2021年05月07日
習近平は、強力な支援そして指示を受けて動いている、と考えるしかない。
前回記事「今や中国共産党は根本矛盾を孕み破綻した存在。⇒習近平が本物の民族派ならば、中国共産党の解体が必然」の続き、中国情勢です。
中国共産党は、「上海幇」「共青団」「太子党」の派閥があり(リンク)、トップに上り詰めるにはその派閥の強力な支持が必要となる。それゆえ、その派閥の中のエリートが出世していく。
習近平は、上海幇に推された江沢民、共青団に推された胡錦涛のように、既定路線としてトップになったのとは違う。
習近平の父、習仲勲は毛沢東と共に革命を指導し副首相まで務めた人物だが、文化大革命で地方に追いやられた。そのため、習近平は10年近く陝西省北部の地方で貧困農民と共に農村生活を送り、正規の人民解放軍の訓練を受けることができなかった。(習近平の履歴)
中国は、中共の軍隊である人民解放軍の武力により国家権力を独裁する軍政国家のため、人民解放軍の軍歴をもつか否かは、出世するうえで重要な分岐点。特に毛沢東とともに革命に参加した党幹部の子弟グループである太子党において、軍籍を持つかどうかは大きい条件。
習近平は、太子党のなかでも紅二代というエリート資格の軍籍を(太子党だけが持つ特権資格を活用し)父親から受け継いだとはいえ、青少年時期に軍事教練を受けてないため正規の軍歴をもっておらず、太子党のエリートではない。
Q.その習近平が、強烈な序列国家である中国、中国共産党のなかでトップには上りきり、毛沢東以上の一極集中の権力を手に入れることができたのか?
1978年に指導者になったトウ小平は、1992年に「社会主義市場経済」という共産党が資本主義経済をやるという、根本矛盾を孕んだ路線を推し進めていった(リンク。そのあとの、江沢民(1989)、胡錦濤(2002)は、トウ小平の路線を継承するために登場したに過ぎない。
結果、市場経済を発展させたが、2人がトップにいる約20年間で、中国共産党の腐敗は加速し、様々な問題が噴出。
・上海幇、共青団、太子党の派閥による共産党内の権力闘争の激化(リンク)
・5戦区(とりわけ北部戦区)がいつ反旗を翻してもおかしくない(リンク
・台湾との緊張、民族問題(ウイグル族反乱、チベット独立運動など)表面化。
・経済圏(北京天津、上海、福建、広東、四川)と内陸部の農村の格差増大。
・沿海部の企業で倒産・失業者が増加。中国全土で年間20万~30万件もの暴動。
・一人っ子政策のツケ→出生数‘16年~の5年間で44%減→少子化が深刻(リンク)
・(不動産など)資産バブル→都市部の住宅コストの異常な高騰。大量就職難民。(※金融政策引き締めでバブル崩壊すれば、巨額の経済破壊。)
・世界の金融市場の金利が上昇すれば、過剰債務国の中国経済は大打撃。
・最大ドル債権国の中国は、米国株→米国債が暴落すれば、中国も共倒れ。
★1.習近平が国家の指導者として登場する背景に、1921年建党の中国共産党が、このままではもたないという危機感がある。
2012年の指導者になった習近平は、上海幇に推された江沢民、共青団に推された胡錦涛のように、既定路線としてトップになったのとは違う。習近平の父、習仲勲は毛沢東と共に革命を指導し副首相まで務めた人物だが、文化大革命で地方に追いやられた。従って、習近平は太子党のエリートとしてトップに上り詰りつめたのではない。(リンク
★2.習近平はあの中国においてギリギリの修羅場を踏んで上がってこれるほどの権力闘争および政治能力をもつ人物。
しかし、(★1)共産党の危機感に対する習近平の政治能力に期待する背景があろうと、(★2)習近平に権力闘争の能力があろうと、誰かの強力な支援を受けていると考えなければ、エリートでない習近平があの強烈な序列国家の中国、中国共産党のなかでトップには上りきれない。
習近平がトップに立って一番力を注いできたのは、党の腐敗防止と既得権益に対する中国共産党の改革。(※「トラもハエも同時に叩く」をスローガンにした反腐敗運動)
