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2021年11月16日

【駆動物質とは何か?】駆動物質は、脳の広い範囲を同時に活性化する

外識情報を受け取った脳幹から駆動物質が送り出され、それらを受け取った大脳中枢系(大脳辺縁系)で集約し、反復機能(海馬)と突き合わせて価値判断を下し、駆動司令を発します。この駆動司令の起点となる駆動物質であるドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、アドレナリンについて、その機能や主な神経核と神経経路について見てきます。

■神経核と駆動物質
脳幹部には、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、アドレナリンなどのモノアミン類の駆動物質をつくり、投射する神経細胞(ニューロン)が集まっている。この神経細胞群は大脳皮質の非常に広い範囲に投射し、脳の広範囲を同時に活性化するため広範囲調整系とも呼ばれる。

(神経核と駆動物質)(画像は、書籍『脳のしくみ』より)

・A1~A7 神経:ノルアドレナリンを分泌
・A8~A16神経:ドーパミンを分泌

・B1~B7 神経:セロトニンを分布

・C1~C3 神経:アドレナリンを分泌

(駆動物質の生合成)
・L-チロシン→ドーパミンノルアドレナリンアドレナリン
アミノ酸(必須アミノ酸ではない)のひとつであるL-チロシンからチロシン水酸化酵素によってレボトパ(L-Dopa)、ドーパ脱炭酸酵素によってドーパミンに合成される。次に、ドーパミンはドパミンβ水酸化酵素(β酸化)の働きで、ノルアドレナリンに合成される。さらに、ノルアドレナリンはN-メチルトランスフェラーゼによりメチル化されてアドレナリンへ合成される。

・トリプトファン→セロトニン
生体内のセロトニンは、トリプトファンからトリプトファン水酸化酵素、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素による二段階の酵素反応によって合成される。

■2つの伝達経路
1)神経細胞(ニューロン)による伝達
神経細胞(調節系ニューロン)は、駆動物質の産生と放出を担い、脳の中心部である脳幹の神経核から、脳全体に軸索線維を伸ばし、脳の広範囲に情報を送る(投射)。軸索は軸鞘を持たない「無髄神経繊維」で、神経線維の末端のシナプスにでは、神経細胞1個が約10万個以上のシナプスと接触していて、脳の広い領域を同時に活性化する。

(画像はコチラから)

(補足)有髄神経線維と無髄神経線維
神経細胞(ニューロン)の軸索のことを神経線維とも呼び。神経線維には髄鞘を持つ有髄神経線維と持たない無髄神経線維がある。中枢神経系では髄鞘はグリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイトからなる。髄鞘は脂質の含有量が多く、電気を通さない絶縁体の役目を果たしている。無髄神経線維では興奮を伝導する局所電流は近距離に起こるのに対し、有髄神経線維では髄鞘の部分を飛び越えてランビエ絞輪の部位に活動電位を起こすので伝導速度が速い。これを跳躍伝導という。哺乳類の場合,太さ0.4~1.2 μmの無髄繊維の伝導速度は0.5~2 m/sec,太さ2~20 μmの有髄線維は12~120 m/sec程度。

2)細胞外スペース(脳のすきま)を介した伝達 (参考リンク
神経細胞は一対一のシナプス結合を形成せず、不特定多数の細胞に対して信号を伝える拡散性伝達という形式をとるものがある。駆動物質は、調節系ニューロンの軸索線維上にあるこぶ状の膨らみの中に蓄えられていて、シナプスを形成せず、細胞外スペースを満たす細胞間質液に直接拡散することで、シナプス間隙に限定されない、持続時間の長い、ゆっくりとした調節的な伝達をおこなう。

ニューロンの電気的な活動は、コンピュータのようなデジタル信号処理と捉えることができますが、広範囲拡散系は、ゆっくりとしたアナログ的な伝達です。この点において、脳はコンピュータとは本質的に異なります。おそらく、このアナログ伝達こそが、生き物らしさや欠乏や意欲などの形成回路ではないかと思います。

次回、主な駆動物質と伝達経路について、もう少し詳しく見ていきます。

 

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