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2022年03月04日

【実現塾】1/11「サル社会の構造④」~テナガザルの適応(2)

では、原猿と真猿の違い、そしてオナガザルの適応、そしてテナガザルの適応の途中まで報告しました。
最後はテナガザルの適応についての追求の残りと参加者の感想を報告します。

〇オランウータンは地上に降りてこないが、チンパンジーやゴリラは地上に降りてくる。この違いはなに?
テナガザル、と一口に言っても、その置かれた外圧によって適応方法は分かれて来ます。
特に注目したのはチンパンジーやゴリラは地上に降りてくるのに対して、オランウータンは常に樹冠生活。

なぜこの様な違いが生まれるのでしょうか。

理由はいくつかありそうですが、まず考えられるのが生息域の違い。
具体的には、生息域に乾季があるかないか。

ゴリラ、チンパンジーはアフリカが生息域となっていますが、アフリカには厳しい乾季が存在します。
乾季がある地域では、その時期に入ると樹上の餌(木の実や葉等)が激減してしまう。
餌を獲得するためには地上に降りざるを得ない。
これがゴリラ、チンパンジーが地上に降りた第一の理由だと思われます。

副次的な話ですが、地上の外敵に適応するため、チンパンジーは「集団化」、ゴリラは「超巨大化」して外敵に対応したのではないでしょうか。

もう一つは、生息域の外敵状況
チンパンジー、ゴリラの生息するアフリカの代表的な外敵はヒョウ(30kg)
※ライオンもいますが、闘いを好まないようです。
対して、チンパンジーの生息する東南アジアの代表的な外敵はトラ(200kg)

意外かもしれませんが、東南アジアの方が圧倒的に強敵です。スマトラトラ等は有名ですね。
オランウータンが地上に降りてこない(これない)のは、このトラとの闘いを避けるため、という結論に至りました。

〇年中発情が可能になったのはなんで?
最後は、テナガザル特有の【性】についての追求です。
その特徴は【年中発情】ですが、なぜそのような適応戦略を取ったのでしょうか。そもそも「年中発情」ってどういうことなのでしょうか?

まず発情はメスがオスを受け入れる(交尾する)事を言いますが、重要なのは排卵=子供を産むとセットという事。従って授乳期間中は排卵しない=発情もしません。
つまり年中発情というのは「季節を問わず排卵できる」ということです。より具体的には、1年に1回等排卵時期が限定されているのに対して、月に1回排卵する=発情するという事です。

ゴリラ、チンパンジーはこのタイプ。ただし、乾季のあるエリアに住む彼らは“雨季(餌が豊富な時期)”に子どもを産めるように、逆算して「排卵期=発情期」を迎えているようです。
一方、多湿地域に住むオランウータンはもっと進化していて、発情期がありません(常に性行為が出来る状態)

年中発情のイメージを掴んだ上で、その理由に迫ります。
ポイントは 【種】としての適応。

種としての適応を考えた問、授乳期間が長い=過保護とも言えるテナガザルの課題は、オスの闘争力をどう上げるか?と推測できます。さらに、哺乳類の特徴は、性闘争の強さ。

このような状況の中でテナガザルが取った戦略が「年中発情」だったのではないでしょうか。

メスが常に発情することでオスの性闘争が激化し、同類闘争の頻度が各段に上がります。
その同類闘争を繰り返す事で、テナガザルはオスの闘争力を上げ【種】として強くなっていったのではないでしょうか。
テナガザルのメスは「自集団」だけを考えるのではなく、「種全体」で適応するために、オスの闘争性を上げて種間闘争に適応する戦略を取ったのです。

まとめると
・メスの発情・性機能の向上は、【オスの闘争活力・欠乏をかり立てる】
・オスのヤル気・活力はメスの欠乏喚起力によるし、メスもオスの【欠乏をどう出させるか】を常に追求してきた。
という事です。

ぼくたちもオランウータンと同様発情期が無い動物ですが、この時に獲得した機能を受け継いでいるのだと思います。このような構造、機能を上手く使って【活力】につなげていきたいですね。

以上、全4回にわたって報告しましたが、1月11日の実現塾の追求内容になります。
最後に参加者の感想をお読みください。

―――――――――
<感想紹介> ※一部抜粋しています。
小5 Iさん
熱帯井雨林の中でも人気エリアがあって、人気エリアは果物があるところで、日光がたくさん当たるだけじゃなくて栄養も大切だということが分かった。

中1 Yさん
自己中とかって結構充足のカギって思って、自我が出たときは不全を感じているから、活力の湧く方向、充足できる方向に向けれたらいいなと思いました。

中2 Kさん
授乳期間が長くなったという変化で、「知能を進化しよう」という学校のような考え方ではなく、「知能進化する必要がある」という“自分から”の考えだからこそ進化できたと思った。

中2 Nさん
メスが自分とか集団を考えていたんじゃなくて、種として考えていたのがめっちゃすごいと思って、なんで種として考えようって思ったのか気になった。

中2 Nくん
オナガザルもテナガザルも試行錯誤して手を長くしたり、大型化したり日々追求して今があるんだと思った!

中2 Iくん
発表に対して皆が反応してくれたとき、内心ほっとした。反応してくれた時、皆と一体になれた気がして気持ちが良い。

中3 Yくん
表情とかってすごい長い歴史の中に作られてきて、当たり前にあったものじゃない。だから表情があるからこそ、それを人間も最大限に使ってちゃんと相手が考えていることをしっかり掴まないとなって感じました。

高2 Yくん
今の人たちの共認力がサルに比べて低くて、ヤバイと思った。だからもっと共認、相手のことを考えていこうと思った。

保護者 Tさん
初めて参加しました。いろんな年齢層の人がそれぞれの意見を述べているのがとても良いと思いました。猿からこれだけたくさんの考え方や検討課題が出てくることに驚きました。

 

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