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2018年11月01日

「地域の誇り」となるブランドつくり 宮崎本店⑤~唯一無二の存在としてその役割を果たすことで縄張り確保につなげる

三重県四日市市にある宮崎本店は、1846年創業の老舗企業。今回はその最終回です。同様に「地的経営のすすめ」(佐竹隆幸著:神戸新聞総合出版センター)から要約しながら紹介していきます。

ちなみにこれまでの記事は
「地域の誇り」となるブランドづくり ① 社員持株会の効果
「地域の誇り」となるブランドづくり ② グループ討論から一体的前進感へ
「地域の誇り」となるブランドづくり ③ 人知を超えた自然への感謝が地域貢献へとつながっている
「地域の誇り」となるブランドづくり ④ 商品と企業理念が作り出す「カルト市場」

さて、このブログ「②グループ討論から一体的前進感へ」でも紹介しましたが、宮崎本店は、焼酎「キンミヤ」のブランド化を目指し、業務用の大容量容器での販売を取止めました。酎ハイや果汁割等での「原料」として使用されるのではなく、商品「キンミヤ」を消費者に選んでもらうためです。しかしそれは「それなら別のメーカーの焼酎でいいよ」と取引が無くなる、つまり売上の4割が失われてしまう危険性も孕んでいました。

それでも宮崎社長は金融機関に「これからは新しいやり方で売って行きたい」と説明し理解を求めました。原料からの脱却が宮崎本店にとっては必要なことなのだ、と。 そして実際、半年間売上が減っていった▼どうする??

「そこで慌てて、やっぱりもう一度元に戻そう、なんてやったら、アウトでしょう。経営者として腹を括らないと会社はおかしくなってしまいます。そこだけは譲れません」(六代目宮崎社長)

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宮崎社長は「気にするな」と言い続けた。社長に就任して以来、「オーナーシップよりリーダーシップ」と考えていた。会社を所有することが大切なのではなく、経営者としての確度を持ち、リーダーシップを発揮しなければならない、と。

「つい経営者も戦略戦術をごちゃごちゃにしてしまうのです。戦略はきっちり決めて簡単には変えてはいけません。戦術は相手に合わせて対応していく。戦術はお客様と対応しているフィールドの担当者が力を発揮するものです。」(六代目宮崎社長)

点が入らないからと、監督がフィールドに入ってボールを蹴ろうとして骨折する・・・。
宮崎社長はそう喩えます。
社長は選手ではない。責任を持って戦略を見据え、腹を括って実行する。そして思ったように業績が上がらないのは、戦術が悪いのか、戦略が悪いのか、そこを見極めること、それが社長の役割なのです。

ベルギーで行われるモンドセレクション(世界酒類コンクール)も1984年以来、毎年出品し連続で金賞を受賞しています。その縁で、ベルギーに本社を置く卸会社ガストワールドとの取引が始まります。世界で日本料理が定着している上に、魚介類に合うお酒として日本酒への関心が高まっている。その中でガストワールドは日本料理向けだけではなく、フランス料理店やビストロ向けの商品として極上、大吟醸、純米酒の「宮の雪」を販売している。三重県で作られた清酒が世界の市場へと広まろうとしているのです。

「1年に1回しか日本酒は作れないのです。ワインに比べると、日本酒の方がまだ技術でカバーできますから、安定しているとはいえ、毎年同じものはできないのですから、長生きしても、30作品、40作品しか作れません。フランスの有名なシャトーもそうやってブランドを築き上げてきたはずです。これからもそうした酒づくりを続けていきたいのです。」(六代目宮崎社長)

宮崎社長は、ロマネ・コンティを一つの目標としている。
ロマネ・コンティの年商は、約15億円の規模。だが、世界的なブランドとして最高の評価を得ている。規模としては中小企業でありながら、社員満足(ES)、顧客満足(CS)、企業の社会的責任(CSR)が世界でも屈指のレベルであることも知られている。身の丈に合った市場開拓地域との関係作りブランドを確立するための努力、そして自分たちのことを理解してくれる顧客を求めていく姿勢は、中小企業の一つの生き方を示していると言える。
市場を制覇するのではなく、唯一無二の存在としてその役割を果たすことで、他社と共存し縄張りを確保する。それが宮崎本店の戦略なのです。

 

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