2012年07月27日
日本の医療・介護業界はどうなる?~後編~
業界シリーズ第5弾は、日本の医療・介護業界はどうなる?をお送りしています
前編は、医療・介護業界の現状を把握し、その根本原因を探るために現代医療・介護の成立してきた歴史を押さえ問題構造を解明しました
後編は、その問題をどのように解決していったら良いのか、その転換の方向性を探っていきます 🙂
■医療・介護の転換の方向性
1.医療・介護は「意識生産」の最たる活動
・医療・介護は社会的期待(需要)の大きい分野でありそれは今後も変わらない。
しかし現場では人材不足、職場不活性、疲弊、経営不振の問題も多く言われている。どうすればよいのか?
・医療・介護という仕事は、(物的生産とは異なる)「意識生産」が本質。意識生産とは、心情、知識、認識など人間関係の中で価値をつくりだす生産活動であり、人材の能力と活力が全て。実際に医療・介護は人間総体としての関係能力、特に充足能力や同化能力が求められる仕事である。
・そうだとすれば経営の方向性としては、いかに人材の能力と活力を最大限に引き出すかがカギになる。権力体ではなく皆の共認によって統合する「共同体経営」のほうがふさわしいしうまくいくはず。中でも充足・同化能力の高い「女子力を活かす経営」病院であれば特に看護師さん)は戦略的にも重要だろう。
(逆に、医者という特別な身分制度を温存した序列型組織、専門職能意識に偏った縦割り型組織では、経営を活性化させることは難しいだろう)
・実際に、活力と成果の高い医療・介護事業者は、職員の充足と活力を第一に重視しているところが多い。職員の充足と活力が顧客の充足につながり、結果的に経営も上昇するという循環が意識生産としての勝ち筋と言えるだろう。
2.生命の摂理への回帰、人間らしさの回復
・何でもかんでも病気にされてしまうことが典型だが(ハゲもタバコもメタボも病気?)、現代の医療・介護は過剰で際限がないという違和感がある。近代医学が発展するとともに病気・病人が劇的に増え続けるという矛盾、そもそも病気って何?という疑問も大きい。
・これは西洋医学→近代医学の「要素還元主義」の限界とも言えるし、「市場主義」のなれの果てとも言える。(これで金儲けを企んでいる人以外)誰もここまでの過剰は欲していない。もともと有機的な連関を持つ要素を分解して直接的な因果関係や数値に単純化する「要素還元主義」と、何でもお金に換算しとことん資本効率を追求する「市場主義」は相似形である。
・人体の働きや生命の仕組みはまだまだ未解明な部分ばかりだが、このような発想(効率主義、利用主義)では大きな限界があるし、そもそもそぐわない。もっと全体を有機体として捉える「全体思考」の回復が重要なのではないか。
・医療で言えば高度技術や新薬開発などがもてはやされる傾向にあるが、研究領域としては、それよりも生命の摂理や人類の意識構造を解明することの方が重要である。医療や介護の現場では、人間を人間として看ること、人間関係を充足させること、生活や集団内での役割を充足させることのほうが、本質的に重要なはずである。
要素還元的科学信仰からの脱却「科学と医学」
共認治癒力
「介護」より、人としての充足を求めている
3.共同体社会の実現に向けて
・現代の医療・介護制度は、明治以降の富国強兵を目的に主導され、そして市場化を推進するなかで形成されてきた。同時に市場社会化によって共同体が破壊され、核家族化、そして個人がバラバラとなって根無し草となってきた歴史とも重なる。こうしてできあがったのが現代の制度であるが、市場縮小とともに様々な矛盾をきたし、国家財政の行き詰まりとともに破綻の危機を迎えている。
・世界金融危機→国債暴落→国家破綻の危機が迫っている中で、社会の秩序をどう維持するのか、セーフティネットをどう防衛するのかという喫緊の課題でもある。
・この社会を変革し、人々の安心を守るには(政治や制度を批判する主張ではなく)、現実の生活や仕事に根ざした場を共同体化していくこと、そこから人のつながりや助け合いを再生してゆくしかない。人々の日常生活に密着した集団を共同体化しネットワークを創っていく、つまり「共同体社会の構築」以外に突破口はないだろう。共同体社会の構築へ向けた草の根の活動として、企業の共同体化→ネットワーク化、地域共同体の再生→ネットワーク化といった方向性がある。医療・介護は人々の生活に密着した「地域共同体ネットワーク」構築の核になりうる可能性がある。
