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2023年01月12日

【次代の先端市場を切り拓く】スタートアップ創出元年のいま~日本の新産業創出の勝ち筋は?~

“『国の産業政策の動向』では、産業政策はどこに向かっているのか?どの領域に国費が投資されていくのか?国内外の企業がこぞって開発を進める新たな領域はどこか?こういった追求を通じて、これから先数十年を牽引する新たな産業領域・市場の解明を行います。”

事業創造の時代、産業の向かう先はどこか? >これから先数十年を牽引する新たな産業領域・市場の解明を行います。

に続き、今回は、今年特に注目された「スタートアップ」に対する政策の背景と実態について整理しました。

見えてきたのは、日本の産業はものづくりで成長してきた背景が強く、成果を価値としています。そして政府の支援が希薄(官民連携が弱い)で、スタートアップに挑戦する環境が整備しきれていない状況です。一方で、米国は価値を生み出すことに相当の価値があるとみており、CVCや政府の支援(産業確立に向けて長年の支援)が豊かで、スタートアップに挑戦する環境が整っていることが分かりました。 これからの日本の産業を支えていくために、スタートアップへの挑戦ができる環境を整備する必要があります。

◆1.スタートアップ支援の背景

現状日本の輸出入の差を見てみると、輸出額―輸入額=-2兆1622億円/月 となっており、国として「稼ぐ力を取り戻す」という大きい目標を掲げています。 この赤字額をプラス転換するには、日本から世界に売り出せるものをつくる必要があります。そのため、日本政府も、新しい資本主義の担い手として、スタートアップ企業や、新領域の研究・開発者の育成に力を入れています。

どのような市場で世界に売り出すものをつくるのか。

GAFAMのようなIT市場の先行きは暗く、DeepTechと呼ばれるような社会課題解決のためのものづくりが市場として期待されています。 私は、これを日本にとって大きなチャンスだと捉えています。 ただ、現状は、ユニコーン企業と呼ばれる未上場で企業評価額が10億ドル(1,450億円※140円/ドル)以上の企業が日本には12社しかいません。 ちなみに、米国は646社、中国は172社、インド71社と比較すると非常に少ないことがわかります。 ※日本の目標は2023年までに20社とすることを目標に掲げておりましたが、実現できそうにありません。

参考:【2022年】ユニコーン企業とは?日本で注目の企業12社はここだ!

そこで、スタートアップ元年と呼ばれる本年に、「スタートアップ支援5ヵ年計画」を策定しました。

ポイントは3つ。 ①起業する人の育成と、起業した人とをつなぐ=企業人材を生み出すネットワークと環境づくり ②資金供給強化(VCとCVC)と出口戦略 ③大企業との連携(エコシステム構築、M&A) スタートアップ支援は10年程前から提起があったものの、なかなか加速していませんでした。 それにはいくつか日本ならではの課題がありそうです。

◆2.スタートアップの実態

【課題1】日本のものづくり風土

・資金調達の基本が銀行借り入れのため、事業失敗すると自己破産に至るなど、失敗したら再起不能のイメージ

・教育で、起業や投資に関して扱われない

・日本は事業構想には投資額を大金は出さない風土  =「結果」にこそ対価

一方、米国では、日本の数十倍の投資額。。。事業構想にこそ対価を支払う価値があるとされています。 2018年の日本におけるVCやCVC、事業会社によるスタートアップへの投資額は約3800億円ですが、米国のスタートアップへの投資額は約13兆円日本の34倍となります。また2016年のファンドレイズでは、日本が2763億円に対し、米国は4.6兆円と約17倍になっています。

出典:ANTELOPE 日米のベンチャーキャピタルの違いと今後の展望

この日本の風土ではスタートアップ企業は育たず、また、スタートアップに挑戦する企業が出現しない傾向に陥ります。育つ人材も少なく、日本で高度人材が生まれにくい環境になっています。

【課題2】政府の支援が希薄

また、これを支える日本政府の支援も希薄です。 米国では、シリコンバレーに優秀な人材が集まってくる環境を支えているのは政府です。中小企業投資法(1958年)を皮切りに、ERISA法※2(1974年)、Small Business Innovation Research制度(1982年)、競争強化策(1985年)などリスク資金供給の基礎を築き、スタートアップエコシステムを形成しています。 こうした政府の支援があり、米国では、スタートアップ企業が多く生まれています。 一方、日本ではそういった法整備や環境づくりを政府が行っていません。そのため、スタートアップに取り組む難易度が高く、また事業失敗のリスクが高く、スタートアップ企業が生まれにくい構造になっています。  

出典:東洋経済 なぜ国がスタートアップを支援するのか

【課題3】なぜ日本に高度人材がこない?

産業を支える高度人材の存在は、ユニコーン企業の出現を助長します。しかし、以上で取り上げた内容を踏まえると、日本では高度人材が生まれにくく、そういった環境に他国から高度人材が流入することも難しくなります。

また、以下3つの視点でも高度人材の流入の壁があり、乗り越えていかなければなりません。

① 政治的な壁(国籍の扱い) ② 言語の壁 ③ 雇用システム(給与体系) ⇒日本は技術者に対しての給与も高くない。 ※中国大手企業の日本支社の理系初任給は40万 ※米国は一般労働者に対して、専門家は4割高い

出典:東洋経済 高度人材が日本では働きたがらない根本理由

日本固有の課題を突破するためには、海外の仕組みをそのまま取り入れるのではなく、日本のものづくり風土に見合った、新たな仕組みづくりが必要だと考えます。

次回の記事では、経済産業省と内閣府の方針から、日本がどの領域で世界に立ち向かおうとしているのか、についてみていきます。

 

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