2011年11月24日
全国素敵企業訪問記 わらび座 ~100%共同出資の企業だからこそ、本気で伝えられるものがある!~
以前、当ブログにて紹介させて頂いた、老舗の劇団わらび座さん。
企業が「地域密着」で成功するには? ~劇団わらび座の60年にわたる活動~
長い歴史を持ち、時代の変化に合わせて柔軟に進化を続けてこられた共同体なだけに、知れば知るほど奥の深い企業。秋田に行くならば是非、との思いで連絡を差し上げた所、急遽予定を調整して下さり、代表取締役の小島様との面談が叶いました!
緊張の面持ちで電話をした際には、総務の石原部長様にとても親切にご対応頂き、とても安心して現地を訪れる事ができました。
盛岡から、紅葉華やかな秋田街道を抜けて、一路田沢湖方面へ。
自然豊かな田園風景の中に見えてきたのが、わらび座さんの運営されている「たざわ湖芸術村」です。
わらび座劇場の近くに車を止めて、現地に降り立つと・・・
■早速聞こえてきたのは、元気な発声練習! 😮 😮
地元ではすっかり有名な、修学旅行生達の「踊り教室」の真っ最中でした。
このわらび座修学旅行は、35年以上の歴史を持ち、通算30万人もの生徒さんが観劇と踊りワークショップや農業体験の交流を重ねて来られたそうです。
ちょうどこの日も、ワークショップの最終仕上げ段階。練習の成果は、なんとわらび座劇場の大ホールで、お披露目をするのだとか。絶対に心に残る修学旅行になりそうですね!
写真はこちらからお借りしました。
■小島社長とのご面会!
さて、到着早々素敵な場面に出くわしたのですが、しばし周辺を探索した後、石原総務部長様にご案内頂き、いよいよ素敵な笑顔の小島社長とご対面!
実際お会いしてみると、小島社長が類グループの存在そのものに非常に興味を持って頂いている事が解り、温かい笑顔のワクワクムードで歓迎頂きました。
まずは、わらび座の歴史(演劇から総合事業に至った経緯)をお伺いしました。
・劇団設立(1952年)から現在(今年60周年!)までの過程は、過去には経営難に陥った時期も有ったが、 ひたすら現実を直視する中で劇団を存続させる道筋をずっと追求し続けてきた。単に演劇を行うだけでは、経営は成り立たない時代になっている。その時々に、人を呼ぶ為に必要なものを事業化してきた結果、今の形になっているだけ。
・勿論、訪れた方々には、最高のおもてなしを用意したい。例えば、たざわ湖ビール等は世界コンクールで世界一を受賞するレベル!だし、料理等もハイレベルの調理人を揃えて提供している。うちで働くメンバーは、みんなお客さんに喜んでもらえる事に価値を見い出しているので、質の良いものを提供する事に対しては自信を持って取り組んでいる。(今回の面談は、田沢湖ビールのレストランの中で、美味しいコーヒーをいただきました。ごちそうさまでした )
・芸術の領域に関しては、常に価値対立なども生じる事が多々あったが、時代の変化に対応できなければ、存続も出来ない。過去には政治的・思想的な演目で社会変革を志向した時代もあったが、それも時流の期待を受けてのもの。現在では組織としてのまとまりをより重視する形で、「何でもあり」とはしていない。
知っておきたい「わらび座」の歴史より
80年代以来、わらび座は多様な人間像を描くことによって、人間のあり方に焦点を当てた。
90年半ばから、わらび座は、 特に人間同士のつながりと共生のテーマを打ち出した。共生とは、開かれたシステムにおいて、様々な異質的なものの積極的な共存を意味することである。
また、この共生の考えは、価値観の強要や社会の同質化を方向づけるのではなく、異質的存在を認め合う上で新しい結合関係を目指すことを意味する。共生の主題は今後のわらび座の活動に多様な可能性を生み出す。
わらび座は興行収入の増加を芸能活動の最大の目的とせず、常に社会問題の解決に目を向けている。社会情勢の変化に応じながら、彼らは社会問題に対する自らの捉え方を模索してきた。
・様々な価値観が入り混じる中、みんなとの折合いを付けながら、共同出資かつ100%自社株制とし、主に役員・各部門のトップごとに経営方針を取り決めながら運営している。元々は劇団員のみが株主であったが、3年程前に他の事業の従業員にもすべて株を分配した。たざわ湖芸術村やその他の施設も、全て自社の持ち出しで作っている。
ちなみに、この共同資産としての芸術村というのはものすごい規模!
