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2012年07月19日

日本の医療・介護業界はどうなる?~前編~

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画像はこちらからお借りしました。

前回までは市場が縮小していく中で企業はどう生き残っていくかを追求してきました。
     
「建設産業・都市の未来はどうなる?」リンク リンク
「情報通信産業に期待されていることは?」リンク リンク
「環境産業の可能性はどこにあるのか?」リンク リンク
「日本のものづくり 製造業はどうなる?」リンク リンク

そんな中、市場が縮小することなく、逆に拡大傾向にあるのが、医療・介護業界です。それにもかかわらず、医療崩壊やコムスンの介護破綻など、あまり良い話題は耳にしません。今回は、そんなとっても不思議な医療・介護業界の問題を切開し、どうしたら良いのかを追求していきます。

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■医療介護需要は拡大しているのに業界は問題山積

●国家財政の逼迫により制度破綻。
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しかし、高度経済成長時代の1961年に導入された国民皆保険制度は、経済成長を前提に作られたため、市場縮小の時代になり制度そのものが崩壊しかけています。この危機的状況を受けて、2000年代の小泉政権の聖域なき構造改革による、健康保険の本人負担の1割から3割への引き上げや、医療・介護の報酬点数引き下げが行われ、最近では税と社会保障の一体改革という名目で消費税増税が決定しました。

しかし、社会保険制度は経済拡大を前提に制度設計がされているという根本的な矛盾を放置したままですから、このような官僚主導の小手先の改革では問題が解決しないことは明らかです。

120719%E5%B2%A9%E4%BA%95%EF%BC%A7%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%9C.png ●なんでもかんでも病気にする医療市場、その目的は?
国家財政が破綻し様々な制度改革が進む一方で、抜け毛や、ニキビ、タバコも病院に行きましょうという不思議なコマーシャルが登場してきています。また、マスコミは何でもかんでも病気であると報道し健康不安を煽るなど、過度な不安による弊害も現れてきています。

昨今では、新型うつなる新たな病気も登場していますが、これは病気の判断基準が医者ごとに曖昧であり、うつ病と診断されて薬を処方されたが、症状は改善するどころか、色々と問題行動を起こすようになった事例もあります。また、2008年4月からは40歳以上を対象にメタボリックシンドローム診断の義務化されました。高血圧も糖尿病も、病気と健康の判断基準が厳しくなり、健康診断では中高年の殆どが異常になっています。ここまで来ると、国民の健康のためと言うよりも、医薬業界の金儲けのためとしか思えない状況です。

画像はこちらからお借りしました。
参考:捏造された新市場(精神疾患と専門薬)2
薬を売るために病気がつくられる

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日本では低水準の医療費で世界一の医療レベルを達成してきました。しかし、官僚主導の制度矛盾がもたらす「ひずみ」は現場に押しつけられています。

医療現場では、医師不足からくる労働時間の長期化に加え、患者という権利をかざしたモンスターペイシェントの増加。その結果、医療現場は混乱し、その影響が医療訴訟の増加という形となって表れてきています。そうなると、新しく医師になるものは訴訟リスクが高い外科、産婦人科等を避けるようになり、さらに医師不足に拍車をかけることになり、状況はますます悪化しています。

そして、医療効率が悪く、医師や看護師も集めにくい地方では、病院経営が圧迫され、公立病院を中心に病院の破綻が続発し、社会問題となっています。

介護の現場でも人材不足が顕在化しています。特別な資格が不要で誰でもなれるにもかかわらず重労働低賃金といった労働環境が敬遠され人材不足は解決されません。核家族化や地域コミュニティーが失われたことで、介護士ニーズの増大は明らかであり、さらなる人手不足や労働環境の悪化は避けられないように思えます。

社会保障制度の破綻、一方で増え続ける医療介護需要、その矛盾が現場に押しつけられ、医療崩壊とまで言われる状況になっています。このような状況に至った背景には、日本の医療介護制度思想の問題が大きく横たわっています。これらの制度や思想の問題はどのように形成されてきたのでしょうか。次は現代医療・介護が成立してきた歴史を、西洋東洋そして日本の医療の歴史をさかのぼって押さえていきます。