・元重慶市書記で大連市長も務め既得権益を甘受いていた薄熙来の逮捕。
・石油化学権益を握っていた政治局常務委員、周永康も粛清。
・中国軍事委員会の副主席の徐才厚や郭伯雄など十数名の将軍を汚職で処分。
・さらに北京軍区で上層部全てを入れ替える「粛軍」。
中国政治の腐敗は日本の腐敗とはレベルが違う。根深く染みついた民族的体質。
中国は3000年間、誰もが私権(身分・金)に収束し、それを武力を背景にした力の序列原理で統合してきた。
統一国家が形成された秦・漢~、その国家は、安定すれば必ず権力者は堕落し国は腐敗に塗れる。その体制限界を迎えた時、農民の反乱を合図に、周辺の遊牧部族に攻められ滅び新国家が設立される歴史を繰り返してきた。
しかし、権力者→国家が変わって一時的にリセットされるが、中身の私権構造(→堕落・腐敗)は何も変わらない。
現在の中国はその末裔としてその構造が貫徹され、さらに共産主義イデオロギーで大衆を洗脳したいる分、より強固で厄介。その支配権力者が中国共産党。
★3.中国政治の腐敗構造は、長い歴史に裏付けられ深く根付いたもの。そこに習近平は踏み込んでいるが、それは並大抵のことではなく、強力な権力がいる。
★4.そのために、習近平は共産党内および国家のあらゆる権力を一手に握つつあるが、それは毛沢東以上の権力集中で、建国以来の最大権力者になりつつある。
(★4)毛沢東以上の権力を手中にし、(★3)誰も手を付けない禁断の腐敗粛清を強力に推し進めたことからも、強力な支援の後ろ盾が存在すると考えざるを得ない。
習近平は、共産党改革を国民に説明するため、毛沢東の詩によって「共産党の原点に帰れ」という考え方を示しているが、これは旧い。共産主義そのものが時代遅れ。
いくら腐敗粛清を行おうとも、それは枝葉の剪定で見栄えを綺麗にしただけであって、時代(環境)に合わず、今や共産党という大木の幹が腐っている。幹だけでなく根腐れして再生不可能。
★5.習近平ほどの能力がある人物が、「共産主義は時代遅れ」という現実を見極めていないとは考えにくい。
★6.また、習近平は、文化大革命で地方で暮らしている間、下層農民の生活を体験し、農業について知り尽くしており、権力志向は高くとも根っ子は「民族派」。(リンク)
今や中国共産党は根本矛盾を孕み破綻した存在。⇒習近平が本物の民族派ならば、中国共産党の解体が必然
以上、★1~★6から、習近平は、強力な支援そして指示を受けて動いている、と考えるしかない。
※それはロシアのプーチンか? 奥の院が直接指示か?
中国は13億を超える人口と31の省・直轄市・自治区を擁し、ロシアとの間に6,000kmの国境線、ASEANとも国境を接し、極東には長い海岸線がある大国である。また、漢民族が90%以上を占めるとはいえ、残りのウイグル族、モンゴル族、その他の少数民族から成る多民族国家である。そのような国を一つに統合するには、強烈な国家権力体制が不可欠。
だから中国共産党という強力な権力が崩壊すれば、中国はバラバラになって分裂する。一旦バラバラになってしまうと再建はできない。
★7.習近平が共産党改革を進めれば、おのずと大国の中国は崩壊する。このことも、習近平ほどの人物が見極めていないとは考えにくい。
奥の院の狙いは大国解体。そのひとつ中国の解体には、中国共産党を潰せばいい。
共産党を潰せば、結果として中国は崩壊し分裂する。
習近平は、中国共産党による大国維持の意志ではなく、この意向を十分に把握して動いていると考える方が整合する。
★残るは、習近平がどのように共産党を潰すかの手順・段取りの戦略。ここを解明できれば、世界情勢の「時間軸」が鮮明になっていく。
- posted by komasagg at : 13:21 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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