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2016年10月12日

全員経営 自律分散型イノベーション企業⑭~社員の成長≒会社の成長~三鷹光器

三鷹光器(みたかこうき)株式会社と聞いて、ピンと来る人は少ないかもしれません。
しかし昭和41年東京都三鷹市に創立されたこの会社は、国立天文台で使われている望遠鏡、NASAのスペースシャトルに搭載された特殊カメラ、オゾンホールやブラックホールを発見した観測機器など、天文や宇宙関連の観測・計測機器を開発している「町工場の巨人」と異名をとっているのです。さらに現在の主力製品になっているのは、医療用機器。脳神経外科用の手術顕微鏡システムでは、北米で実に約70%のシェアを誇っているのです。

画像はコチラからお借りしました

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社員数約50名の小さな会社で、なぜ世界を牽引するモノづくりが可能なのか。秘密は独自の“職人育成法”にあります。今回も「全員経営~自律分散イノベーション企業成功の本質」(野中郁次郎・勝見明著:日本経済新聞出版社)から内容を要約して紹介していきます。

ちなみに前回までの主な記事はコチラです。
①プロローグ
②クロネコヤマトの挑戦
④釜石の奇跡
⑧ホンダミライースの開発
⑩高松丸亀商店街の復活
⑫テラモーターズの機動力
です。

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では「主体性や自律性」を生み出す、三鷹光器の人材育成法を段階ごとに見てみましょう。

【 採用段階 】

志望者は学歴も資格も不問。社員には中卒も大学院出もいて、音大出身の女性が在籍していたことも。条件は一つ。ユニークな入社試験をパスすることだけです。
筆記試験は事前に問題が教えられます。分からなかったら誰かに聞いてもいい。答えを導き出す力を見ます。
重要なのは“実技”です。午前中は裸電球の絵を描く。上手さではなく、表現力と観察力を見るのが目的です。
昼食は定食屋で煮魚定食を食べ、箸使いで手先の器用さが試されます。
そして、午後は模型飛行機づくりです。竹ひごの曲げ方、糊の付け方、翼の位置決め・・・等々、手で考え、目で考える力が試されます。この会社では、頭の知識より「身体で考え、身体で覚える力」が重視されるからです。

極端に言えば、大学で学んだことなど、ほとんど無関係。むしろ子供の頃の遊びや生活の中で養われる追求力を見ている。人を見る目に自信がない企業は採用において学歴にこだわる。三鷹光器は、学歴や偏差値なんぞに頼らずとも、技術者としての資質を見抜く視点と、自前で教育するという強い意思を持っているのです。

【 導入段階 】

身体で考え、身体で覚える。その言葉通り、入社してもしばらくは、ドリルの刃研ぎやハンマーの振り方といった基本的な作業を朝から晩まで続ける日々を送ります。刃を研いで実際に穴を開けさせると、最初はまず開かない。その理由は教えず、違う研ぎ方をしてみるようにいう。何回か試すと開くようになる。自分で考え、工夫し、体験を通して学ばせるのです。

三鷹光器では開発設計から製造まで一人で一貫してこなしますが、最初は設計図を描かせてもらえません。人が描いた設計図をもとに装置をつくっているうちに、自分なりに気になる点が出てきます。興味が高まれば、自分から学ぼうとします。そうなって初めて図面を描かせるのです。

教えられるのではなく自分で学ぶ。これを徹底する為、ムダを承知で、敢えて失敗を経験させることもあります。開発部門の幹部はこう話します。
「このままいくと失敗するとわかっていても、黙って最後までやらせる。ここまで出来ていればいいじゃないかと思ってもダメです。作り直しを命じ、なぜ失敗したのか自分で考えさせる。出来上がったあとで文句を言われるのは正直、辛いものがあります。でも、失敗を経験しないと技術は身に付かない。オシャカを恐れたら、ものはつくれません。」

失敗を許容することは、企業にとって時間的にもコスト的にも非効率的です。そのロスよりも、主体性や自律性を持つ技術者を育成する方が有益という判断は、会社の利益を1年ではなく、もっと長いスパンで見ているということです。

「期待して待つ」これは子供の教育でも同じこと。小さい子どもが自分でやろうとしていることに親があれこれ手を出せば、子供の成長機会を奪うことに成りかねない。利益追求していく私企業でありながら、社員の成長が会社の成長と位置付けているようで、それこそが三鷹光器の強みだと思います。

 

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