■サル・始原人類の医療

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・医療の主は祈祷や呪術で、副次的に薬草を使用
医療の原始的形態は、祈祷などを通じて自然や宇宙といった万物に期待することでした。自然の力を借りながら生きていく知恵が蓄積されたのが薬草の使用だったと考えられます。この始源人類の医療は、地域共同体の知恵として引き継がれ、近年まで大衆医療の中心的役割を果たしてきました。
参考:同体の原基構造-5~極限時代の死生観
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■西洋医学の歴史

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・宗教と医療が一体化
・医療は、王侯貴族に仕える神官や僧侶が医療を司る役職として確立
・僧侶・神官は呪術や祈祷を行い、薬を処方
・多数の症状とそれらの治療法、800種の薬の処方、700種の植物・動物・鉱物薬
この時代には、既に「権力者とそれにつかえる専門家」という構造が登場しています。身分序列の圧力により、医療手法、制度が追求、整備され、凡その医学体系も確立していました。
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・医術を家伝として継承し、医師組合が作られ、医師の免許制が誕生
・様々な治療・手術用具が発明
・医療の進展に伴い医薬分業も進み、薬の専門家も登場
・神官とは別に、医師としての職業が確立し、一定の科学認識が構築される。
・ヒポクラテスが4体液説、ガレノスが4元素説
都市国家が成立し侵略戦争が繰り返され、負傷者を治療するため医療が発達します。免許制や薬学の分化など専門性の高まりと共に、神官と別に医師の特権的身分が確立されます。
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●中世、ルネサンス期の医療
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・病気は天罰、キリスト教の僧侶が医学を支配。医学の進歩は停滞
ルネサンス
・十字軍により市場拡大の可能性が開かれ、交易、都市化、戦争が増大
・利益拡大のため科学技術が発達を始める。科学は目先の効率化を実現する要素還元主義一辺倒に。
・戦争で死傷者が増え、都市化と交易でペストが流行、近代医学が登場
・大学が各地に設立され、その多くに医学部が設けられる(唯一の理系学部)
中世末の十字軍を皮切りに、市場拡大の可能性が開かれ、大航海時代の侵略戦争のため科学技術が発達、都市化も進みました。戦争の死傷者増加とペストの流行で近代医療も発展した時代です。原因療法(病の原因を直したり取り除いたりする治療法)を指向し、医学思想は要素還元主義に傾倒してゆきます。市場拡大とともに私権獲得の主体となっていった都市住民を中心に大衆にも医療が広がっていきます。
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●産業革命以降の医療制度
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・国家が、市場拡大、世界市場での勝利のために科学技術の発展を推進
・欧米では、国民国家=国民皆兵に伴い医療保険制度が整備。医療が国家制度に組み込まれた
・予防医学や細菌学、病原微生物学などが次々と樹立してゆき、専門分化がさらに進む
19世紀になると、資本主義が発展してゆくに従い、欧米では、国民国家=国民皆兵、国家産業の発展を目的に医療保険制度が整備されてゆきます。大衆にまで医療が浸透していった反面、人口増加に伴い、国家に大きな財政負担を強いることになります。この制度が現代の医療費の増大と深く関係していることは言うまでもありません。

以上のように、西洋の医学は、特権階級の不老長寿など過剰な医療期待に応える形で登場し、戦争と掠奪によって発展し、ルネサンス以降の市場拡大にと共に、近代科学を組み込んだ西洋医学がかたちづくられ、近代帝国主義の時代に国家制度として確立しました。西洋医学発展の歴史は、まさに私権統合と市場拡大の歴史なのです。

ここまで、欧米の医療の歴史を俯瞰してきましたが、日本の医療を考える上では、東洋医学の流れも見ておく必要があります。

■東洋医学の歴史

●東洋医学の源流
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・戦国時代、漢時代を経て、特権階級の不老長寿の追求や争いの圧力を背景に、中国古代医学の基礎が完成
・以来、2000年近い間、基本的にこれらの技術は伝承。西洋は要素還元主義に収束していったのに対し、中国では、全体性を保持したまま医学がゆっくりと進歩
・近代に西洋医学が導入されるが、東洋医学と西洋医学が併存
中国でも支配者層が専門家に余力を与え、学問を大成させています。漢時代には、ギリシャ・ローマ時代の4元素説などに似た精気学説、陰陽学説、五行学説といった医学理論が構築されます。その後、西洋医学も流入しますが主流にならず、現代でも東洋医学、西洋医学、この二つを合体した医学、それぞれの追求が行われています。
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●西洋医学と東洋医学の違い
西洋医学は、病の原因を科学的に分析し、徹底的に「部分」のみを対象とし、その患部を排除するという体系を構築してきました。結果、とことん目先的な医療となってゆくのは必然ですし、人類がこれまで塗り重ねてきた生命の摂理を大きく踏み外してしまっています。

