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2014年07月18日

老人共同体の実現に向けて その萌芽となる事例の紹介  ~地域を伝承するおふくろの味「ファームまぁま喜ね舎」~

■プロローグ

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 現在、約1億2800万人と言われる日本の人口ですが、2030年には1億1522万人、さらに2060年には8674万人になると予測されています。高齢者の割合が増えながら、しかも人口減少が進行しているのです。いわゆる日本における「高齢者社会」は、本当に出口のない絶望的な社会なのでしょうか?

 例えば65歳以上を「高齢者」として一括りにしてしまうと、現在ある可能性すら見えてきません。

実は、高齢者の中にも活力を持った活動を展開しているグループが、幾つも存在しているからです。 彼ら彼女らの活力になっているものが何なのか?組織を結集させている軸は何なのか?そしてそれらが受け入れられているのは何故か?

それらを明らかにすることで、高齢者予備軍である私たちが学ぶべき点、あるいは取り組むべき課題を見つけて行きたいと思います。

 ■高齢者による事業化の成功事例

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 そこで今回は、農業 ⇒ 直売所 ⇒ 企業となった成功事例の一つである、「企業組合ファームまぁま喜ね舎」を紹介します。  

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(写真はコチラからいただきました)

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□まぁま喜ね舎の概要

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・組合名          企業組合ファームまぁま喜ね舎
・設立          平成23年4月1日
・代表理事     松田 千鶴子
・理事相談役   竹澤 禮子
・所在地     福井県福井市河増町9字10番1号 JA福井市アグリらんど喜ね舎愛菜館内
・従業員数         36名 ・主な事業         おはぎ、お惣菜、お弁当の製造・販売
・売上高           1億3千万円(平成 23 年度実績)
・給与       正職員:本給135000円+手当/月,パート:750~800円/時

 

 □活動理念

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 福井県福井市のまぁま喜ね舎(きねや)は、「福井の母ちゃんの味」「地域の食文化」を伝承するという目的の元に結集し、「高年齢者の高年齢者による高年齢者のための企業組合」として、活動しています。

□まぁま喜ね舎 松田 千鶴子さんの考える高齢者の可能性

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松田 千鶴子さんは、インタビューで『高齢者の可能性』について以下のように話しています。

以下(リンク)引用
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「いつも一人ではない。私には多くの仲間がともに歩んでくれる。」

これが何よりも私の生きる力であり、支えです。

農家の嫁として JA 女性部に加入したことが私の人生を変えました。
農家に嫁ぎ 50 年余、職場とは違う地域の仲間との出会いが私を育ててくれました。 JA 女性部は、女性の社会的・経済的地位の向上を目的に、地域社会への貢献活動、健康管理活動、高齢者福祉活動を行っています。
そういった様々な活動に携わることは、一つひとつが『学び』『教え』『伝え』『得る』ものでした。

農業に携わる者として、安心安全の農産物の生産活動、また家計を預かる者として農産物自給運動を実施してきました。
時代が変わり社会情勢も変化し活動の中身は少しずつ変化していますが、同じ目的をもった仲間たちが、それぞれの地域でその地域に合った学習活動を続けています。

私は、平成 13 年から『喜ね舎』という JA の農産物直売所に安全で安心なお惣菜を提供したいとの想いで地域の女性達とグループを作り、女性起業家を目指しました。 素人集団の私達は、想いは熱いが技術が未熟であり開店までの期間、何度も何度も惣菜加工の商品化に向けて実習を繰り返したものです。視察や調査の中から、まねて作り、ならって作りを繰り返しました。
こうして行ってきた『学習』は、技術の習得だけでなくその過程でのチームの連帯意識の強まりや、信頼関係の構築など多くの得るものがありました。

平成 23 年、私達は企業組合として法人化を行いました。惣菜加工に携わり 12 年がたち、ようやく自立した組織となりました。
その間、いろいろな機関の方々にご指導いただきました。仲良しグループから起業家への転身は、かなり大変なものでした。法人化を行う意図を全員に周知し、そのために必要な法的な手続きのあれこれを説明し納得していただきました。
高齢者が多いグループなので、いろいろな意味で進めるのは大変でしたが、専門家の方々は根気よくご指導くださいました。

法人化に伴い、組合の定年を 70 歳、再雇用は 99 歳までにしました。福井県の女性の平均寿命は 87 歳。生涯現役で働ける条件にしました。
もちろん、若い世代にも就業してもらえるように労働条件も検討してきました。現在は、36 名のメンバーが同じ目的、同じ方向を向いて歩んでくれています。  

