2022年02月17日
ロシアがウクライナ侵攻すると世界経済に大打撃を与える。焦点は、ウクライナのNATO加盟。
◆ウクライナ東部紛争の背景
1991年のソ連崩壊までウクライナもロシアもソ連の一部であった。独立後のウクライナは、ウクライナ語を母語とするウクライナ系住民が多い西部地域と、ロシア語を母語とするロシア系住民が多い東部地域から成る。
独立後から両者は共存していたが、(米英の工作により)2014年にウクライナ系の右派勢力が反政府運動(マイダン革命)を起こし、ロシア敵視の右派政権になった。ウクライナ右派政権が東部地域の自治を剥奪したことで、政府軍と東部の民兵団の間で内戦になり、現在まで紛争が続いている。
欧米(NATO)からの防波堤としてだけでなく、歴史的な経緯からも、ロシア国民からの(同胞を守る)信任を得るうえでも、プーチン大統領はウクライナ東部地域の紛争を看過できない。
◆米国の覇権低下とロシアの覇権拡大
昨年8月の米軍アフガン撤退などを機にロシア以南の中央アジア、そして中東のイラン・シリア・サウジアラビア・UAE・エジプトで、米国の覇権崩壊が起こり、ロシアの影響力が強くなっている。
そして、ロシアと中国との関係は益々強化されている。
ロシアは石油ガスを欧州に売って国富としてきたが、昨年の中露の貿易総額は前年比35%増加し、中国との関係だけでロシア経済を回していけるまでになっている。
習近平国家主席とプーチン大統領は過去に37回も会談する蜜月関係だが、北京オリンピック開会式に先駆けた釣魚台迎賓館での38回目となる首脳会談では、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟に反対で一致し、アメリカに対する共闘姿勢を共同声明発表した。
また会談で、プーチン大統領は、年間で100億立方メートルの天然ガスを極東から中国に供給すると約束した。
ロシアがウクライナに侵攻してアメリカなどから経済制裁を受けても、中国にガスを売れば問題ないと世界に示した。
◆ロシアはウクライナ侵攻を実行するか?
米政界ではウクライナをNATOに入れる構想が出され続け、NATOに入ったウクライナの右派政権がロシアに戦争を仕掛け、NATOの5条に沿って米国をロシアと戦争させる流れが作られている。一方、欧米に対する自国の優位を感じているロシアの議会では、ウクライナ東部のロシア系住民の自治政府が住民投票によってウクライナからの分離独立を宣言したら、ロシアがそれを支持する決議案が検討され始めている。
ロシアのウクライナ東部地域の併合とロシア軍の侵攻で、欧米から強い経済制裁を受けても、ロシアは中国がいるので困らない。しかし、ロシアからドイツなどへの石油ガスの流れが止まると、ドイツなど欧州は困る。
プーチン大統領は、2月7日のフランスのマクロン大統領との会談に続き、2月15日にはドイツのショルツ首相ともモスクワで会談する。
ドイツは、天然ガスをパイプラインでロシアに依存していて、関係が悪化しガスの供給が止まれば、ドイツ経済は大打撃を被ることになる。
プーチン大統領は、この会談を通じ、ウクライナ侵攻の正当性を主張し、NATOの東方拡大阻止へ動こうとしている。
★ロシアのウクライナ侵攻の焦点は、ウクライナのNATO加盟
ウクライナがNATOに加盟すると、ロシアのウクライナ侵攻は(米英日の歪曲のプロパガンダもあり)極めて危険な米ロ戦争に発展する可能性がある。
そのため、ウクライナがNATOに加盟する前に、ロシアがウクライナ東部を分離・併合し、ロシア軍が侵攻してウクライナ軍を敗走させる展開の可能性は十分にある。
◆ロシアがウクライナ侵攻すると、世界経済に大打撃を与える。日本経済の被害も甚大
ロシアがウクライナ侵攻を実行すると、天然ガスの価格は急騰する。天然ガスの価格上昇は、代替需要の高まりから原油価格など他のエネルギー価格も上昇し、世界経済への打撃は増幅される。
そうなれば、化石燃料依存度が85%(このうち液化天然ガス22%)を占める日本は、電気・ガス料金、ガソリン代がさらに上昇し物価高を招く。また、アメリカがロシアの金融網を遮断すれば、対ロ貿易を手がける企業も打撃を受ける。
※参照:
「ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも」2022.1.24 田中 宇
「中国とロシアの「共闘」が北京五輪の裏で進む、ウクライナ侵攻なら日本経済に大打撃も」2022.2.8 DIAMOND online
- posted by asaoka at : 21:26 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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