2012年05月25日
【新しい潮流と新理論の必要】2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
今回は、共同体企業ネットワークの理論勉強会テキスト2を扱います。
※ブログ「日本を守るのに右も左もない」で紹介された記事に加え、「なんでや劇場」で扱われた図解を盛り込んで紹介します。
テキスト1「これから生き残る企業に求められる能力は?」
①現在は、どのくらいの転換期なのか?
②人類は生物史を覆す大転換を経て、新しい時代に突入しつつある
③答えは事実の中にある
では、
・時代はかつて無かったほどの大きな転換期を迎えていること
・この大転換に対応する為には、人類の歴史段階的な進化の構造(=実現構造)を解明した概念装置が必要となること
を提起しました。
類グループは、この状況認識を基に40年に亙ってその追求を重ね、サル社会から生物史にまで遡って、人類の歴史段階的な実現構造を解明し続けてきました。
そして今、それら蓄積してきた新理論を、次代を切り開く概念装置として自信を持って社会に発信できる段階に達することができました。
このシリーズで扱うテキストが、正にその概念装置となります。これを習得すれば、あとは、現業課題であれ時事問題であれ、自分で答えを出せるようになります。
よってまず今回のテキスト2では、その概念装置を使って、大転換の意味するところを読み解いていきたいと思います。
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2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
それでは、この大転換の意味するところを、新概念を使って読み解いていこう。
社会の大転換が始まったのは、’70年頃である。その頃、先進国では貧困がほぼ消滅し豊かさが実現された。
経済学は、人間の物欲が無限に拡大することを前提にしてきたが、その前提こそ、経済学の騙しの起点であって、人間の物的欠乏は決して無限ではない。
人類は、500万年の歴史を通じて、ほぼ一貫して飢餓の圧力に晒されてきた。そして、人口が増え、各部族が境界を接するようになった約6000年前、乾燥(→飢餓)を契機に、略奪闘争の幕が切って落とされ、玉突き的に、世界中に略奪闘争が広がっていった。その勝ち抜き闘争の結果、力の序列原理によって統合された国家が形成され、国家は力の序列に基づく私有権の共認を統合軸として、安定した秩序を形成する。この私有権がいったん共認されると、社会の全ての土地と物財は私有の対象となり、人々は私有権を獲得しなければ生きていけなくなる。従って、誰もが私権(地位や財産)の獲得を目指して争うようになり、私権闘争の圧力が社会の隅々まで覆い尽くしてゆく。かくして、飢餓の圧力を下敷きにして作り出されたこの私権闘争の圧力は、否も応もない強制圧力となって人々をその中に封じ込める。
こうして、私権社会が成立した。それは、500万年におよぶ共同体社会を覆す、人類史上の大転換であった。
飢餓の圧力を下敷きにしたこの私権の強制圧力の下では、力の序列に基づく収奪によって、人工的に貧困が作り出される。従って、そこでは人々の物的欠乏は、あたかも不変で無限なものであるかのように見える。従って、次の市場社会が、人々の物的欠乏が無限であると錯覚したのも当然かもしれない。
次の市場社会とは、人々を私権の強制圧力で追い立てた上で、私権拡大の可能性を囃し立て、あらゆる手段を駆使して人々の欲望を刺激し続ける社会であり、それによって私権闘争(利益競争)を加速させた社会である。
そこでは、利便性や快美性を煽る情報によって人々の欲望が過剰に刺激され、その結果、移動や消費の回転スピードがどんどん高速化してゆく。むしろ、欲望の過剰刺激と生活回転の高速化によってこそ、市場拡大は実現されると言ってもよい。だからこそ、金貸しに操られた学者たち、とりわけ市場の指南役たる経済学は、人間の欲望は無限に拡大するという仮説を暗黙の大前提とした訳だが、それは、学者たちの錯覚に過ぎない。
事実は、こうである。この過剰刺激による物的欠乏の肥大化は、誰もが私権の獲得に収束する絶対的な私権欠乏があってはじめて成立する。そしてその私権欠乏は、飢餓の圧力を下敷きとする絶対的な私権圧力の下ではじめて成立する。つまり、過剰刺激による物的欠乏の肥大化は、飢餓の圧力に基づく絶対的な私権圧力が働かなければ、成立しない。
その証拠に、’70年、貧困(=飢餓の圧力)が消滅するや否や、たちまち私権圧力は衰弱し、それとともに過剰刺激によって肥大し続けてきた物的欠乏も衰弱していった。
大航海時代以降の重商主義の流れの中で登場した、経済学の元祖アダム・スミス、そしてそれ以降の代表的経済学者のマルクス、ケインズ。彼らは一貫して、人間の物欲が無限に拡大するという前提に立ち、従って市場拡大が絶対であるという主張に立ち続けました。(もちろん現代経済学のマネタリズムも全く同様です)
<参考:2/5なんでや劇場1 経済学者は物欲と市場の無限拡大に対して何の疑問も抱かなかった>
※マルクスとケインズ
そして、約6000年前に成立した私権社会の下での私権圧力に加え、経済学を背景とした欲望の過剰刺激⇒生活回転の高速化によって、人々の物欲は肥大し続け、その結果市場拡大が実現されていきました。
しかし、人間の物欲が無限に拡大するという前提そのものが、根本的な誤りであり、現在の経済(学)が混迷を極める原因もそこにあります。
物的欠乏の大前提となる貧困(=飢餓の圧力)が消滅した’70年以降、すでに経済学は現実には何の役にも立たない無用の長物となっていたのです。
にも関わらず、物的欠乏⇒市場拡大絶対の前提から抜け出せない経済学とそれに基づく国家政策は、’70年以降も今に至るまで脈々と続けられてきたのです。
その結果どうなったか?
次回の記事では、その’70年以降の社会状況と人々の意識潮流の変化について扱っていきます。
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