2014年06月28日
企業の『追求力』を高めるには?-5- どうしたら追求力は身につくのか
追求力シリーズ第5弾です。これまでは、追求力が企業の勝敗を決する時代になった背景や、そのような時代状況の中で、追求力を磨いて勝ち残っている企業を紹介し、どうやって追求力を高めているのか、その取り組みを紹介してきました。
企業の『追求力』を高めるには?-1- なぜ「追求力の時代」なのか?
企業の『追求力』を高めるには?-2- ものづくりに求められる追求とは?
企業の『追求力』を高めるには?-3- 教育・医療・介護・農業・環境業に求められる追求力~
企業の『追求力』を高めるには?-4- 充足発の追求力、女たちの追求力~
追求力の重要性は誰もが認めるところだと思います。今回は、人類が追求力を獲得してきた歴史を振り返りながら、どうしたら追求力を身につけることが出来るのかを徹底的に追求していきます。
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1.人類の追求力の源泉は同化能力
■追求力獲得の原点は原猿時代の本能不全
人類の追求力はどのように発達してきたか。その原点は、人類以前の原猿の時代までさかのぼります。原猿は樹上世界を縄張りにすることで最強の生産力と防衛力を獲得しますが、その結果、樹上を埋め尽くします。そして縄張りを獲得できない若オスたちは本能に従えば死ぬはずなのに、樹上世界の特殊性ゆえに縄張りを持てないのに、死ぬこともできない、と言う本能不全に直面します。
この本能不全を克服するために、原猿の若オスたちは、期待応合の充足⇒性充足やスキンシップ、おしゃべりをはじめとする親和充足を獲得します。そして仲間共認を紐帯とする闘争集団を形成し、この闘争共認に基く同類闘争によってはじめて縄張りを確保します。
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要約すれば、樹上に進出したサルは、縄張り侵犯を激化させ、飢えと怯えの不全感を解消すべく、相手との期待応合回路=共認充足機能を進化させていきました。こうして猿は、本能を超えた共認によって、はじめて自らの意識を統合することができたのです。この共認機能が追求の原回路となっているのです。
※参考:類グループ共同体理念研修会4~期待応合の充足こそ、猿・人類の活力源であり、闘争共認の母胎である
■過酷な生存状況に適応するため人類は追及充足機能を獲得した
原始人類は、木から落ちたサルであり、まともに外敵と戦う能力を持っておらず、原猿よりはるかに過酷な生存状況で500万年間に亙って「生き延びるためにどうする?」と日夜、追求し続けました。そして、直面する過酷な現実対象=自然を凝視し続ける中で、元来は同類を対象とする共認機能を自然に対して作動させ、自然との期待応合=共認を試みたのです。その極限的な追求の果てに、遂に、感覚に映る自然の奥に、応合すべき相手=期待に応えてくれる相手=精霊を見ます。人類が万物の背後に見たこの精霊こそ、人類最初の観念であり、人類固有の観念機能の原点なのです。
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人類は、原猿よりはるかに過酷な生存状況で500万年間に亙って「生き延びるためにどうする?」と日夜、追求し続けてきた結果、「みんなの期待に応えて追求すること、それ自体で充足する」という追求充足という機能を獲得します。この追求充足という機能こそ、原猿以来の期待応合充足の上に塗り重ねられた人類固有の共認充足の新地平なのです。
参考:類グループ共同体理念研修会6~極限的な追求の果てに、人類は追求充足⇒観念機能を獲得した
■追求力は対象への同化が生命線
以上見てきたように、追求力の源泉は共認充足です。では共認充足を高めるにはどうしたらよいでしょうか。①まず、相手を注視する⇒②相手に深く同化する⇒③相手の期待を深く看取する(応合する)。この3つを総称して「同化」と呼びます。対象を注視し、どれだけ深く同化できるか。そして、何を掴み取れるか。それが追求力の源泉なのです。つまり、追求競争に勝つために必要なのは、まず充足を母胎とした対象への同化⇒それを母胎とした追求なのです。
