2012年02月02日
共同体的企業の中身とその構造化④ ~社内報の進化過程~
画像はこちらよりお借りしました
現在、多くの企業で採用されている社内報。
明治36年に鐘淵紡績兵庫工場で発行された「兵庫の汽笛」がはじめとされており、昭和30年代後半の高度経済成長期に社内報は飛躍的に普及していきました。その後、バブル崩壊を受けて、経費削減のため社内報の製作が縮小される傾向になりましたが、近年あらためてその重要性が認識され始め、増加傾向にあるようです。
社内報を発行している企業は一説では1万数千社と言われています。日本の上場企業が約2000社程度なので、多くの企業が(とりわけ大企業では特に)社内報を採用していると考えられます。
その目的は何のでしょうか?
社内誌白書2011に掲載された440社のアンケート結果では、
1.社内情報の共有 ・・・380社
2.経営理念・ビジョンの浸透 ・・・317社
3.経営方針の周知徹底 ・・・288社
とあるように、その目的は、社内の情報共有そして統合することが大多数のようです。
今回は、多くの企業が採用しているこの社内報について、その時代背景、意識潮流とともに分析し、可能性について追求したいと思います。
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■高度経済成長期に増加した社内報
社内報は高度成長期に飛躍的に普及したと言われています。それは一体、何故なのでしょうか?
高度経済成長期では、企業は拡大の一途を辿っているので、社員数が急増していき、統合する必要性が増大したことが、社内報が急増した要因だと思います。
また、高度経済成長期は、みんなが豊かさを求め、私権(=地位やお金、身分)獲得のために一生懸命働いた時代でした。その時代では、経営者は、いかに自分達の会社が優れているかを社員に伝えることを意識していました。なぜなら、自分たちの企業が優れていることをアピールすることで、社員たちは私権獲得の可能性を感じることができ、社員の活力はぐんぐん上昇し、会社へ収束していくからです。ですから当時の社内報は、例えば「ついに世界で最高技術の○○を開発!さらに躍進!!」などといったプラス面の発信が全面的に打ち出されていたのです。
このように、組織の規模拡大に伴う社内統合の必要性が増大したことと、会社のプラス発信を全面的に紹介することで、社員の活力そして会社への収束力を高めることができたので、社内報は高度経済成長期にどんどん普及していったのでしょう。
■バブル崩壊で一旦減少するが、再び注目される社内報
しかし、バブル崩壊とともに社内報は発行されなくなっていきます。経営改善に着手しようと各社が米国型の効率重視の経営手法を取り入れた結果、目先の経費削減が第一課題となり、社内報が発行されなくなってしまったのです。すると企業はバラバラになり、社員の活力が低下していきました。やはり社内報の重要性を感じた経営者たちは、改めて社内報を発行し、企業の一体感を高めようとしているのが現状なのでしょう。
■昔と内容が違う現在の社内報
社内報が再度発行されるようになりましたが、単純にそのまま復活したというわけではありません。その中身が大きく変わったのです。昔は、みんなが私権獲得に向かって邁進していたので、自社のアピールで社員が活力アップすることができていたのですが、貧困が消滅し、みんなの活力源が私権獲得ではなく、みんなの期待に応えて充足を得たいという共認充足に移ったため、自社のアピールでは活力は上がらなくなったのです。すると社内報の中身は、もっとみんなの役に立ちたい⇒もっと組織に関わってよくしていきたいといった期待を反映させたものへと変わってきているのです。
■社内報の成功事例
例えば、社内報に社員からの提案を積極的に掲載し企業の一体感が生まれ、社員の活力が上昇している事例として北海道のお菓子メーカーである六花亭さんの社内報「六輪」が挙げられます。
日刊新聞「六輪」を通じて会社全体がつながっていることです。
六輪はもはや会社の原動力ともなっています。
毎日、私たちが感じたこと、職場の今、時には意見、提案も情報として提出、勤務地がばらばらなのでなかなか会えない同期や後輩の様子を知ることができたり、製造の大変さを知ることができたり、自店でも試せる取り組みがあったりと、情報の宝庫です。
(社員の声http://www.rokkatei.co.jp/recruitment/voice.html)
上記は、六花亭さんの新卒採用ページで先輩社員が応募者に対して紹介している「六花亭の強みとは?」という質問に対する答えです。「私たちが感じたこと、職場の今、時には意見、提案」などが、社内報には掲載されます。
このような社員の意見や提案は、毎日社長にメールされるそうで、その数なんと600~700通。その全てを編集長である社長が3時間ほどかけて目を通し、これはという情報を社内報に掲載するそうです。その結果、六花亭さんは全国展開していない地域企業であるにもかかわらず年商80億を超える大企業へと成長されています。
新卒採用ページには、他の社員の「六花亭の強みとは?」に対する回答もあるのですが、その回答の大多数が「六輪」の存在を挙げています。それだけ、社員さんにとって「六輪」を通して、社員のみんなの顔や状況を知れること、提案をできることによる一体感は活力源になっているのだと思います。
また、別の事例としてリクルートさんの「かもめ」という社内報が成功事例として挙げられます。「かもめ」は完全に経営者のチェックを通さず、社員のみで編集されています。
「経営批判もどんどんやるんですね。悪い情報もどんどん載せるということが、御用社内報ではないことにつながる」
「はっきり言って経営者がチェックしている社内報は社員から支持されない。これははっきりしている。誰のために社内報を作っているのかというと、会社のためじゃなくて社員のため」
(リクルート創業者江副氏http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0707/03/news102.html)
上記はリクルート創業者の江副氏の言葉ですが、社内報を経営者がチェックしておらず、社員のための社内報であることがわかります。そしてその中身は、経営に対する批判なども掲載されているのです。批判といってもそれは、組織をもっとよくしていきたいという思いの表れであり、私権時代(=私権獲得を第一価値とした時代)から共認時代(=みんなの期待に応えて得られる充足を第一価値とする時代)への転換の先取りといえます。そのような社員の立場に立った社内報が、リクルート危機で崩壊寸前にまで陥ったリクルートに一体感を与え、現在の売り上げ1兆円を超える大企業に成長させたのだと思います。
このように、社員の活力は、より経営に参加していきたいという方向に向かっています。それを実現しているのが社内報であると思います。
■全員が経営に参加するなら社内ネットがいい
社員の活力源が経営参加にあるのなら、よりみんながその時その時に提案できた方がいいでしょう。さらに、みんなで会社をよくしていけるには?と考える場があった方がいい。それを可能にするのが社内ネットです。社内報であれば、情報の双方向性がなく、より深く追求することは困難です。また、情報の即効性にも乏しい。しかし、社内ネットであれば、ある投稿に対して返信をすることでより追求が深まっていくし、その時の状況に応じて、最適な方針をみんなで追求できる。それこそ、社員みんなで経営に参加することができる最高の場となるのではないでしょうか?
例えば、類グループでは社内ネットを導入した成功事例が事実として存在しています。
社員の活力上昇を考える経営者のみなさん。社内報から社内ネットへの進化を考えてみてはどうでしょう。おそらく、社内ネットへと移行した初期段階では、あらゆる課題が出てくると思いますが、それをみんなで突破していくその過程も充足になります。是非社員と一緒にみんなで社内ネットを楽しんでみてはどうでしょうか☆
- posted by kaganon at : 21:56 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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