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2022年08月26日

「公立でも私立でもない『企業立』学校」 経産省が支援の背景

わが国の公教育とその「出口」である雇用が転換点を迎えている。

ちなみに公教育という言葉は誤解されやすいが「公立の教育」という意味ではなく、社会が制度して認めている公の教育という意味。だから私立学校の教育も「公教育」に含まれる。

また、雇用は「仕事」と言い換えた方が理解しやすい。だからこの後は「仕事」と言換えるよう。

 

閑話休題。

 

教育と仕事。一見、教育が終わると(多くの人は高校、専門学校、大学を終了して)、次は社会人、要するに会社勤めなので、教育と仕事はシューカツ時期という実に薄い、薄い期間でしかつながっていない。だから、教育側も送り出したら終わりで、仕事側つまり企業もある程度学歴で判断して、ハイおしまい、というところがあった。

 

しかし、20年くらい前からこの「教育と仕事」のシステムがうまくいかなくなってきた。それは仕事側から起きてきて、採用したはいいが、どうも以前と比べて社会人の現場で働けるレベルに達していない学生がたくさん入社してくるようになった。

具体的には、今の企業では、頭に過去の知識を詰め込んだ人では通用しないレベルでの競争になっている。なによりも仕事に対して自考力と追求力が必要とされるのに、そこがだめな人が多くなっているという問題だ。

もちろん、新人時代はいきなり通用するレベルではないことが確かだが、それにしても何年経っても期待通りの育ち方をしてくれない。そこで企業=仕事側が「教育側は何やってんだ?」という問いかけ(これは教育側への要望でもある)するようになった。経団連が教育改革を提言したりしているのがそうだ。

さて、今回の本題というか焦点はここから。

仕事側からの声が上がっていたことに気付いていた経産省も動き出した。今年5月に同省主催の「未来人材ビジョン」で、教育現場に仕事側(つまり企業)が介入していくことを積極的に支援していくことを明らかにしたのだ。

これだけ知ると、「教育は企業戦士を養成するものではない!」と怒り出す人もいるだろう。だが、よく考えてほしい。大部分の若者は、学校を卒業したら会社に入って働くのだ。その若者たちのカウンターとなる企業が「使えないからどうしよう」と頭を抱えている。それは結果的に、その若者にとって不幸な結果に終わることになる。もっといえば、仕事側は別に戦士になってほしいわけでなく、若い社員にちゃんと仕事をしてほしいと考えているだけである。それが今はかなわないと言っているのである。

 

なぜ仕事側が教育側に介入してくるのか。それは現行の教育で「働くこと」を教えられていないからだ。もっといえば「お金を稼ぐにはどうしたらいいか」がすっぽりと抜け落ちている。それは実は”大きな視点”でいえば「わざと教えていない」ということだが、それまで話を拡張すると、テーマは混乱するので今回は差し控える(その「わざと教えていない」の答えなり、または解答らしき視点なりを知りたい人は最近出た本「中学生のためのテストの段取り講座」(坂口恭平著・晶文社)をお勧めする。「中学生の」と書いているが社会人が仕事をする上でめちゃくちゃ役に立つので大人こそ読んでほしい一冊。ただし、これを読めば教育改革に対する企業側の弱点も分かってしまうので、企業の中枢の人、人事部や経営企画関係にいる人は心して読まなければならない。単に仕事側が「学校よ、ちゃんとやれ」と言って介入するだけではすまないのだ。仕事側が教育側の改革を理想的な形で進めるほど、その成果の余波が自分のところに負になって返ってくる可能性が高い。

 

さて、教育側と仕事側、うまい関係が築けて行けるかどうか。いや、築いていかないと日本社会は困ったことになるから、なんとかよい形の成果を出すことを願う。

参考:国が企業立学校支援を開始(未来人材ビジョン)

 

 

 

 

 

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