するシステムが体表にあり、中枢を持たない神経網も全身に広がっています。人間の大脳にある学習や記憶を担う受容体も彼らは持っている。つまり多くの感覚器や情報処理システムの基礎は、元々体表にあったのです。
しかしその後の進化で、脊椎動物では、魚類が全身をウロコで覆った。さらに陸棲動物になると、皮膚表面をウロコや羽毛、体毛で覆うようになり、感覚器は目、耳、鼻、舌に集約されていきます。そして同時に体表にあった感覚器はその役目を失った。ただそれらの感覚器は存在し続けたのです。

本能で生きることが出来ないカタワのサル≒人類にとって、外圧は獰猛な動物だけでなく、自然環境そのものだった。その中で生き抜くために、全身のあらゆる機能を活性化させたと考えられます。その結果、役割を失っていた体表の感覚器を再び作動させたのでしょう。そしてより効率的に機能させるために体毛を薄くし、外部刺激をキャッチしやすいように皮膚を薄くしていると考えられます。自然の小さな変化も逃さないために、全感覚機能をフル回転させ、前兆となる電磁波や微かな温度変化、超音波などを表皮で感じ、脊髄反射で即行動に移したでしょう。仮説ではありますが、原始人類が万物の背後に見た精霊は、表皮が捉えた刺激を脳が受け取り情報処理したものかもしれない。人類の進化において常に「脳」がクローズアップされるが、感覚機能としての皮膚もまた同様に進化の一翼を担っている可能性があると考えられます。

※参考:「サバイバルする皮膚」(傳田光洋著:河出新書)

 

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