とりわけ、現代の同類闘争の主戦場である企業間闘争では、人々の(潜在)期待をどれだけ深く掴めるかに勝敗がかかっています。対象に同化するには、自分の観念は空にする必要があります。学校教育やマスコミによって教え込まれた狂った観念にしがみついている限り、同化もできず、答も出せません。仕事の成果を規定する充足力・追求力を上げるには、自分(の観念)を空にして対象に同化できるか、その一点にかかっているのです。
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参考:類グループ共同体理念研修会8~同類闘争の勝敗を決するのは、対象の注視⇒同化⇒応合である
2.同化能力だけでは不十分。観念能力(≒言語能力)の鍛え上げが不可欠
■言語能力が追求力を規定する。
追求を進めていく上では、事象やデータを分析する力や、次々と仮設を立てていく発想力が不可欠ですが、これら分析や発想の大部分は、言葉を使って行われます。従って、言語能力の豊かさが、追求力を規定していると考えられます。次々と仮説を立てて行く発想力は、そのひらめき(直感)が第六感などと言われるように言葉よりも深い潜在意識から生み出されるものと一般には理解されています。しかしよく考えてみると、直感と言うものも、これまで無関係だったいくつかの言葉(観念)がつながることによって生まれます。従って論理追求を重ねるなどして鍛えられた言語能力が、直感を生み出す母体になっているのです。
さらに、豊かな発想力で生み出された仮説が正しいかどうかを判断する物差しは、論理が整合しているかどうかであり、追求のためには論理能力も必要です。そのような論理能力を磨くには、論理を図解にしてみるのが有効です。キーワードを図解化してみることで因果関係などが確かにつながっているかどうかを検証し、もし論理矛盾があれば論理が整合するように図解を組み立てなおしてみる。そうすれば単に知識を吸収するだけよりもはるかに高い論理能力が磨かれます。
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追求力の母体には言語能力があり、その上に発想力と論理能力が塗り重ねられています。言語能力は、ある程度は学習で獲得することが出来ますが、学習で獲得した程度の知識や能力では、厳しい企業間競争を勝ち抜ける新しい発想を生み出すような言語能力には到底至りません。既存のビジネスモデルを根本から組み替えるような言語能力を獲得するためには、答えを求めて理論追求を重ねるなど、言葉との不断の格闘が不可欠です。
■ICTは追求力向上に寄与するか
いまや企業の生産力を高めること=ICT環境の高度化と捉えられている感があります。特に近年ではビッグデータが新たなビジネスチャンスとして注目されています。一方で、ICTに過度に依存することで生産効率が低下していることに気付き、IT断食を行う企業も登場しています。ICTは追求力を高める役に立っているのでしょうか。
IT断食を提唱しているのはソフトウェアー開発を行っているドリーム・アーツ。膨大な情報を処理することに追われ、創造的な作業が出来なくなり、生産性が低下している。それに気がついてITの利用を制限し、成績を伸ばしているそうです。
参考:『IT断食』で生産性向上
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ICTの発達により、これまでに無かった膨大の情報が発信されるようになり、その情報を収集することも可能になりました。しかし、IT断食で見たように、個人の能力では膨大な情報を処理しきれずに情報中毒に陥り、逆に生産性が低下している結果になっています。
これに対して、膨大な量の情報をコンピュータに解析させ、ビジネスに活用しようというのがビッグデータです。これまでは、利用者の商品・デジタルコンテンツ等の購買履歴や決済情報、コミュニケーションの発信履歴など膨大なデータを活用しサービス革新等を進め競争力を高めるという使い方でしたが、今後は、多種多量のデータを実社会分野において分野横断的に、かつリアルタイムに活用し、交通渋滞、医療の充実や犯罪抑止といった社会的課題の解決や、電力網など業務基盤・社会インフラの効率的運用といった効果をもたらすことが期待されています。
参考:ビッグデータとは
■ICTに依存すると、追求力は低下する
