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2021年08月11日

光合成をやめた植物

ひと昔流行った「草食男子」というと大人しく頑張らない男の子を指していますが、実際の植物はガツガツ攻めているものです。今回はその植物にスポットを当ててみました。

植物の特徴は何と言っても「光合成」をすること。光合成は、太陽光のエネルギーを生物界に取り込み、地球上の生命の歴史を大きく変えたと言われています。

ちなみに光合成とは「光の持つ物理的なエネルギーを、糖、デンプンなどの有機物の化学的なエネルギーとして固定すること」。

このように自らエネルギーを作り出す生物を独立栄養生物」と呼ぶそうです。そしてその独立栄養生物を直接or間接的に摂取するものを従属栄養生物」と呼び、私たち人間もここに含まれます。子供の頃、食糧問題等がニュースなどで取り沙汰されると「人間も光合成ができたら良いのになあ」と羨ましく思っていました。

ところが上には上がいて、光合成もするし、他の生物を食べたり、養分を吸収したりする二刀流植物も存在します。このような生き物は「混合(部分的従属)栄養生物」に分類されますが、パーフェクト・ビースト(完全な野獣)」と呼ぶ研究者もいるそうです。

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このパーフェクト・ビーストにとって環境の厳しい外洋こそ本領発揮できる場所。熱帯域の陸から離れた海では、窒素やリン、鉄といった光合成に必要な栄養素が不足がちで、光合成だけの真核生物にとっては生きにくい。しかしパーフェクト・ビーストは、周りにいる真核生物や古細菌といった原核生物を食べるので、窒素やリンは勿論、糖やタンパク質なども得ることができる。そして光合成をしてさらに増えることができるのです。

しかし完全に見える生き方を手に入れながら、逆に光合成を手放す植物もいます。
例えばハマウツボ。他の植物と同じく根を張り、土から養分を吸い取りますが、ハマウツボの根は、光合成する植物の根から出されるある種の物質を感知すると、スルスルと近づいて文字通り合体します。そして自ら光合成することをやめ、必要な養分を光合成する植物から根を通じて吸い出して生きていくのです。光合成では、太陽光と水、ミネラル等のバランスが悪いと枯死する危険性を孕むため、より楽に養分を取れる仕組みにシフトしていくのでしょう。

ラン科のシュラン属には、植物ではなく菌に従属する菌従属栄養生物がいます。
多くの光合成植物の根っこには共生する菌根菌がいます。植物は光合成で得られた有機炭素を菌根菌に渡す代わりに、菌根菌から光合成に必要なリンや窒素などの栄養分をもらっています。
シュラン絵②
一方、シュラン属マヤランサガミランは、共生する外生菌根菌から炭素までもらっています。ランの進化の流れと共生パートナーのシフトを見ると、

ヘツカランは樹上で暮らす着生の独立栄養植物で腐生菌と共生
→そこから地面に下りて混合栄養植物のシュンランナギランが派生し
 腐生菌菌根菌の2種類との共生
→そしてそのナギランから菌従属栄養植物であるマヤランサガミランの2種が出現し
 菌根菌と共生へとシフトしていく

植物にとって最大の武器の「光合成」を捨てたメリットは何でしょうか?

他の独立栄養植物という競争相手がいない暗い林床でも生存できること。新天地の開拓です。しかし寄生できる菌がいれば全てOKではありません。暗い林床には一般的な送粉昆虫であるハナバチはいない。したがって自動自家受粉に自らの機能を切替えることが不可欠です。実際、ラン科のシュラン属で見ると、ヘツカランシュランはハナバチとミツバチによって受粉する他家受粉ですが、ナギランマヤランサガミラン自動自家受粉に切替えています。
又、種子の散布については、

2017年神戸大学理学研究科の研究で、
「光合成をやめた植物の生育環境は、日光の届かない暗くて風通しの悪い林床であり、風による種子散布は困難で、種子の運び手はカマドウマ(バッタの仲間)だった」と発表しました。

つまりマヤランやサガミランは、自己改造し、共生する菌も替え、さらに新たな他生物との関係も形成して、太陽光の届かない地にまで生息域を拡大したのです。

翻って見ると、「独立栄養生物」という名前ですが、植物は光合成に必要な水や養分は土から吸い上げていて「独立」ではなく「共生」しています。「完全な野獣」と名付けても完全無欠ではない。これらはあくまで人間がその一面を捉えて名付けたにすぎない。

大人しく見える植物の世界でも、内実は激しい縄張り闘争をやり続けているのです。
そしてその勝ち筋は、外圧適応に向けた自己研鑽と、不足部分を補える異種生物との共生関係の形成。これは人類の共認闘争とも通じるポイントです。

 

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