是非、企業HPで詳細をご覧下さい。
・また、事業の一つに40年前から修学旅行生の研修なども受け入れており、農業研修の受皿として現在では地元農家700件をネットワーク化している。
このような、演劇を中心とした修学旅行や農業体験などは、基本理念を軸として全て繋がっています。
<わらび座の使命と価値>
「生きているっていいな」「人間って捨てたものじゃない」。わらび座公演ではそんな感想がよく聞かれます。人間の存在を疑いたくなるような事件が続き、それを反映・助長するような文化が氾濫していますが、私たちはいのちを愛します。
人間の尊厳、いのちの美しさを描き、人々の心の糧、生きる力になる芸術活動を進めることがわらび座の理念と目的です。そしてこの理念のもと、舞台やワークショップ、修学旅行受入などで地域や社会に貢献することがわらび座の存在価値だと考えています。
・全従業員が株主となる事で、当事者性を高める事には成功している。劇団員も自ら営業活動を行い、相手の求めているものを掴みながら表現力を高める事で成長していける。過去には、劇団員による全員営業に取り組んだ経歴もある。単に自分の好きな事を表現したい、といったナマぬるい発想では無く、常に現実に目を向ける事の必要性をしっかりと定着させている。
この成果が、年間劇場動員数7万人、研修参加者数2万人という実績を上げているんですね!
■現在の社会情勢をどのように捉えているか?
・社会情勢はなかなか良くは成らないという実感はある。秋田でも、裕福な時代があっただけに、守りの姿勢に入って中々変わりにくい部分もある。ただ、実質それで上手く行っていない事が多く、政府からの依頼等も引き受けながら地域復興活動に取り組んでいる。もちろん、地元企業との協力関係も構築できてきた部分も大きく、しっかりと地域に根差して活動を続けていく事が重要だと考えている。
・最近の大手マスコミは話にならない部分が多いが、世間がそれを受け入れている部分も一つの現実として受け入れるしかない。しかし一方で、地元メディアとは同じスタンスに立ち、現実を直視した表現の世界を維持しながら発展していけると感じている。今では、演劇界の大御所たちが、実際にわらび座で仕事をしてくれているし、多くの期待も受けている。何年後かには、また社会も変わっていくだろうし、常に何事にも本気で取り組んでいくだけですよ!
演劇というのは、常に大きなメッセージ性を持つものです。だからこそ、常に本気で取組み、現実の中で今求められているものは何か?を追求してこられた姿に圧倒されつつも、非常にこころ強いめぐり合わせへの感謝の念が浮かびました。
そして、小島社長からもいくつかのご質問を頂きました。
◆類グループへの関心
実は、全員株主化の取組は、当時イギリスのある企業の取り組みを参考に自分達もやろうと思った時、日本で一社だけ100%自社株制の企業があることを聞きつつ、踏み切った記憶がある。恐らく、類さんの事だね!
この実績を見る限りしっかり成立しており、かつうちよりも規模が大きいね!と驚かれていました。
社長はどんな方か?組織論の形成過程は?何故このような事業に踏み切ったのか?等を興味深げに質問を頂きました。
なんだか、点と点がしっかりとした線で繋がった瞬間に立ち会えたような面持ちになりました。
■わらび座さんへの期待~協働ポイント
たざわ湖芸術村は、実質地域統合の中心軸。過去には、周辺のネット環境なども、わらび座さんが自ら整備して来た経緯があるほど。地域からの期待も多く集まっている共同体であり、周辺の学校からも多数の研修受入れを担い、農業活性化にも一役。既に統合役として成立しているため、企業⇒地域共同体の要としての期待も大きい。
勿論、わらび座さんは現在進行形で社会的期待にグングン応え続けておられます。
一例を紹介します。
<社会状況を考え・変えるための演劇>
高止まりの状況が続く高齢者の自殺を減らそうと、オリジナルの自殺予防劇を制作し、2012年3月にも巡回公演する。昨年の 自殺者が大幅に減った青森県の取り組みをヒントにした。祖母・母・娘の3世代同居の家族を軸にした笑いあり涙ありのミュージカルになりそうだ。
<企業間の連携による「想いのネットワーク」づくり>
~再春館製薬所と提携-人と人の絆を結ぶ場づくり-~
「人に喜んでもらうことを自分たちの喜びとする」という共通理念から始まった、わらび座と再春館製薬所との提携企画、「天草四郎」の公演がスタート。「人と人との絆をつむぎ、生きる力を育む」活動への協力関係を通して、異業種交流の新しいかたちを創造していきたいと思います。
等々。海外も含めて、地球上のあちこちを飛び回りながら、人々の心を開き、かつ繋げる舞台を精力的に展開されています。
■まとめ
知れば知るほど奥の深い企業ですが、意識生産が主流となった時代においては、意識そのものを生み出していく表現のプロの経営者集団と捉える事もできます。
また、社会意識も高い為、常に視線は潮流を読むことへと向けられています。この辺りの要素を踏まえ、今後るいネットの「経営板」を通じて、共に社会構造や意識潮流を学んでいく関係が構築できると、すごく楽しくなりそうです。
共同体だからこそ出来る事としての、沢山の実績を持たれており、勿論企業を支える社員の皆様=株主であり、経営者でもある、という点が何よりも魅力的。
ぶら下がりでは無く、当事者として自分達の表現の場を構築し、かつその発信内容は常に社会の期待に応えていきたい、という姿勢に貫かれている。
共同体企業ネットワークにおける、様々な業界とのコラボレートによって、新たな創作活動に 華が咲く と素敵だな、なんて想っています。
展開の多様性を考えると、本当にワクワク 。これから、じっくりと学び合いの関係構築に向けて、摺り合わせが出来ることを期待しています。
- posted by kawa_it at : 18:59 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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