2014年01月31日
自給期待と業態革命~プロローグ
1970年に豊かさを実現した日本は、未曾有の大転換期に突入しました。
そして近年は、ここ数十年の過渡期を経て、大転換の状況が年々明らかになり、社会も、企業も、個々人の意識も大きく変化しなければいよいよ適応できない段階を迎えています。
これから始める新たなシリーズ記事では、意識の変化に応じた新事業の事例に学びながら、これからの生産活動~社会づくりの可能性を探っていきますが、まずは、ここ数十年、どのような変化が起きてきたのかを簡単に振りかえってみましょう。
■本能回帰と共認収束の大潮流
’70年頃、先進国ではほぼ豊かさが実現され、飢餓の圧力が消滅した。すると、たちまち私権圧力が衰弱してゆく。そうなると、これまで、私権の強制圧力によって追い立てた上で利便性や快美性を囃し立て、過剰刺激によって水膨れさせてきた物的欠乏は、衰弱してゆかざるを得ない。
それは、市場の縮小を意味する。
『3.市場の縮小と根源回帰の大潮流』よりhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=260775
もっとも、この構造的な変化は、その時点では大多数の人に明確には意識されず、生活にゆとりが出来たこともあって、’80年代のバブル崩壊の頃までは、多くの人が過剰消費を謳歌し続けます。
しかし同時に、この頃から、私権(地位や金)活力に変わる新たな活力の再生に向かう本能回帰の潮流が生起します。
ヒッピーや環境運動を含む自然志向に始まり、バブル崩壊後の’90年代の健康志向、世界バブルが崩壊した’02年以降の節約志向(「もったいない」)など、消費を促す過剰刺激に対する違和感を顕在化させながら、より本源的、根本的なものへ向かう意識変化が広がり続けてきました。
また、もう一方では、私権への収束度が年々衰弱し続けたことで、本来誰もが備えもつ、周りの期待に応える共認充足の活力への収束度が強まり、世論調査でも’70年代以降は「ものからこころへ」といった言葉で表されるような意識の変化が立ち現れてきます。
この、共認収束の潮流は、’70年代の仲間収束、’80年代の(私権の追求に代わる)やりがい志向を顕在化させてきました。さらに、’02年頃には、それまでの遊び第一の価値観を覆し、役に立ちそうな課題に収束する課題収束の潮流が顕在化し、この頃から大学生は授業やバイトといった課題に強く収束してきたのです。
■自給期待⇒自考期待の顕在化
そして近年になると、’08年のリーマンショックによって、金融経済の異常さ、市場の終焉をいよいよ多くの人が実感します。
その後’11年に起こった311の震災以降は、原発情報を隠蔽、捏造し続けている政治家や官僚、学者やマスコミの言動、対応に、人々は強く不信感と危機感を強めてきました。
更に、’12年末の衆院選で、不正集計としか考えられない結果(大衆の7割が原発反対、5割がTPP反対の中で自民党が勝利)が出ました。このことは、報道されなくとも、ネット上で不正疑惑や傍証情報が得られる事もあり、日頃から広く情報を探索している知識層を皮切りに、一般の人々の意識を一層大きく変化させました。
これまでの現体制に対する不信感・危機感を超えて「もはやこれまで」と現体制を見限り、「自分達の力で生きていくしかない。そのために自分達で考える」という「自給期待⇒自考期待」が顕在化したのです。
前述の自然志向など、現在の自給志向に近い意識はこれまでにも立ち表れていましたが、まだ大多数の人が既存の体制や枠組みを信じ、依存していたため、社会構造や生産活動の大きな変化にまでは至りませんでした。
しかし、現在は多くの人が「既存の体制には頼れない」「自ら実現していく他ない」と実感し始めています。いよいよ、これまでの本源回帰や共認収束の大潮流に則って、既存の枠組みを超え、自分達で課題や方針を追求し、実現していく時代に入ったともいえます。
■業態革命の必要
人々の、これまで述べてきたような意識変化から、各企業の業態のあり方にも変化が求められています。
先々を考えると暗澹たる状況の現在、人々の自給期待は、経済的なあるいは肉体的な自己防衛の意識として表出しています。例えば、節約志向や健康志向、食の安全性や医療への関心の高まりなどです。また、自考志向を反映して、教育面では自分で考えられる力を獲得できる教育への期待が急速に高まっています。
ものづくりであれば、これまでどおり製品を作って供給しているだけ、教育であればこれまでどおり教えているだけ、では通用しなくなりつつあります。
一方で、これまでどおりのやり方は徐々に通用しなくなるものの、本源回帰や共認収束の大潮流に基づく、人々の新たな問題意識や期待は次々と立ち表れています。人々の欠乏を逸早く掴み、そこに答えを出して、新たな事業の仕組みを供給できれば、新たな需要を作り出し、人々の期待を実現することも可能です。
各企業が追求を重ね、期待のはっきりしたもの、実現イメージの沸き易いものから、新しい事業形態として形になり始めているのが現在の状況です。
そこで、今回のシリーズでは、顕在化している身近な問題意識・期待を足がかりに、以下の章立てで、新しい生産活動の取組みや地域活動を紹介し、事例に学びながら、自給期待に応えるこれからの事業の可能性、ひいては社会構造を変えていく糸口を探っていきます。
Ⅰ.安全・安心
Ⅱ.自然環境・エネルギー
Ⅲ.教育・集団の再生
Ⅳ.企業を核とした地域ネットワーク
シリーズは、高まる安全・安心の意識からくる「食への期待」を皮切りに、高まる問題意識や、そこに応える事例を紹介するところからスタートしていきます。
お楽しみに 😀
- posted by willow at : 12:08 | コメント (0件) | トラックバック (1)
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