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2013年10月18日

企業の人材採用戦略-2- 学生との出会いの場をつくり出す工夫

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採用の自由市場化やインターネットによる募集、就職活動の一般化に伴い、情報が氾濫し企業も学生もどうしたらよいか模索しています。こうした状況の中で、選考方法も様々な工夫がされているのを前回は見てみました。
企業の人材採用戦略-1- この20年、選考手法はどのように変化したか?
今回は、採用試験に行く前の段階、どうやって学生との出会いの場をつくるかの取り組みを紹介します。情報が氾濫するインターネットの中で心に響く出会いの場をつくり出している事例や、大学訪問・会社説明会などリアルな出会いの場を再評価し新たな取り組みをしている事例を探してみました。

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1.ネットを活用した工夫

◆会いたい社員に会おう「公式OB訪問」:ADK
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この画像はこちらからお借りしました

「公式OB訪問」は、採用サイトに掲載されている社員を選んでOB訪問の申し込みをすると、調整の上該当の社員と話をすることができるという取り組みです。
この方式のポイント!
<メリット>
大学にOBがいなくても、OB訪問できる
<デメリット>
期間と人数制限があるため抽選に漏れる可能性がある
<注意点>
社員のスケジュール調整
同様な試みに、つぎのような事例もあります
ソーシャルリクルーターに聞けば疑問解消:セプテーニグループ
「茶会人訪問」リクナビ
★この事例の特徴は、選考の早い段階から、学生と企業が顔を合わせて直接やりとりすることが出来る点です。学生も企業もバーチャル空間の情報だけで判断することの限界を感じているのでしょう。

◆価値観別就活を提案する『採用会議
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同じ価値観を持った複数の企業が共同で募集サイトを運営する取り組みが、『採用会議』です。そこには次のような趣旨が語られています。
私たちは提案します。業界を絞り、業界別に就活するという従来の活動から、価値観に合うかどうかで企業と向かい合っていく就活を!なぜなら、私たちが考える本来の仕事とは、人を喜ばせるものであり、社会の課題を解決するものであり、そのことを通じて自分自身が豊かに生きていくことのできる、まさにライフワークだからです。だからこそ、業界別に生き方をセレクションするのでは、もったいない。
心の動くところに、感性に、耳を傾ける“価値観就職”こそ、人の人生を豊かに彩るのではないでしょうか。
・参加企業
株式会社セーフセクション
株式会社スマイルズ
有限会社あきゅらいず美養品
★この方法の特徴は、従来の企業の枠を超えた新しい企業がグループで採用活動をしている点です。新しい取り組みをしている企業が複数集まることで、1社で活動するよりも新しさを際立たせることが出来、信頼感も上昇します。1社しかないと変わった試みと思われてしまいますが、複数の企業が登場していることを示すことで、今の時代の最先端の潮流であると発信することが可能になります。大企業のような知名度がない新興企業が、その魅力を発信する方法として効果的な方法と言えます。

2.大学と企業の連携
ネットでの募集の限界を感じて、大学と企業の関係を見直したり、新たな関係を模索する動きも始まっています。

◆企業の学校対策
 採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント [2012.07.11]によれば、新卒採用においてターゲット大学を設定する企業がここ数年で増え続けており、すでに5割近いそうです。採用のターゲットとする大学を絞り、その大学との関係を深化する様々な企業の取り組みが紹介されています。

・就職部・キャリアセンターとの関係構築のために、担当者との定期的な連絡。学生の傾向に合わせ、アピール内容を変化(1001~5000名、百貨店・ストア・専門店)
・研究室、教授との関係構築のため、役員レベルの人間による就職担当教授訪問(301~500名、通信)
・学内合同セミナーで、毎年一人ひとりの学生の相談に親身に乗っていたところ、学生の口コミもさることながら、キャリアセンターの人が学生にこの企業のブースを積極的に薦めてくれるようになった。
・特定の大学との取り決めの中で、毎年インターンシップ学生を受け入れ。期間は10日間で、営業部門で仕事(101~300名、専門商社)
・OB、OG社員の活用として、学内企業説明会にOB・OGも同席(101~300名、百貨店・ストア・専門店)、若手社員を出身母体の研究室に訪問させ、会社理解を深めていただく(301~500名、精密機器)

この方法は、地道な努力が必要で時間はかかりますが、一度信頼関係ができれば、非常に強固で独自の関係が結べます。インターネットは大量の情報が集められる一方で、その中で何が本物か見抜くことは非常に難しいことから、信頼できる人間関係の中で採用・就職活動を行う方法が見直されて来ている用です。

◆大学と企業の連携
週刊ダイヤモンド(2013/10/12)に、大学側が生き残りをかけて就職率を高めるために企業との連携を深めている事例も紹介されていました。

・企業との結びつきが強い大学。
「豊田工業大学」はトヨタが設立し3割がトヨタ関連に就職していますが、残りの7割も製造大手に就職しています。強みは1・3年で必修のインターンシップで、1年で1ヶ月工場、3年で1.5ヶ月企業研修を行い、即戦力の学生を育てています。