ビッグデータは、ICTを活用し大量の情報をリアルタイムで処理することで、これまでできなかったことが出来るようになることから、企業の追求力が向上するように受け止めがちですが、本当にそういえるのでしょうか。
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ビッグデータの仕組みは、一度情報の収集分析システムができてしまうと、人間は何も考えなくてもコンピュータが情報収集分析を行い、自動で答えを出してしまう仕組みです。つまり、社員の大半は追及しないで、コンピュータの指示に従うのみという状態になるのです。これでは、社員の追求力はどんどん低下する一方です。追求力の上昇を目指すのであれば、社員の一人一人が大量な情報を処理する高度な能力を獲得していく必要があります。人類は視覚などから入ってくる膨大な量の5感情報は長い進化の中で処理する能力を本能的に身に着けていますが、ICTなどからもたらされる観念情報の処理能力は鍛えないと獲得できません。
こうした膨大な情報を処理するためには、観念情報を瞬時に整理して納められるような整理箱≒観念の系統樹=概念装置を脳内に構築することが必要になります。しかし、ICTに情報処理をゆだねてしまったのでは、このような能力は全く身につきません。
参考:7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口 テレビが人間を愚鈍にさせるというのが科学的に証明された
■追求力を鍛えるにはどうしたらよいか
追求力を鍛えるには、同化能力と観念能力の両方を鍛える必要があります。同化能力は追及を続ける活力の源泉であり、また、追求を正しい方向に導く道標ともなる能力です。人類の追求力獲得の歴史で見たように、みんなや社会の役に立つ事で得られる共認充足こそが追求力の源泉になっています。また、みんなや社会の役に立つためには、自分の勝手な思い込みではだめで、対象に深く同化することが出来て初めて、役に立つ答えを追求することが可能になります。
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一方で、同化能力を獲得しても、観念情報を処理する能力を磨かなければ、追求力は高度化しません。追求はすべて言語を用いて行われますから、言語能力が追求の基礎的能力です。その上に発想力や論理能力が塗り重ねられます。そして、自分の頭を使って追求を続けることで、脳内に観念の系統樹=概念装置が構築されるところまでくれば、高い追求力を獲得できます。
ICTは情報の収集や発信、機械的な加工の道具でしかありません。追求力は人間にしか期待できない能力であり、企業はいくらICTを導入しても、本当の意味での生産性は向上しないのです。生産性を高めるためには、社員の追求力を高めることが不可欠となります。
3.学校教育や社員研修も追求力を高める自考型へ転換している。
追求力を高めるには、知識を詰め込むだけでは駄目で、自分の頭を使って考え、観念情報の処理能力を高める必要があります。社会全体の追求圧力が高まる中で、学校教育や社員研修も自考型への転換が進み始めています。いくつか事例を紹介します。
「徹底した反復」に加え、新しい単元を学ぶ際に類塾が大切にしていることがあります。それは、「生徒が自らの頭を使って考えること」です。生徒に問題を解かせ、その後に講師が解説する授業が一般的ですが、単に講師の解説を聞いているだけでは頭にほとんど定着しません。解説を聞くと理解できたように感じますが、実は「分かったつもり」になっているだけなのです。
そこで類塾では、講師が一方的に解説するのではなく、生徒が自分の頭を使って答えを考え、解答解説を熟読して完全理解できる授業を実践しています。このような「自考型演習」では、演習問題を解き解説を聞くだけの授業より、遥かに頭を使います。その分、生徒の集中度は高まるので、格段に早いスピードで理解も進み、知識や解法まで完全に頭に定着していきます。「反復型演習」と「自考型演習」に取り組めば、成績アップはもちろん、自ら考える力も身につけられるのです。