それに対して東洋医学は、患者の自覚症状や病態の観察によって「全体」を広く認識し、それに応じた処方を施す、生命や自然の摂理に則って生命体の持つ治癒力を最大限引きだすことを追求してきた歴史を持ちます。東洋医学は始原人類の医療を引き継ぎ発展させたものであり、近年になり見直されてきています。

西洋医学は、西洋近代科学に刻印された効率第一の価値観から、要素還元主義に陥り、悪い所を見つけてそこだけを直すことに埋没してゆきます。東洋医学では医学が進歩すれば健康になり病気も治療も減るのに対して、西洋医学では、医学が進歩すればするほど、病気も治療もどんどん増えていきます。これが医療費が国家財政を圧迫する原因になります。

■日本の医療史

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日本では、庶民の医療は、戦後に村落共同体が解体されるまで、共同体に伝わる伝統医療相互扶助によるものが中心となっており、西洋医療が庶民にまで浸透したのは、最近になってからのことです。
支配階級の医療は、古代から江戸まで、中国や朝鮮から仏教などとともに伝わった経験医学を、独自に体系化した漢方医学が主流でした。仏教の布教とともに日本全国に浸透し、江戸期には、中国へ逆輸出するほどに発展しました。
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●明治維新に伴う西洋医学への転換
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戦前の医療は、主要に富国強兵政策の一環として取り組まれます。後の国民皆保険制度の基になる国民健康保険法をはじめ、労働者年金保険法や医療保護法など、当時の制度はすべて富国強兵のために施行されたものです。
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●戦後の市場拡大に伴う歪みと官僚支配
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■現代の医療介護制度の問題構造
これまで見てきて明らかなように、医療介護問題の根本原因は、私権統合の社会、市場原理の社会になり、人々が個人の利益第一になったことです。人類本来の共同体では、医療介護は、みんなで伝えてきた知恵であり、相互扶助のなかに組み込まれていたものでした。それが、私権統合、市場原理の社会になると、共同体が持っていた医療介護機能は失われ、医療介護も私権統合・市場原理の社会制度に組み込まれていきました。

個人の利益追求第一となった結果、核家族化、晩婚化、非婚化が進み、どんどん個人に解体されていきます。子供を作らないので高齢化が進展し医療介護需要はさらに増大します。バラバラになった個人は共認非充足から病気になりやすく、不安でちょっとしたことでも医者にかかり、権利意識が肥大しすぐ医者を訴えるようになります。

利益追求第一の医薬・介護業界は、市民の肥大した要求を梃子にして、どんどん病気を増やし市場を拡大します。これに、医学が進歩するほど病気も治療も増えるという西洋医学の対症療法が持つ構造的問題が加わって、年々社会保障費は増大していく一方です。

医療や介護の現場は、医者や金持ちの理事長を頂点にした完全な身分序列が形成され、現場で働く看護師や介護職員はヒエラルキーの末端に位置し、自分が所属する組織を改善する権限も持たず、厳しい労働環境に置かれています。

市場が拡大し続けている間は、肥大化する大衆の健康長寿願望や、医療介護業界の利益追求主義、権力的組織運営と言った様々な矛盾を飲み込んで、社会保険制度も拡大していくことが可能でした。しかし、市場が拡大限界をむかえ市場縮小の時代に入るとあっという間に社会保障制度は崩壊します。市場が拡大し豊かさが実現すると、人々の私権欠乏は衰弱し市場は必然的に縮小せざるを得ません。医療社会保障制度の崩壊は不可避だったと言えるでしょう。

医療社会保障制度の問題を解決するためには、私権統合、市場原理といった社会構造そのものを変える必要があります。これを放置して、小手先の制度改革を行っても、状況が悪くなるばかりなのは、この間の医療社会保障制度改革の結果を見れば明らかでしょう。

市場原理が問題の根本であるにもかかわらず、市場原理を導入すれば問題が解決すると考えて大失敗をし、様々な矛盾が医療介護の現場で噴出したのが、現在の医療介護業界の閉塞の直接的原因なのです。

このように根の深い問題を解決する方法はあるのでしょうか。次回は、この難問に取り組みます。

 

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