2015年06月02日
地域共同体の再生 第6回 「電力会社の電気は要りません!」自家発電で晴耕雨読の日々をおくる夫妻に聞く、これからの電力自給のありかた
地域のエネルギー自給の取り組みを紹介するシリーズ。今日は、電力会社の電気を買わずに、自宅で発電した電気だけで生活しているご夫婦を紹介します。なんだかとても楽しそうですね。
画像はこちらからお借りしています。
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地域共同体の再生
第1回~プロローグ~
第2回~意識変化に対応していない地域の組織化~
第3回-1~エネルギーを中心とした街づくりが今成功している理由~
第3回-2~共同体の再生に力を入れている地域活動の紹介~
第4回~地域のエネルギー自給(都市型)~
第5回~ご当地電力が続々誕生! 人を育て、コミュニティを育てる「まちエネ大学」~
神奈川県横浜市戸塚区で暮らす佐藤隆哉さんと千佳さんは、昨年夏ごろに自然派住宅を施工する「天然住宅」で自宅を新築しました。実は、佐藤さんの家は、電力会社から電気を買っていないというのです。
「我が家は、新築時から電力会社とは契約していません。電柱もメーターもありませんし、もちろん請求書も届かないので、再エネ賦課金を払う必要もありません。」
一般的な家庭にあるソーラー発電は、発電した電力量と実際に使用した電力量を比較して、余剰分を電力会社に買い取ってもらう仕組み(先述したように、実際はほかの家庭が負担)になっています。
一方、佐藤さんの家は、昼間に発電した電気をバッテリーに貯めて、それを夜間に使っています。夜に減った分は、翌日にまた充電されるので、電気を使いすぎたり、雨が続いて発電できないときは、バッテリーの電気が足りなくなるおそれがあります。「現在の我が家の消費電力は、1日平均3kWh。一般的な日本の世帯のおよそ3分の1だそうです。冷凍冷蔵庫、洗濯機、掃除機、炊飯器、エアコン、パソコン、プリンター、携帯電話を使っていますので、みなさんの生活と大きな差はありません。しいて言えば、テレビと電子レンジがないくらいでしょうか。」
「電気は電力会社から買うものという常識から私たち夫婦は抜けだしました。電気は自分の家でつくるのが当たり前という常識にシフトして、この新しい価値観を、たくさんの人に知ってもらいたいと思っています。」
大きなシステムに依存した今までの状況を変えたい
3.11以降、千佳さんは、計画停電でインフラを握られていることに違和感を覚えて、大きなシステムに依存していた今までの状況を変えたいと考えるようになったそうです。
実は、震災の直前にマンションを手に入れていたご夫妻。でもやっぱり畑で野菜を自給したい、電気も自給してみたいという思いが強くなり、2013年の夏ごろから、都会だけれども自然が豊かで、山があり、畑ができるくらいの広さがあるという条件で、新天地を探し始めました。
土地が見つかってから天然住宅のオフグリッドセミナーに参加して、田中優さんが電力会社の電気を使わずに、独立電源にしたのを知りました。そのときの設備は1,000万円近くてとても手が出なかったのですが、福島から岡山に避難してオフグリッドの独立電源を施工している「自エネ組」の大塚尚幹さんに伺ったら、再生した鉛バッテリーを使えば、100~200万円で独立できると聞いて、実現に向けて考え始めました。
いのちの問題として、暮らしかたを選択した
「我が家のシステムは、240Wのソーラーパネル8枚とフォークリフトの再生バッテリーの容量が27kWhです。そのほかのコントローラー類と、岡山から大塚尚幹さんに来てもらった施工費を加えて、全部で約220万円でした。
もちろん元は取れません。でも、私たちはお金の問題ではなく、いのちの問題として、この暮らしを選択したのです。この挑戦に私たち自身がドキドキ・ワクワクしていますし、これから電力自給ムーブメントが起こることを願っています。」
電気富豪の日、電気貧乏の日
一般的な家電を揃えながらもオフグリッドで生活できているのは、夫妻がかねてから節電を心がけていたからです。何も考えず、湯水のように電気を使っていた暮らしを見直さずに、代替エネルギーばかり探し求めていたら、本末転倒です。
「晴れた日の発電量は約5kWh、雨だと0.6~1kWhくらい。平均3kWhの発電量なので、ほぼ1日に使う電気を賄いつつ、バッテリー残量は70%をキープしています。
最初はドライヤーを使うときもハラハラしていましたが、しばらくすると安心感が出てきました。とても不思議なのですが、オフグリッドにしてからオーディオの音が澄んでいてキレイなんですよ!」電気の自給を始めると、天気に合わせた暮らしになるのがおもしろいですね。自然のバイオリズムと身体のバイオリズムが合致するので、体にも心にも負担が少なく健康的になったそうです。
天の恵みから得られるエネルギーのありがたさ
半年以上暮らしてみて、電気にはまったく困っていないと言います。
「逆に、バッテリーに貯めた電気が余ってしまうので、この冬は電気ヒーターを導入しました。」
炬燵やホットカーペットなど、電気を熱に変換するものは、効率の悪さから避けるべきところ。けれども、電気富豪になると、そんな余裕も出てくるのですね。「イメージとしては、空からお金が降ってくる感じです。誰かの犠牲のうえに成り立っている電気ではなく、まさに天の恵みから得られるエネルギーは、本当にありがたく感じます。
水や空気がなければ、人も動物も植物も生きていけません。いのちを脅かす放射能をまき散らしてつくるものではないと思います。電気がなくても生きていけますが、もちろん電気のある便利さや安心感も否定できません。
そのありがたいエネルギーをどうつくり、どう受け取るかを、みんなで考え直す時期が来たんだと思います。」オフグリッドは、知らないうちに誰かにまかせていたことを、自分たちの手に取り戻していくこと。「もっと欲しい」ではなく「足るを知る」暮らしへ、あなたも第一歩を踏み出してみませんか?
確かに僕らは自らの生活基盤を人任せにしすぎていたかもしれません。そのツケが原発などの人災を起こしています。自分たちの手に取り戻していくこと。改めて考えてみる必要がありそうです。
まずはできることからと、自家発電の取り組みをスタートさせているご夫婦ですが、地域の取り組みが増えてくると、スマートグリットにより電力をシェアし、地域で協力し合う、新しい地域のエネルギー自給が実現しそうです。
- posted by 岩井G at : 20:13 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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