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スタンフォード大学医学部教授であるプローバー氏は、「講義のない教室」と題された論考の中で、限られた授業時間を活用するためにテクノロジーを利用した学習の方法を検討している。それは、講義の内容を10分から15分の映像にまとめて自宅や講義の空き時間に視聴できるようにし、授業では患者の臨床事例や生理学的知識の応用を中心とした対話型の活動を行うというものである。この方法を導入した生化学の授業では学生評価が大幅に向上し、出席率も30%から80%に増加したという。このような、説明型の講義をオンライン教材化して宿題にし、従来宿題であった応用課題を教室で対話的に学ぶ授業は、「反転授業 (Flipped Classroom)」と呼ばれ、数年前から米国の小・中・高等学校を中心に広がり始めている。
反転授業が教室で取り扱う応用的な課題は「21世紀型スキル」とも関係する高次の思考能力を育成する活動である。このような活動が普及しなかった最大の理由は「時間がない」ためであった。限られた授業時間に応用的な活動を導入すると、基礎知識を習得する時間が足りなくなってしまうのである。このことが「知識習得」と「思考能力」のどちらが大事かという論争の原因になっている。実際には、知識に基づかない高次思考能力は存在しないし、応用できない知識は無意味である。「知識習得」と「思考能力の獲得」を両立させるためには、学習時間を延ばすしかないが、学校の時間はもはや隙間なく埋まっている。この難問を解く鍵になるのが、授業と自宅学習の連続化による学習時間の確保と学習目標に合わせた時間の再配置なのである。
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理想の教育を実現するためには、それに応じた教育手法が必要とされるはずです。そこで出てくるキーワードがアクティブラーニングです。自分で発表する、自分の考えをまとめる、教員に質問する、そういった過程を通じて、自分の手と頭を使って主体的に学ぶこと、それがアクティブラーニングだと考えています。そのためには、講義にそういう機会がないといけないわけです。機会が与えられたら、人間は動きますから。
そのようなアクティブラーニングを実現するための工夫が、たとえば、教員と学生の双方向的なコミュニケーションですね。学生が講義をどのように受けとっているかを全くフィードバックせずに講義をするのと、それをリアルタイムに知りながら講義をしていくのでは、双方向的なコミュニケーションという意味で全く違います。そういった、リアルタイムでお互いにフィードバックしあう講義を目指したいのです。ただし、そのような講義は教員側にも厳しいものを要求します。当初の授業計画だけではなくて、臨機応変に学生にとって分かりやすい講義を進めていくことが必要なわけですから。つまり、学生は「教員の言っていることを理解しているかどうか」を確認しながら、教員は「学生が自分の言ったことを理解できているかどうか」を確認しながら、講義が進められます。
『言語能力の鍛え上げが追求力を上昇させる。世の中は、長引く経済不況の煽りを受けて、より熾烈な企業間闘争が進んでいます。「大企業だから安泰」という時代はとうに終わりを告げました。今や、会社として資本力があるかないかが重要なのではなく、どれだけ会社として、社会やお客様の期待を掴み答えを出せるか、そして、そのための追求し続けられるだけの力があるか、に変化してきています。つまり、これからは『追求力の時代』に突入したのです。この追求力を身につけるには、事象の分析や発想の母胎となる、言語能力を鍛えることが必要になります。そこで、類グループでは、追求力の上昇を目指して、「大人塾言語能力養成コース」を以下のステップで開講します。
STEP1.まずは基本論理を脳に定着
STEP2.そこで見えてきた思考のクセを矯正
STEP3.それらを土台に自在に論理を組み立てる
本講座では、これまで曖昧だった各人の言語力と思考のクセが驚くほど鮮明に浮かび上がり、それが仕事上の壁と密接につながっていることに気付きます。一切の言い訳を排し、とことん言語と格闘する中で、本物の追求力を身につけてください。
- posted by 岩井G at : 14:21 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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