・人々の期待は過剰な医療・介護を受けることではなく、根底的には人のつながりや助け合いの中で、安心、充足、活力を得て生きたいということだろう。その意味で、医療・介護には単に病気を治す、高齢者の面倒を見るという次元を超えた大きな社会的役割があると思う。
実現論 序:共同体社会の実現に向けて7
問題が山積みな医療・介護業界ですが、既に新しい取り組みを行い、可能性を示してくれている成功事例がありますので紹介します
◆川越胃腸病院
質の高い医療技術、スタッフの心が通う温かなサービスが、「ぜひここで診てもらいたい」「入院したい」というほどの満足度を生み、新患数は毎年増加の一途、看護師不足の時代の中でも「患者様本位の理想の医療」に共感する人が全国から殺到するなど、高い成果をあげる病院だ。設立は1969年。目指してきたのは関わるすべての人の満足、人間の幸福を追求する経営。その最優先が職員の満足。病院から大切にされていると感じる職員が、患者様に心からのサービスを提供。それが患者様の満足・感動を生み、患者数の増加、病院の繁栄につながり、結果として地域を幸福にする。これが同院が挑む「ひと満足の好循環スパイラル」。患者様中心にすべての職員が一丸となるチームワーク、意欲あふれる職員による人間味豊かなサービス、常に改善、向上される仕組み・・・、このスパイラルが原動力となり満足度は毎年のように高まっている。
リンクより引用
◆株式会社フォーラル
市場競争の激化に伴い、薬局業界では、大手薬局を中心に価格競争に生き残りをかける傾向が強くなっていますが、価格競争で勝ち残るのではなく、地域の方々と地道に信頼関係をつくり、健康と安心を提供する薬局を経営。
「あなたがいるからこの薬局に来た」と思われるような、患者さんと薬局スタッフひとりひとりとの信頼関係の確立を理念として経営されており、薬の処方だけでなく、栄養面のサポートや、病気や薬についての勉強会を行い、地域の方々とのつながりを深めることで、健康と安心を提供しています。リンクより引用
◆帯津三敬病院
「私が医者になった1962年頃は、西洋医学の発展が目覚ましく、やがて癌は撲滅できると希望を持っていました。しかし、時が経って、いくら医学が進歩して、どんなに完璧と思えるような手術をしても、数か月後には再発してしまう患者さんが後を絶ちませんでした。西洋医学に限界を感じた私は、今までとは違った視点が必要だと思い、80年頃から中国医学について調べるようになったのです。当時はまだ閉ざされた国でしたが、中国の医療施設を数か所見て回ると、癌治療に気功を応用して再発を予防していることなどを知りました。私は再発予防こそ、癌治療にとって重要なものだと感じ、82年に気功を治療に取り入れるために、道場を併設した病院を開設したのです。」と話す帯津良一名誉院長。
「ホリスティック医学」の確立を目指して、日々癌患者さんの治療に当っています。
参考 リンク リンク リンク
◆大起エンゼルヘルプ
本来の介護とは、お年寄りの活力を奪うことでは無い!という考えのもと、それまでの常識であった管理型施設を完全に捨て去り、見守り型、響き合いといった新しい介護の道を切り開き、入居者も職員も活力溢れる場へと転換させた大起エンゼルヘルプ。今後もどんどん進化し続ける企業です。
リンク リンク
◆長野中央病院
長野中央病院は、1961年にできた長野民主診療所がそのルーツで「自ら出資金を出しあい、お金の心配なくいつでも診てもらえて、何でも相談できる病院をつくろう」という地域住民有志の運動によりスタートし、医療生活協同組合が経営・運営する、住民立の医療機関として発展。
理念と基本方針は、数ヶ月をかけて医局合宿、院内職場責任者会議、各職場会議、全職員集会などの討議を行い、地域の組合員からも意見を聞きながらつくりあげてきました。
地域住民全体の幸福を常に考えながら医療活動を行い、医師と地域住民が手を取り合ってより良い地域社会を築いていくことをめざしている地域に根ざした病院です。
人々が求めるのは、過剰な医療や介護を受けることではなく、人間本来の力を引き出させてくれるもの。
また地域で繋がり助け合い心から安心・充足し、活力をもって生きることです
それに則した形で医療・介護業界には、大きな社会的役割が期待されていると想います 😮
- posted by kazue.m at : 14:28 | コメント (0件) | トラックバック (1)
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