・明治大、立教大が企業連携口座を開設
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この画像はこちらからお借りしました
京王百貨店と明治大学が連携し、講座で就活女子用のパンプスを開発しました。他にも日立製作所、ベネッセ、アステラス製薬などが参加する講座で単位取得も可能です。立教では、第一生命、セブンイレブン、など10社を超える企業と講座を開設しています。

・就職に強いゼミ
就職に強いゼミの特徴として、高いプレゼン能力、強いOBとのつながり、徹底指導人格形成、実践的な研究、等があげられていましたが、特に重要なのは学生指導に熱心で、OB・OGとのつながりが強いことだそうです。

★この事例からは、大学が就職に強い学生=実社会で役立つ学生を育てるためには、社会との接点が必要であり、企業にとってもその接点が優秀な学生を育て採用できる事につながっており、大学と企業の双方が関係を深めていこうとしている事がわかります。

3.新し働き方、本当の働く意味を発信する会社説明会。
 従来の会社説明会と言えば、就職活動の方法からはじまり、業界動向、企業の特徴を説明するノウハウ提供型が主流でした。しかし、従来の企業の枠を超えた新しい企業では、型にはまった就職意識とは違った、社会に出ること、働くことの本当の意味を提示する事例が登場しています。

◆レバレジーズ株式会社会社
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14卒学生、最も志望度が上がった会社説明会で1位に選ばれていたのがレバレジーズです。
この企業は、社員の平均年齢は27歳、代表の岩槻も32歳と若い企業でありながら、設立7年半で60億、2014年には100億の成長を予定している急成長の企業です。こうした環境で個人として成長していけることが説明のポイントの一つです。それと同じように重要なのがみんなで作る会社という姿勢です。会社説明会では次のような事が語られています。【一人で実現する1,000人を幸せにするビジネス】よりも、【最高のチームで実現する時代を動かすビジネス】を創ろう。若いメンバーで創っていく会社。一緒に働く仲間、苦楽を共にする仲間、成功を分かち合う仲間だからこそ、メンバーとなっても後悔してほしくない。Win-Winを目指す会社だから人材の採用には徹底的に力を入れます。

◆あきゅらいず美養品
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価値観別就活を提案する『採用会議』でも紹介した「あきゅらいず美養品」さんの会社説明会も特徴的です。全体の流れと会社概要の説明、続いて、あきゅらいずの創業者である南沢社長と松本副社長の講話。「なんで働くの?」とか「会社ってなんだろう?」「あきゅらいずの提供する価値について」2人の独自の視点で解説。続く各事業部からのプレゼンテーションも、上司・部下の関係がない全員フラットな組織のとてもフランクでリラックスした関係性が感じ取れます。
次 いて、「私の傍楽」のコーナー。「傍楽」とは、まわりの人の幸せにつながる働きかたとう意味で「仕事」「人生」を振り返りながら、なぜ今あきゅらいずで働いているのかを語るこのコーナー。「ここで傍楽く自分自身のことならば、好きになれそうな気がする」というコメントが印象的でした。最後のコーナーは、昨年入社した新入社員5名によるパネルトーク。

★従来の会社説明会では、働くことは市場競争に勝ち残ることであり、そのノウハウを説明することが主流でしたが、この二つの説明会に共通しているのは、業務の内容や競争に勝つ方法を説明することよりも、働くことそのものの意味や充足感を説明しようとしていることでしょう。

4.まとめ

前回の記事では、人材採用活動の課題として、大学の存在意義の問題、インターネットがもたらした問題、それを踏まえて人脈や仕事現場へ回帰していることを紹介しましたが、今回紹介した事例も大きな方向性は同じです。

大学の存在意義が問われる中で、大学は授業やゼミで企業との連携を深め社会の現実課題に取り組む機会を増やしてきています。人材採用活動もそうした日常的な大学と企業の関係の中で行われるようになる事が自然の姿なのではないでしょうか。これまでの様に、実社会と切り離された大学の授業だけを受けてきた学生が、就活スタートで始めて実社会との接点を持つと言うあり方が不自然だたのでしょう。

そして、その実社会との接点がインターネットというバーチャルな関係というのも不自然でした。企業も学生もインターネットで大量の情報(学生)を収集すれば、良い出会いに巡り会えると錯覚して来たのがここ数年の採用戦略だったと思います。表面的な情報を大量に集めた結果、画一的な評価軸で処理せざるを得なくなり、ミスマッチが多発する結果を招いたのでしょう。

企業も学生も、ネット上の情報やマニュアル化された面接では本当の良い出会いには巡り会えないと感じており、対面の人間関係の中で互いを良く知り合う方法を模索し始めています。企業説明会で、市場で生き残るノウハウの説明ではなく、その企業で働くことで、どのような人間関係や働く充足が得られるのかを説明する事例が登場し始めたのも、互いに良く知り合いたいからです。単純にデータ化や説明ができるような情報ではなく、企業の姿勢やそこで働いている社員の生き様に共感して入社して欲しいのです。

このような流れを受けて、企業の人材採用戦略の中で、インターンシップのウェイトが高くなってきています。次回はインターンシップの様々な取り組みを紹介します。

 

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