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2019年05月15日

自在に思考を巡らせるには ~マーレーの戦略の形成~

私たちは物事を正しく判断するために、できるだけ思い込みや好き嫌いを排除し、精神的に自由でありたいと考えます。しかし、現実には難しい。例えば一国の運命を左右する戦略を決断しなければならない人でも、必ずしも自由ではありません。誰であれ、顕在意識で捉えたものだけでなく、言葉化されていない潜在思念からの制約条件に取り囲まれているからです。

米国の軍事史研究家であり、米空軍戦争や海軍大学校などで指導実績を持つウィリアムソン・マーレーは「戦略の立案は、現実によってより大きな文脈の中に強く規定されている」と述べています。優れた戦略を選ぶためには、その影響を正しく見極める必要があります。逆に言えば私たちが日々の決断をする際に、知らずに受けている影響に気付かないと、そのマイナス面から逃れることができないのです。 ゴルフのように、吹いている風の存在に気付かないと、意図しない方向にボールが飛んでしまうことに似ています。前々回の「孫子」、前回のアレクサンダー大王に続き、「戦略の教室」(鈴木博毅著:ダイヤモンド社)を参考にして展開します。

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戦略の形成に影響を与える要素
・地理/歴史(過去の経験)/世界観(宗教・イデオロギー・文化)/経済的な要因/政府組織及び軍事組織

人は住んでいる場所に、多くの影響を受けて決断します。組織も国家も私たち個人も歴史という過去に大きな影響を受けています。組織の世界観や経済的な要因も同じです。このように考えると私たちは決断をするとき、非常に多くの要素に囚われていることが分かります。気付いていないだけで、実際は自由から程遠いのです。

マーレーの著書「戦略の形成」から二つの文章を紹介します。

「戦略とは、偶発性、不確実性、曖昧性が支配する世界で、状況や環境に適応させる恒常的なプロセスにすぎない」
「戦略の形成は、国際的な出来事や脅威からの外圧に加え、国内の政治的影響力及び個人の行動の特異性をも含むプロセスなのである」

マーレーは、戦略とは状況や環境に適応し続けることであり、戦略の形成は外的な要因と内的な要因のバランスで行われると指摘しています。外的な要因を全て私たちが決めることはできませんが、内的な要因、つまり世界をどう見るか、何を信条としてどう反応するかは自ら決めることができます。

マーレーは戦争史を通じて、戦略形成のプロセスを分析していますが、過去の体験から改善策を行うとき、次の2点に注意すべきだとしています。

1.目先の課題ではなく、より上位にある戦略課題をクリアしているか
2.都合の良い一部ではなく全体像を理解する

これを具体的な事例をもって検証していきます。マーレーは、第一次世界大戦の後、フランス軍とドイツ軍がどのような組織文化を育成したか、を面白い対比で紹介しています。

1940年の戦いで、フランスの中隊長たちは、塹壕の中で上官とつながる野外電話に張り付いていました。彼らは上官への戦況報告が自分の仕事だと思っていたからです。
一方、ドイツの指揮官は前線で敵情を分析し、現場で何が起こっているかを自ら知る努力を通じて、指揮を執りました。(結果はドイツの勝利)

不確実な世界の中で、組織ができる最善の策の一つは、健全な組織文化を育み、維持することです。組織の文化は、過去の出来事をどう理解するかを決め、外の世界の現在を判断し、反応を決めるからです。一世を風靡した企業が、時と共に無残に没落するのは、過去を歪んだ形で認識して、間違った企業文化を継承していくからです。過去の体験から歪みなく教訓を引き出し、効果的な組織文化として継承することこそ、継続的に勝ち続けるために不可欠なことなのです。

そして正しい企業文化が上級指揮官だけに留まらず、中堅や現場のリーダーにも浸透していく必要があります。そうでなければ、中隊長が上司に報告するために電話に張り付くような硬直化した組織になってしまいます。

同様のことはかつての日本軍にも見られました。
日本の軍部は1910年代前後から、学歴至上主義に陥り、実戦経験ではなく学業成績で昇進を決めたため、机上の空論を振り回す上官が激増し悲惨な戦場を生みます。
学歴主義の導入は、明治維新で活躍した長州・薩摩の派閥を解消させるためだったと言われていますが、下位の課題である派閥の解消のためにより、上位の課題である「実戦における強さ」が破壊されたのです。歪んだ教訓ばかりを過去から引き出したことは、日本軍の壊滅的敗北の一因になったことは間違いないでしょう。

これらのことは、戦略立案のみならず、私たちの思考そのものの構造を理解することに役に立つはずです。

 

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