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2023年01月20日

『生き続く企業とは?』~婿入り→継承~

前回の記事『生き続く企業とは?』~プロローグ~では、日本には1000年~200年に渡って長く続いてきた企業が多数あること、それらの企業が長く続く秘訣を探るために、共通項として5つの追求ポイントを挙げました。

1.婿入り→継承
2.権力との関係
3.流通
4.技術
5.組織体制

今回は、その中の一つ「1.婿入り→継承」を取り上げます。
200年以上続く企業には、「婿入り」で家業を継承しているところが多く見られますが、なぜ実子ではなく、敢えて婿を取り家業を継承しているのでしょうか?

■実子よりも婿養子を選択!当主の大半が婿養子
・三井の「大阪別家(暖簾分けした店)」の51件中、実子相続はわずか12件(約24%)で、残りの39件(約76%)は婿養子が占めていました。
このように、大阪の商家では養子を跡取りにする習慣があり、養子は役に立たないと分かると容赦なく離縁されました。商家の取引先や使用人の暮らしがかかっているのだから当然です。

・近年、東京の神田、日本橋、京橋の老舗40店の当主を調べたところ、全てが婿養子だったことが分かりました。

・日本橋馬喰町のさる紙問屋は、「当家に男子出生いたすとも、別家または養子に遣わすべし。男子相続は後代まで永く永く禁止し、当家相続は養子に限ることを、堅く定めおき候」と主人が書き残しています。
「世界一の老舗大国ニッポン そのカギは女原理の婿取り婚にある!」 「奥の院と日本の老舗企業の親近性~集団を存続させるには母系が適している」より抜粋)

他にも多数の事例がありますが、このように、江戸時代の商家では「息子は選べないが、女の子が生まれたら優秀な婿養子が取れる・選べる」と、女の子が生まれたら喜んで赤飯を炊いたという話もあるくらい、たとえ実子が居たとしても、跡取りに婿養子を選択することが多かったのです。


画像は、三井コスメティックス様よりお借りしました。


■婿入りによるトップ継承をしている企業の特徴

これらの事例で挙げた商家では、事業継承の過程で優秀な使用人の中から婿養子を取って当主を継がせる、優秀な番頭に経営を任せるなどしています。さらに、優秀な人材には本家から暖簾分けした多くの分家・別家を継がせることで組織拡大しています。その象徴的な事例が住友家です。

 住友の歴史は、17世紀に初代・政友が京都に書物と薬の店を開いたことに始まります。政友の娘婿として住友家に入った2代・友以は、大坂に進出。実父(政友の姉婿)と協力して銅の精錬法「南蛮吹き」を同業者に公開し、「南蛮吹きの宗家」として名声を高めます。
江戸時代の日本は、世界有数の銅生産国であり、友以は銅貿易をもとに糸、反物、砂糖、薬種などを扱う貿易商になり、さらには分家が両替商も開業し、住友家は「大坂に比肩するものなし」と言われるほどに繁盛します。
「住友グループ広報委員会」より抜粋)

 それでは、なぜ「婿入り」によって、事業を長く継承し拡大することが出来るようになるのでしょうか?

■「婿入り」による継承は、「基盤」と「先端」の双方を高める優れたシステム
長く続く企業には、事業を継承する「基盤」と、時代に応じて変化し続ける「先端」の両方が必要であり、「婿入り」によるトップの継承が、「基盤」と「先端」双方の適応力を高めているということです。

事業の「基盤」となる商才や技術力は、必ずしも血によって受け継がれるとは限らず、血縁だけでトップになれるような人材が続くとは言えません。

生まれた時から先代の背中を見て学び育っていくことは、「受け継ぐ」という意味ではその中身を色濃く継承できるように思われます。しかし、代替わりさせながら3代企業が続くとなると、50年~90年が経過。継承してきたものをそのまま生かそうとしても、時代の変化に対応できず、生き残りは厳しいものとなります。

その反面、「時代は変わったから同じものは通用しない」と、まったく新しい事業に挑もうとしても、今までの基盤を軽んじることになり、これもまた事業継続が厳しいものとなります。

それに対して、婿入りによる継承では、丁稚から商売のイロハを叩き込み、手代→番頭と成長していった使用人や、同業の商家や分家から優秀な人材を選んで、婿養子として当主を継がせることで、事業の基盤を継承しつつ、時代の変化に適応した事業の変異を促進させることが可能になります。

さらに、トップを有能な人材で継承することで、組織全体を能力ヒエラルキーで統合し、人を育てる圧力を貫徹することが可能になります。それが、次代のリーダーを生み出し、技術力、営業力を継承する人材を増やし、組織を拡大する原動力ともなります。

まとめると、婿入りで事業を継承することによって、

経営能力のあるトップを選べる(トップになる人材にも評価圧力が働く)。
・事業を継続し組織を拡大する上で不可欠な、高い技術力、営業力を持つ人材を育てられる
能力ヒエラルキーで組織を統合できる

こうして「技術力」「営業力」「組織力」の3つが揃い、事業の継続・拡大を実現できるのです。

つまり、「婿入り」による事業継承は、「基盤」と「先端」双方の適応力を高め、長く事業を継承し、組織を拡大するための優れたシステムなのです。

 

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