  「生涯現役」であるために、これまでの経験を生かしつつ、メンバーとともに、『学び』『教え』『伝え』『得る』ことを続けていきたいと考えています。

  「生涯学習」は高齢者にとって、自己を変え、うちに隠されていたものが現れることを可能にしていく原動力となり、「生涯現役」と「生涯学習」は、永遠に切り離せないものであると思います。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
引用終了

 □企業化成功のポイント

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 上記の、松田 千鶴子さんら組合員のインタビューや、企業の変遷から「まぁま喜ね舎」がなぜ成功したのか、4つのポイントを抽出しました。

 ①地元の食材、料理のブランド化

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 まぁま喜ね舎の販売するおはぎは、「喜ね舎」=「おはぎ」と言われるほどブランド化し、現在は、総売り上げの3割強を占めています。

なぜ、おはぎを主力商品として売り出しているのでしょうか。

この地域では、お彼岸やお盆、お祭り、田植えが一段落した後におはぎを家庭で作り、食べる習慣がありました。
しかし、最近では家庭で作ることは少なくなっているそうです。

そこで、「私たちには地域の食文化を伝えるという、高齢者ならではの役割がある」という組合員の思いから、地域のおふくろの味を再現した商品を販売することになりました。

 結果、地域の味(おふくろの味)として、どこか懐かしさと暖かみのある「おはぎ」が地域の人のみならず、幅広い人々に受け入れられ大ヒットしたのです。

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(写真はコチラからいただきました)

 ②高齢者でも働ける業務体制-------------------------------------

まぁま喜ね舎の勤務時間は、早朝4時から午後6時までとなっています。
それぞれの年齢・体力・家庭環境に対応するため、メンバーの希望に沿う早出や遅出など23種類に及ぶ勤務形態を整備した、時差出勤制度を取り入れています。

「親子で働いている人もいます。家事の合間を利用して時間を作り、会社で働いているのです。会社での仕事を分担するだけでなく、家での仕事もうまく分担しているようです」と理事相談役の竹澤さんは話します。

全従業員に就労可能時間を聞き、働きやすい就業環境を整えることで、体力的にも時間的にも余裕ができ、家庭での生活と仕事とを両立できるようになっているのです。

 ③社会保障制度の共認------------------------------------------

 法人化以前は、個人で材料を持ってきたり、家で下準備をしたりと、個人にかかる負担も多く、グループ間での衛生面のルールも統一されていませんでした。また、食材調達も各グループごとで行っていたために、在庫のムダが出るといった問題もありました。

そこで、企業組合とすることで、衛生管理や在庫管理の統一や、社会保険制度や労働保険制度の適用による、安心した職場環境を整えることを目指しました。

しかし、若い世代には安心できる保障であっても、メンバーには年金受給者もいて一部の保障が対象外になってしまうことや扶養控除の扱いなどの問題もあります。 そのため、法人化するにあたって特に時間をかけたのがこの社会保障に関わる話し合いでした。

一人ひとりが納得できる働き方が出来るよう社会労務士との面談を行うことで、メンバー全員が企業組合化することを共認しました。

結果として、ひとつの組織になったことで安全・安心が強化されてメンバーの結束も深まったといいます。

 

④仲間同士のつながり------------------------------------------

仕事をする上で重要なのは人間関係です。

まぁま喜ね舎では、40~50代の若者と、60~70代の高齢者がチームを組んで作業し、食材の味配合や味付けを、高齢者が若者たちへと伝えていきます。
朝と昼のご飯は、若者も高齢者も交じって食べ、笑い声が絶えません。

「冬の朝、車の雪を降ろしていて行くのヤダなあと思うときもある。でも、仕事が終わる頃には、今日も来てよかったって思えるんです。」と組合員の坂本幸子さんは話しています。

 「働く女性たちが疲れていても気持ちよく帰れる、楽しい職場にしたい」 こういった職場環境は、共認能力の高い女性が集まるからこそ生まれる空気感なのかもしれません。

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(写真はコチラからいただきました)

■高齢者たちの可能性とは

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 まぁま喜ね舎の組合員の方々は言います、 「ファームまぁま喜ね舎にとって高齢者の持っている技術・知識は必要であり、『財産』と考えています。

 今後も高齢者パワーで『地域の食文化』の伝承をはかり、人々に”おふくろの味”を彷彿していただき、地域に貢献したいと考えます」と。

まぁま喜ね舎が企業化を実現させた原動力、結集軸は、「地域の誇りを伝承したい」という目的観念だと思います。
この伝承したいという志があったからこそ、強い主体意識が生まれ、企業として成功したのです。  

 この高齢者たちが共通して、潜在的に持っているであろう「伝承したい」という想いが、老人共同体実現の鍵になるのではないでしょうか。

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(写真はコチラからいただきました)

 

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